四十のお話
時々吹く風がロウソクの火を揺らす。消えそうで消えない小さな火。私はじっと眺めながら記憶を探す。
「ねえ、私とアールっていつ出会ったの?」
「うーんとね、あぁ、確か今日みたいな雨の日だったな〜、そうそう、あの時もみぃはびしょ濡れだった」
アールは楽しそうに答えた。
「泣いてたよ、あの時…」
「え…」
私が泣いていたのか?アールは小さく寂しそうな声色で呟いた。
「君は、涙を隠すように大雨の中を一人で歩いてた。そこで僕は君に声をかけたんだ〜。すっごくビックリした顔が可愛かったよ」
「…そうなんだ」
私の記憶はなかなか戻らない。でも、少しづつ、少しづつ、モヤモヤは形になってきている。はっきりは見えない。まるでさっきの霧の中のようだ。私は目を瞑ってみる。
「そうそう、あの時もこんな感じだったな〜。服が乾くまでずーっとこうしてた」
揺れるロウソクの火、濡れた水色のエプロンドレス…そして、ずっとそばにいてくれたアール。薄っすら見える。きっとその時の記憶だ。
「私…なんで泣いていたの?」
「…お母さんに怒られたって言ってた」
そう、私は悪い子だ。だからいつもお母さんを怒らせてしまう。意味もなく、怒らせてしまう。
「でも、君は悪くないよ。何もしてないんだから」
「ううん、私…ダメな悪い子だから…私のせいでお母さんいつも怒ってる」
勝手に言葉が口から溢れる。ダメだ。なぜか急に寂しくなって涙が出てしまう。今日、泣いてばかりだな…
「違う、君はいい子、悪いのは母親と外の世界」
アールは私を優しく抱きしめて言った。
「外の…世界って…?」
「君の存在を認めてくれない、君をいじめる最低の世界さ」
じゃあ、ここは…この世界は何?頭の中の歯車は狂って、私は混乱する。ぐるぐる、ふわふわ浮かぶ雲のような何か。掴もうとしても掴めない。そんな感じで気持ちが悪い。
「私…一体どうなってるの…?ここは…何の世界なの…?」
「…」
アールは何も言わなかった。聞いてはいけない、私の頭はそう言うように一瞬痛んだ。自分で、全てを思い出せ。きっとそう言っているのだろう。
「思い出せなくても、王子様がきっと教えてくれる」
「うん」
私は瞑った目をそっと開いた。ロウソクの火は消えず、小さくても力強く燃えている。私も、頑張らなくちゃ…
「そろそろ服、乾いたかもね」
そう言ってアールは立ち上がった。そして、私の制服を取り、マントの中に入れてくれた。私はそれを受け取り、ささっと着た。ちょっと湿っているが大丈夫だろう。
「ありがとう、助かったよ!」
私はマントから出てアールにお礼を言った。アールは「どういたしまして〜」と言ってニコッと笑った。
「やっぱ…もう行っちゃう?」
アールはとても寂しそうに言った。アールのその表情を見ていると、胸がギュッと痛くなった。まだ…行きたくない。でも…
「…うん、みんなを探さないと…」
「…そう…だね」
そう、行かなきゃ。早く全てを思い出して元の世界に戻らないと…。
「君は…、何でもない…。頑張ってね、また遊びに来てよ」
「うん!」
アールはなんて言おうとしたのだろう。なんでそんなに寂しい顔をするの?もう、二度と会えないみたいじゃないか。私は最後に笑顔で手を振り、洞窟の中を進んでいく。アールは見えなくなるまでずっと私を見ていた。
出口はそう遠くなさそうだ。私は振り返らず、まっすぐ進む。
雑でごめんなさい。変なところ後で直します。




