三十九のお話
「何で外に出してくれないの?」
「えー、せっかく会えたんだし、もう行かせるとかヤダ」
そんな理由かよ…。ここは子供みたいなやつがいっぱいの森なのか?さっきのピンクのウザいやつといい…
「それに雨降ってるしさ」
「うぅ…」
一旦ここから出ようとするのは諦めよう。でもどうする?このままここにいても、何もすることがないではないか。
「あ、そ〜おだ」
アールは突然立ち上がり、私に手招きした。どうしたのだろうと、私は立ち上がりアールに近づいた。すると、アールは上に着ているマントのような服をバッと広げた。
「さあ、どうぞ」
私は意味が分からず首を傾げた。
「入って脱ぎなよ」
「え?」
なるほど、アールのマントの中を試着室みたいに使えって事かな?そうすれば見られる事はない。
「いや…でも…」
「もー、いいからはよ脱げ」
そう言って私をマントで包んだ。私とアールの身長の差は結構あって、マジシャンなんかがやっている、あの服の中から人が出てくるやつ…なんと説明していいか分からないが…、あの服の真ん中あたりで顔だけ出してるやつ…、そんな感じになっている。
「動きづらい…狭い…」
「しょーがねーだろー、はよしろ」
「えー、じゃあそのマント脱いで貸してよ…その方がいい…」
アールは「ヤダ」と言う。どうしてだ…。
「脱いでまた着るのが面倒くさいんだよね〜、この服」
これは服なのか…マントだろ…とか思いながら、私は彼のマントの中に潜り渋々濡れた服を脱ぎ始めた。スカートは…まあ、大丈夫かな…
「脱げた〜?」
「うん」
「服貸して〜」
私は濡れた制服をマントの間から出してアールに渡した。外からバサバサという音が聞こえた。乾かしてくれているのだろう。マントの中は狭いが、暖かくてお花のいい匂いがする。ずっとここにいたい感じだ。
「乾くまでロウソクの近くの壁に引っ掛けとくね」
「うん、ありがと〜」
アールは制服を綺麗に投げて、うまく壁に引っ掛けることが出来た。ロウソクの火のオレンジはゆらゆらと揺れ、私たちに安心感を少し与えてくれる。私は昔からロウソクの火が大好きだ。
「…」
そうだ、これからどうすればいいのだろう。服が乾くまでここの中にいていいのか…?私は大人しく中で体操座りをしている。
「よっこいしょ」
「わあ…」
アールは私を足で挟むようにして座った。そして私はマントから顔を出した。
「寒くな〜い?」
「あ…うん」
そう言ってアールはマントの中で私の肩に手を回した。とても暖かい。意外といい人だなぁ…
「風邪引いたら大変だもんね、みぃ冷たい」
「うん…ありがと」
私の下がった体温は、少しづつ元に戻ってきた。なんだろう…変な感じだ。そう、またこれだ。このモヤモヤ…。きっと私の頭は何かを思い出そうとしているのだろう。この人との記憶、思い出を…
「うへ…え?」
私の頭が頑張って歯車を回していたら、突如アールが首筋に甘噛みしてきてとてつもなく驚いた。そうだ、この人吸血鬼だった。歯車は一時停止する。
「血、くれよ」
「え、嫌だし…」
断ってもアールは「いーじゃん」と言って甘噛みを続ける。くすぐったいやら恥ずかしいやらでいっぱいになる。私はふと昔読んだ吸血鬼の本を思い出した。確か、吸血鬼に血を吸われると自分も吸血鬼になるとか…、いや、死んでしまうとかだったか…?
「くーれーよー」
「…ヤダ、私を殺す気…」
アールは「え?」と言った。そしてハハッと笑う。
「殺す?なんでさ〜。血を吸っても死なないよ?」
「そう…なの…。でもヤダ」
いくら死なないとはいえ、血を吸われるのは嫌だ。だって注射みたいなものだろう?分からないが。私は痛いのが大の苦手なのだ。
「なんでさ〜、昔はよくくれたよ?」
「え?昔?小さい頃の私が?」
思い出せない…思い出せない…!!
「痛いんでしょ?」
「いや、全然」
嘘だ。嘘に決まっている。だって簡単に例えたら注射だぞ。痛いじゃないか!?でも、昔の自分はよくあげていたって言っていた。昔の自分…絶対に痛いのは嫌だろう…でも…分からない!!
「どんな痛さなの?」
「だから痛くないって。うーん…あ、蝶々がとまる感じかな〜」
蝶々…でも怖い。私はきっぱり断った。アールは「うーん」と少し残念そうに声を漏らした。
遠くから雨の降る小さな音が聞こえてくる。私の頭の中の歯車はまた、動き出そうと頑張っている。
最近いつもより雑になっててごめんなさい。変なところ後で直します。




