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アリスゲーム  作者: いずも
38/88

三十七のお話





「あー…もお…」


進んでも進んでも同じ景色。いや、もう霧で前なんて見えない。疲労と不安がいっぱいで、私はイライラしてくる。イライラしても意味はないという事はよく分かっている。


「もうやだ…ねえ、誰か…あー…もう嫌…」


大きなため息を吐いて、独り言を言った。足を止めて近くに生えていた木にもたれかかった。そのままずるずると地面に座り込む。


「チェシャ猫…死神さん…」


私は膝を抱えて呟いた。ここで危険な猛獣が近づいてきたらどうしよう、変な生き物が襲ってきたらどうしよう…。不安は雨のようにどんどん降ってくる。誰でもいい、誰でもいいから来てほしい…。


「あー!!」


「!?」


突然どこからか変な声が聞こえた。どうしよう、怖い生き物だったら…。私は急いで立つ上がった。


「お菓子!お菓子!」


声は近づいてくる。私…食われるかも…。


「お菓子ちょうだい!お菓子ちょうだい!」


「…?…」


声はすぐそこで聞こえる。だが姿が見当たらない。後ろも前も右も左も…。


「おーかーしー!」


「えぇ…?」


声が下から聞こえている事に気がついた。私はゆっくり下を見てみた。そこには…


「お菓子ちょうだい!お菓子ちょうだい!!」


薄ピンク色の丸い顔面から、短い足が四本生えて、うさぎのような耳がついた餅のような小さい何かがいた。顔だけが妙に痩せこけている。私はこんなものに怯えていたと思うと、少し恥ずかしくなった。


「お菓子!お菓子ちょうだい!」


お腹が空いているのだろうか。でも、私は今食べ物を持っていない。


「ごめんね、何も持ってないの…」


「えー!お菓子ちょうだいよ!お菓子ぃ!」


まるで、駄々をこねる子供のようにギャーギャー言っている。地面で気持ち悪く暴れている。


「ごめん…本当に持ってないの…」


「いーやー!お菓子お菓子!!」


イライラしてくるやつだ。誰か来てほしいと思ったが、こんな奴は来なくてよかった…。どうしようか、このまま何も言わずに逃げた方がいいのだろうか…。


「おーかーし!!お菓子!」


「ごめんね!」


私は走って逃げる事にした。持ってないものはしょうがないもん。木に注意しながら私は走る。


「待って待ってー!」


「はぁ!?」


奴は追いかけてきた。しかも足が速い。しつこい奴だ…!


「だからお菓子は持ってないって!ついてこないでよ!!」


「やだぁー!お菓子お菓子!!」


あぁ、ウザい。遠くへ思い切り蹴り飛ばしたくなる。どこまでついてくるのだろう。


「もう来ないで!!」


「やだあぁ!!」


私は全力で走る。だが、奴もスピードを上げてついてくる。深い霧の中での鬼ごっこ。どうすればいいんだ!!


「はっ!!」


気づけば目の前に薄っすら石でできた壁が見える。行き止まりか!?私は追いつかれないよう、左に曲がって走り続ける。奴は今もずっとついてくる。


「待ってぇ、待ってぇ!お菓子ちょうだいよぉ〜!」


「だからないってばぁ!!」


同じような会話を何回もする。本当に蹴り飛ばしたくなる。もう蹴り飛ばそうか…。と、思いながら走っていたら、突如雨が降り始めた。最悪の最悪の最悪だ…。


「待ってぇ!お菓子ぃお菓子ぃ!」


「もーやだぁ!!!」


雨はどんどん降ってきた。雨宿りできる場所なんて探している暇がない。だが、雨は次第に土砂降りになってくる。


「ねえお願いもう来ないでぇ!!」


「やだやだぁぁ!!待ってぇ!」


なんでこんなについてくるんだ!いい加減諦めてくれよ!私はもう本気で疲れてきた。雨は容赦なく私をずぶ濡れにする。寒いしきつい…!!


「あっ!!」


私は右側の壁に、洞窟っぽい何かを見つけた。あそこに入れば雨に当たらなくてすむ。だが、行き止まりになって奴に追いつかれてしまう。あぁ、もう考えてる暇はない。これ以上濡れたら風邪をひいてしまいそうだ。私は右に曲がって洞窟の入り口を目指す。追いつかれたら、蹴り飛ばせばいい。可哀想だけど…仕方ない!


「待ってぇ!」


私は洞窟の中に入った。中に入ると、真っ暗で天井が意外と高く広い。暗くて奥の方が見えない。私は走り続ける。奴もひたすらついてくる。このまま壁にぶつかったら痛いだろうなぁ、と思う。


「むぁって!むぁってぇぇ!!」


長い洞窟だ。このまま壁の向こうまで続いているのだろうか。疲れて重たい足をどうにか動かす。服がびしょ濡れで寒い…。


「むぁってぇ!」


「うわっっ!!」


私は壁ではない何かにぶつかって地面にドスッと尻餅をついた。全力でぶつかってしまったので体が痛い。私は何にぶつかったんだ?


「うるせぇなぁ…」


「んぎょあああぁぁぁぁああああ!!!」


男の人の声?ドチャッという音と共に奴の叫び声が遠のいてゆく。暗くて何も見えないが、一体何が起きたのだろう。


「ちょっと待ってね〜、今ロウソクの火つけるから〜」


「え…あ、はい…」


誰だろう。こんなところに人がいるなんて…。私の目の前で、ロウソクの火がついた。



変なところ後で直します。いつもすみません…

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