三十六のお話
あのうさぎが先に副島を見つけてしまったら大変だ。私は目を凝らして森の中を歩く。
「死神さんも手伝って、黒髪でポニーテールの人探して」
「…はい」
まさか同じ場所にいたとは思わなかった。それとチェシャ猫は一体どこへ行ってしまったのだろうか。死神さんに聞いても分からないだろう…。
「そうだ」
私はふと空を見上げて思い出した。ずっと気になっていた事だ。色々な事がありすぎて、すっかり忘れていた。
「ねえ、何で空の色が変わるの?さっきはオレンジ色だったよね?」
今は、ラベンダーアメシストのような薄い紫色の空になっている。元の水色に戻ろうとしているような感じだ。
「ここの空の色は、あなたの感情で変わります。木の見た目とかも…」
「私の…感情?」
「えぇ、これもあなたが作ったのです」
私が作ったのか…やっぱり思い出せないな。私の感情で変わる空と木か…なんかすごいもの作ってるなぁ。じゃあ、今の薄紫の色は私のどういう感情なんだろう。木はずっと真っ黒だ。
「あなたが怖かったり、とても悲しかったら血のような赤、反対に楽しかったり、とても嬉しいときはパライバトルマリンのような、それは美しく青い空になります。木も同じような感じです」
パライバトルマリンか…私が大好きな宝石だ。確か、小さい頃本で見たんだ…
「そうなんだね、なんかすごい…」
どうやって作ったんだろう。空って作れるものなのか…?私は色々考えながら副島を探す。私の背中を押すように風が少し強く吹く。
あれからもう三十分以上森の中を歩き回った。副島はどこにもいない。見えるのは黒い木ばかりでそれ以外何もない。霧まで出てきた。本当にここにいるのだろうか…
「ねえ…、この森ってどうなってるの?出られないの…?」
「あまり来たことがないので…よく分かりません…」
このままここから出られなくて、死ぬまで彷徨い続けるなんて…考えただけでも怖い。どうにかしてこの森から出たい。
「あー、どうしよ…なんでこんなに何もないの!」
どこを見ても広がっているのは同じような景色。少しずつイライラしてくる。でも、イライラしても意味はない。落ち着け自分。私は自分に言い聞かせた。
「い…出雲…?」
後ろから突然、死神さん以外の声が聞こえて驚いた。私が恐る恐る振り返ると、怪我をした副島が立っていた。顔は青ざめていて、息が切れている。やっと見つけた…!!
「うさぎとトカゲが東村を連れてったの!ねえ、逃げないと殺される!」
「え…え…」
いつの間にか死神さんがいなくなっている。副島は焦りまくって滝のように汗をかいている。見つかったのはいいが、これからどうすれば…。あぁ!なんでこんな時に死神さんもチェシャ猫もいないんだ!!
「私…私死にたくない!!」
「あっ、ちょっ!!」
副島はそう叫ぶと、どこかへ走って行ってしまった。せっかく見つけたのに、どこかへ行かれてしまったら、また探すのが大変だ。私は急いで後を追いかけるが、濃い霧のせいで前がよく見えず、見失ってしまった。最悪だ…足音すら聞こえない。
「もお…ホンット最悪…」
私はポツリと呟いた。なんで行ってしまうんだ。霧はどんどん濃くなってきている。前に進むのも難しそうだ。
「ねぇ、死神さんどこ…?」
返事は返ってこない。なんでこんな時にいなくなるのだ…。深い霧の中、一人で不安が大きくなってくる。
「もう…仕方ない…か…」
私は諦めて、深い霧の中を一人で歩くことにした。いつか出られるだろうと、少しの希望を持って歩き始める。だって、こんなところにボーっと突っ立ってても意味がないだろう。副島が戻ってくるわけでもないのだから。死神さんは、なんとなく遠くへ行ってしまった気がする。またどこかで会えるといいのだが…。
「はぁ…」
意味なくため息を吐いた。霧のせいで視界が悪く、木にぶつかりそうになってとても危ない。小さく「誰かいませんかー」と呟くように言ったが、返事なんて返ってこない。大きな扇風機か何かで霧を吹き飛ばせないだろうか…。色々な事を考えながら私は前に進む。いや、進めているのだろうか…
変なところ後で直します。すみません…




