三十四のお話
「でも、どうして死神さんが…?」
「私が決めたの。ママを怒らせる悪い子は、痛い目にあわないといけないの」
今にも泣き出しそうな潤んだ目で私を見た。
そうだ…そうだったな…
私は流れる記憶を掴み、どうにか思い出した。
私は悪い子だった。お母さんを困らせる悪い子。お手伝いもしない、片付けもしない、頭も良くない悪い子だ。ごめんなさいって口で言うのは簡単だ。でも、それだけじゃ何回怒られても直らない。だから…
「私が…決めたんだ…」
私は罰を与えてくれる存在、『死神』を作った。でも、作られた死神はそれを嫌がった。「君の悲しむ顔は見たくない」と言って。だからこうした。死神からもらう傷は愛、私の罪悪感を、あなたが傷つける事で心から追い出せる。これなら了承してくれた。
「そう…そうよ…」
何故だか私の目からは大粒の涙が零れおちる。死神さんの事を思い出したからか?自分が、母親を困らせる悪い子だって分かったからか?色々なモノがぐちゃぐちゃと混ざり合って、なんとも言えない感情が喉の奥から込み上げてくる。涙が止まらない。
「おねーちゃん…どうしたの…?泣かないで…」
目の前で小さな私が私の頭を撫でながら言った。私はただ、下を向いて泣き続けた。
「ごめん…ごめんね…」
「泣かないで…」
その声と共に、突如私は真っ白な光に飲み込まれていった……
「……ん、……さん…」
誰かの泣き声、頬に伝う冷たい涙…
「死神…さん…?」
私は死神さんの腕の中で目を覚ました。目の前には涙を流す死神さんの顔があった。
「よかった…よかった…、死んでしまったかと思ったじゃないですか!」
「えへへ、ごめんね…」
本当に心配してくれていたのだろう。嬉しくて、また泣いてしまいそうだ。
「私ね、今夢を見てたの。その夢の中でね、死神さんの事思い出せたよ…」
死神さんは驚いて一瞬ポカンとした。が、すぐにニッと優しい笑顔を向けた。風がフワッと吹いて、死神さんの髪を揺らした。
「よかったです…」
その一言には、色々な感情が見えた気がした。悲しみ、苦しみ、そして喜び…
私は起き上がり、立ち上がって伸びをした。そして、私は死神さんへ向き直る。
「なんて言っていいのかな…なんか…不思議な感じ…」
「ですね…」
私がフニャっと笑って言うと、死神さんも笑った。あの時と変わらない笑顔。
「大変だー!大変だー!!」
「!?」
突然、どこからか見知らぬ大きな声が聞こえてきた。せっかく再会を喜び合っていたのに…
「なんの声?」
「多分うさぎの声です」
「うさぎ?」
こんなところにうさぎ?声はどんどん近づいて来ている。
「うぇっへへへへへへ〜、大変、大変だー!!」
大きな笑い声、一体何が大変なのだろう。パタパタと小さな足音も聞こえる。
「人間の男は捕まったよ!うえ…、メガネ女はどこだろう!!逃げた逃げた〜!!」
人間の男?メガネ女…?もしかして、東村と副島の事!?じゃあ、東村は捕まったのか!?
「死神さん!どうしよう…一緒に来た奴らの事かも…!!」
私が焦って死神さんに言うと、死神さんは小さく「え?」と言って立ち上がった。
「早く…捕まるといいですね…」
「え!?…まあいいや!行ってみようよ!」
私は死神さんの黒くて長い服を引っ張って、声のする方へ走った。捕まったら殺されてしまう、そう思ったから私は焦ったんだ。
「待ってください…!放っておけばいいでしょうに…」
「だっ、だって一応クラスメイトだし…嫌いだけど…」
木にぶつからないよう必死に声のする方へ走った。大っ嫌いな奴らのために私は走った。放っておけばいい、出来るなら私だってそうしたい。でも…
「あーっ!もう分かんない!!」
考えるのが嫌になり、私は走る事だけに集中した。
長い耳、右が三角に二箇所切れているうさぎの後ろ姿が見えた。
「ねえ!」
私はうさぎに声をかけた。うさぎの耳がピクリと動いて足を止めた。うさぎはゆっくりと振り向いた。
顔の上の部分は灰色、鼻から下は白。右目が青で下を、左目が赤で上を向いている。カッターシャツにサスペンダーをつけた黒いズボンを履いている。そして、妙にテンションが高い。変なうさぎだ。
「お…おぉおお…」
うさぎは、私を見るなり目を輝かせた。ぴょんぴょん飛び跳ね、くるくる回り出す。そして…
「…パパだよ…」
「…へ?」
突然変な事を言われた…
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おまけ四コマ漫画
いつも色々雑で本当に申し訳ないです…。後で少しずつ直していきます。twitterで少しキャラクターの紹介や、四コマ漫画を載せたりもしています。よければ覗いてみてください(^^)@mii_616_です。




