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アリスゲーム  作者: いずも
21/88

二十のお話



「…なんで…」


私は地面に座り込んで頭を抱えた。

思い出せ、思い出せ…


「大丈夫です」


チェシャ猫は、私の背中を優しく撫でて言った。大丈夫?一体何が?


「記憶が……何も…思い出せない……どうしよ…」


怖くて怖くて仕方がなくなった。このまま、残っている僅かな記憶も消えてしまうのではないか…?もう考えたくない。でも…


「大丈夫、もうすぐ思い出せますよ」


「なんで?なんでそんな事分かるの!?」


混乱している私は結構大きな声を出してしまった。チェシャ猫は気にせず私の背中を優しく撫で続ける。


「私は、あなたの事ならなんでも知っていますよ?もし思い出せなくても、私がゆっくり教えてあげますよ。まぁ、そんな事にはならないと思いますが…」


何を、言っているのか今の私には分からない。もう嫌だ。


『大丈夫…大丈夫…』


「ぁ……」


あの声だ。いつも、一体どこから聞こえてくるんだろう。優しくて、温かくて、どこか懐かしい。きっとこの声の主も私は知っているのだろう。


「チェシャ猫…」


私は今にも泣き出しそうな声で彼の名前を呼んだ。


「大丈夫…大丈夫です…」


「懐かしい」…今の私の頭の中はそれでいっぱいだ。







「もう…大丈夫…」


あれから一時間ほど地面に座り込んでいた。私はやっと落ち着きを少し取り戻した。その間チェシャ猫はずっと私の背中を撫でてくれた。

記憶がない、一番怖い事だ。受け入れたくない。でも、仕方がない。


「行こう…」


私はゆっくり立ち上がった。地面に足が着いているかさえわからない、ふわふわした感覚だ。


「こっちです」


チェシャ猫は私の手を握って歩き出した。そういえば3人置き去りだった。大丈夫だろうか…






私たちは、あの花のいい香りがする木の下に到着した。3人は何事もなく、ぐっすりと眠っていた。私は木の裏側へ行って根元に座った。身体は疲れきっているがどうも眠る事が出来ない。眠ってしまったら、そのまま二度と起きる事が出来なくなりそうで怖い。


「ねぇ」


私は隣にいるチェシャ猫に話しかけた。何か話していないと、夜に連れていかれそうで怖かったからだ。


「チェシャ猫は死神さんと仲悪いの?」


チェシャ猫はいつもの薄っすら笑い。


「あなたを傷つける人は、あなたが作った人だとしても嫌いです」


私が作った人。私が作ったんなら、なんで死神さんを『私を傷つける存在』にしてしまったのだろう。そして、いつ、どうやって作ったんだろう。疑問は次々と浮かんでくる。


「死神は、消すべきです。あなたには必要ない。王子様もそう思っています」


「王子様が…?…あれ!?」


私は頬や肩を触って驚いた。死神さんにナイフで刺されたり、切られたりした傷が跡形もなく消えている。確か、木の中にいるときはあったはず…


「死神から四メートル離れたら傷は消えますよ」


「そう…なの…」


不思議な感じだ。これも私が作った死神さんのルールみたいなものなのか…?傷の痛みがなくなったどころか、逆に軽くなった感じだ。


「なんて言ったらいいんだろ…」


聞きたい事がまとまらない。一体何を聞きたいのか分からなくなる。どうせ、「この世界は一体何なのか」なんて聞いてもチェシャ猫は答えてくれないだろう。


「もうすぐ、全て分かります。今は考えないでゆっくり休んでください」


「…うん」


私は考えるのをやめて木々の隙間から見える星空を眺めた。キラキラと、小さく、沢山の星たちが輝いている。私の家からは絶対に見る事が出来ないであろう美しい星空。私は、吸い込まれるように眠ってしまった。

変なところ後で直します。

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