十七のお話
「やめろおおぉぉぉ!!!」
何かに襲われているのか、東村は絶え間なく叫んでいる。何がいるんだろう。
私たちは副島を先頭に走った。叫び声はどんどん近くなっている。
「東村!!東村!!」
副島が叫んだ。苦しそうに叫ぶ東村、早く見つけないと死んでしまうのでは…
「あっ!!あそこ…!!」
少し先で何かが動いている、そして声も大きく聞こえる。
木を避けながらそこへ急いで向かった。
「!?」
腕や肩、頬から血を流して何かに襲われる東村がいた。東村は私たちに気がつき助けを求めてきた。
「東村!!ねぇ、あれは何!?」
「人喰いトカゲのビルです」
「いいから何とかしてよ!!」
副島がチェシャ猫に叫んだ。チェシャ猫は不思議そうに首を傾けた。
「なぜ私が?」
「はぁ!?」
チェシャ猫は東村とトカゲを眺めているだけで助けには行かなかった。副島はどうしようもなくなってトカゲの方に走って行き、東村から離そうと引っ張った。
「わわっ!何ですか!?」
驚いたトカゲは東村から手を離し、引っ張られた方向にぽてっと転けた。月の光に照らされて、その顔が見えてきた。茶色い頭に金色の目、大きな口からはチラチラと舌が見え隠れしている。スーツを着ていてひょろ長い。
「東村!?」
副島と藤原が怪我をした東村に駆け寄った。刃物で切られたような傷が沢山ある。
地面に座ったトカゲはチェシャ猫を見つけた。
「チェシャ猫?…アリスたち?」
私たちをくるりと見て立ち上がった。そして服についた汚れを払った。手には血がついたナイフが握られている。あれはリアンのところでテーブルの上に散らばっていたナイフに似ている。持ち手がウサギ型の切れ味が良さそうな特徴的なナイフだったので覚えていた。
「なんだ…アリスたちだったのか…」
ボソッと呟いたトカゲは東村に近寄りしゃがんだ。反射的に副島と藤原は後ろへ避けた。動けない東村はどうする事も出来なかった。
「はいこれ、食べようとしてごめんね」
「!?」
トカゲはそっと手に持ったナイフを東村に差し出した。東村はビクッとして受け取る。きっとリアンのところからこっそり持ってきたのだろう。
「はぁ…」
ため息を吐き、トカゲは立ち上がった。そして私の方へ歩いてきた。どうしよう、攻撃されるかも…
「出雲ちゃん、頑張ってね」
「えっ…えぁ、はい!」
トカゲは私の肩をポンと優しく叩き、暗闇の中へ消えていった。
「いてぇ…」
東村が小さく声を漏らした。副島と藤原が自分の持っていたハンカチで止血してあげている。私もハンカチを持っていたので、渡しに行こうとしたらチェシャ猫に腕を掴まれ止められた。
「…どうしたの?」
私がチェシャ猫に尋ねると、チェシャ猫は薄っすら笑って私のハンカチを取り上げ、私のポケットに戻した。
「チェシャ…猫?」
「どうしたんですか?」
私が動こうとすると、私の腕を掴むチェシャ猫の手に力が入った。チェシャ猫の目は私に行くな、と言っているようだった。私は諦めて一歩下がった。
「チッ、マジいてぇ…」
傷だらけの東村は怒り混じりの声で呟いた。そこにチェシャ猫が歩いて行き、目の前に立った。
「自業自得、ですね(笑)」
「……っ!?!?」
ニヤッと笑ったチェシャ猫、怒りで今にも爆発しそうな東村。まぁ、私も自業自得だと思う。
「夜の森は危険がいっぱい、あの帽子屋も言っていたでしょう」
東村はなにも言い返さなかった。いや、きっと言い返せなかったのだろう。東村はナイフをぎゅっと握りしめていた。今にもチェシャ猫に突き刺しそうだった。
「ねぇ、これからどうするの…もう歩けないよ…」
副島が言った。東村もこんな状態だ。もう進む事は出来なさそうだが…
「行きますよ」
やっぱりか。行かないって言ったら置いていかれる。でも…
「チェシャ猫、朝になるまで休もうよ…。みんなもう歩けないよ…」
チェシャ猫は私を見た。そして仕方なさそうに頷いた。
「分かりました、ではこちらに着いてきてください」
そう言ってチェシャ猫は歩き出した。私も後を追って着いていく。東村も副島と藤原に支えられながらなんとか着いてきている。どこへ行くんだろう。
「ここなら他の場所より安全に休めます」
少し歩いたところに、他の木より少し大きい木があった。花のいい香りがする。
東村たち3人は木の根元に座った。私はまだ座らずにその大きな木を眺めていた。
色々雑で本当にすみません…。変なところ後で直します…。




