十五のお話
「副島ちゃん…大丈夫なの…」
藤原は小さく聞いた。副島はまだ血を吐きながら苦しそうにしている。どう見ても大丈夫な状態ではないが副島は小さく「大丈夫…大丈夫」と言っている。
「トンネルって…あれか?」
少し先にトンネルが見えた。中は真っ暗で何も見えなさそうだ。
私たちはそのトンネルに向かって歩いて行った。
「これも、振り返ったり声出したらダメなのか?」
「いいえ」
私たちはトンネルの中へ入っていった。
やはり中は真っ暗で何も見えない。きっと出口は遠いんだろうな、と思った。私たちの足音だけが中に響いた。
「まだ出られないの?」
もう三十分以上は歩いただろう。まだ出口は見えてこない。
「まだですね」
あとどれくらい歩けばいいんだろう。そろそろ疲れてきた。
「待って…もう…私…」
副島が辛そうに言った。そしてそのままズタンと地面に倒れ込んだ。支えていた藤原も一緒に転けてしまう。
「副島!」
「副島ちゃん!?」
副島は目を瞑って動かない。まさか…
「大丈夫…息は…してる…」
よかった、死んではないようだ。私は少しだけ安心した。
「ねぇ、もう私たち歩けないよ…休もうよ…」
藤原がチェシャ猫に言う。チェシャ猫はいつもの薄っすら笑いで頷いた。
「あ〜、疲れた…」
東村は藤原たちの近くに座った。私が3人より少し離れたところに座ると、チェシャ猫が隣に来た。
「なんか眠くなってきた…寝てもいいか?」
東村の声がトンネルの中に響いた。チェシャ猫は「お好きにどうぞ」と言って私の横に座る。東村も藤原もあっという間に寝てしまった。私も眠くなってきた。体が怠く、瞼が鉛のように重くなって、私もすぐに眠ってしまった。
『もうすぐ、会えるね…』
あの声だ。私は薄っすら目を開けた。真っ暗で何も見えない。チェシャ猫もいない。これは夢の中だろうか。
『やっと…やっと…』
声が出ない。あなたは誰なの?なぜ私に会いたいの?
届かない質問が頭の中にどんどん浮かび上がっていく。
カラン…
私の目の前に、あの水色の猫のストラップがどこかから降ってきた。影の男の子が持っていた、あのストラップ。
どうしても思い出せないんだ。どうしても、どうしても。辛い、苦しいんだ。
『大丈夫…もうすぐ、全てを思い出せるよ…僕の事も…』
なんとなく、この夢がもうすぐ終わってしまうと分かってしまった。嫌だ、待って、行かないで。
「一人にしないでーー」
あぁ、終わってしまう。聞きたい事、いっぱいあるのに…
「んぅ…」
私は目を覚ました。
「おはようございます」
頭の上からチェシャ猫の声がした。薔薇のいい匂いがする。私は何か布を掴んでいる事に気がついた。紫色のシマシマ…チェシャ猫の…服?
「はっ!?ごめん!?」
私は勢いよく起き上がった。チェシャ猫にしがみついて眠っていたようだ。
「寝心地はどうでした?」
チェシャ猫は薄っすら笑って聞いてきた。恥ずかしい…。この歳になってそんな…
私は離れたところにいる3人を見た。よかった寝てる。見られてない。
「ごめん…ごめん…」
私は真っ赤な顔を伏せて呟くように謝った。その姿を見てチェシャ猫はクスクスと笑った。
「昔は、いつもああやって寝てましたよ」
「昔?私が?」
チェシャ猫はいつもよりニコニコしている。それより昔って…?
「ねぇ…、私とチェシャ猫って…昔あった事ある…?」
「えぇ」
「どこで?」
「あなたのお家で」
「私の家!?なんで!?いつ!?友達だったの!?」
今までにないほど沢山の質問が口から溢れた。目を輝かせる私をチェシャ猫は楽しそうに見ている。
「えぇ、今も私は友達ですよ。これ以上答える事は出来ません」
「今も…友達…嬉しい…」
私は、ものすごい人見知りで、いつもクラスではひとりぼっちだ。時々話しかけてくれる人はいるけど殆どの時間一人だ。友達って思える人なんて今はいない。だから、とても嬉しかった。多分、年は離れているだろうけど、友達って思っていい人ができてとても嬉しい。でも…
「私といつ友達になったの?」
私の質問にチェシャ猫は難しい顔をした。
「それは…まだ答える事は出来ません。答えたら王子様に怒られてしまいます」
また出た王子様。一体王子様ってなんなんだろう。リアンも言っていた、王子様に怒られるって。怖い人なんだろうか。
「王子様ってそんなに怖い人なの?」
チェシャ猫はいつもの薄っすら笑いで首を横に振った。
「王子様はとても優しい人です。妹思いで料理も上手です」
「へ〜、妹がいるんだ。料理もできるなんてすごい…」
私がそういうとチェシャ猫はクスクスと笑った。
変なところ後で直します。雑ですみません。




