十四のお話
「ご…ごめんね、ネムチー…」
「すみません…」
二人はネムチーに謝り、席へ戻ってきた。
「ごめんねアリスたち…迷惑かけて…」
ネムチーは大きなあくびをして、眠たそうに言った。そしてまたすぐテーブルに突っ伏し、スヤスヤと眠ってしまった。
「はぁ、もう喧嘩は疲れちゃうから嫌、ゲームを始めましょう、お茶が冷めちゃう」
リアンは服をパパッと払って私たちを見る。
「じゃあ皆んな、好きなのとって!アタシは残ったやつをもらうから!」
「あの…ハズレには一体なにが入ってるんですか…?」
副島がオドオドしながら聞く。私もとても気になっていた。
「ハズレは飲むとお腹が痛くなる毒が入っているわよ!」
「は!?冗談じゃねぇ、俺はそんなもん飲みたくねぇって!!」
東村が怒鳴った。そりゃあ皆んな飲みたくないでしょ…
「大丈夫よ、死にはしないんだからぁ。皆んな早く取って!取らないならナイフ刺しちゃうよ」
リアンはそう言って笑った。仕方なく私たちは紅茶を取った。ネムチーも手だけを動かし適当に取っていた。寝てるんじゃないのかな。
「じゃあせーので一気に飲むわよ!ズルはなしよ!」
私はゴクリと唾を飲み込んだ。これが毒入りのハズレだったら…と思うだけでお腹が痛くなってくる。この中の誰かは毒入り、それはチェシャ猫かもしれないしネムチーかもしれない、そしてリアンかもしれない。
「せぇ〜の!」
その号令と共に私たちは紅茶を一気に飲み干す。リンゴのいい香りが私の鼻腔をくすぐる。そのおかげで少しだけ恐怖心が薄れた。
「ふぅ、美味しかったわね!ハズレを引いたのは誰かしら〜」
皆んな紅茶を飲み終え、カップを小さなお皿の上に置く。まだ誰にも変化はない。
「そうだ、これからお城に行くんでしょ〜!通り道に綺麗なお花畑があるわよ〜」
リアンは何も気にせず話し出した。一体誰がハズレを引いたんだ?
「皆んな暗いわねぇ、どうかしたの?あ、ハズレが誰か気になってるのね!」
「当たり前だ…」
東村が怒り混じりの声で言った。
「うっ……!!?」
突然副島がお腹を抑えて声を漏らした。とても苦しそうだ。という事は…
「は〜い!ハズレはそこのポニテメガネちゃんでした〜!」
よかった…私、ハズレじゃなくて…。副島には申し訳ないが、私は安心してフゥっと息を吐いた。
「痛い…痛い!!」
副島は椅子から下りて地面にしゃがみ込んだ。相当痛いらしい。
「だ…大丈夫なの!?」
藤原が慌ててリアンに聞いた。藤原たちを見るリアンの目は、どこかあのアヒルのカイの殺意に満ちた目に似ていた。嫌い、憎い、殺したい、の目だ。その目に私は映っていない、この3人だけだ。なぜ…?
「大丈夫よ」
冷たく微笑むリアンは言った。チェシャ猫も薄っすら笑って副島を見ていた。
「ゲホッゲホッ!!……あ…」
口を手で抑え、咳き込む副島。その手を見た副島は凍りついた。
「…血…が…」
手にはベッタリと赤黒い血がついている。東村も藤原も驚き固まってしまう。
「ちょっと…これ本当に…大丈夫なの…」
私は少し心配になってリアンに聞く。リアンはなぜか悲しそうな目で私を見る。
「なぜ…心配するの…?」
「なぜって…」
なぜって…、同じ人間だから?一応知り合いだから?そんな事、わからない。目の前で血を吐いてる人がいたら心配するのが当たり前じゃ…?
チェシャ猫がリアンをチラッと見た。リアンはそれに気づきチェシャ猫を見る。そして何か思い出したかのようにハッとした。
「そうだったわ…、そうね。可哀想に…。その子は大丈夫よ、少し時間が経てば毒は消えるから」
リアンは切ない目で私を眺める。何がそうだったのだろうか、何が可哀想だったのだろうか。私はもう何も聞かずに副島を見た。
苦しそうに血を吐き涙をこぼす副島。背中をさすってあげる藤原。東村は恐怖で体が動かないのか、副島を引きつった顔で眺めていた。私はどうしていいか分からなくて、ただ副島を見ていた。
「みぃ…」
リアンは小さく呟いた。チェシャ猫はまたリアンをチラッと見て立ち上がった。
「もう、行くの?」
リアンがチェシャ猫に聞いた。チェシャ猫は「ええ」とだけ答え、私たちの元へやってきた。
「さあ、行きましょう。日が暮れてしまう前に」
「ま…待ってよ!!副島ちゃんこんな状態で歩けるわけ…」
藤原は副島の背中をさすりながら言った。副島は誰がどう見ても歩ける状態じゃない。
「歩けますよ、ねぇ、あなた、あの時言ってたじゃないですか?美月さんがお腹痛いとき」
なんの話だろ。私は今日、一度もお腹痛くなってないぞ?
「ごめん…なさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
「副島ちゃん!?」
副島はあの時の藤原のように謝りだした。藤原は驚いている。
「ごめん…本当に…ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさい許してお願い…」
幻覚でも見ているのだろうか?副島はひたすら謝り何かに許しを請うている。
「許されるとでも…」
チェシャ猫とリアンが同時に小さく呟いた。
「さあ、早く行きましょう」
チェシャ猫が言うと副島はふらふらしながら立ち上がった。藤原が素早く支えてあげる。
「もうお別れか…もう少しお話ししたかったわ」
リアンがネムチーを抱いて私たちの近くに来た。
「夜の森には気をつけるのよ。それと、『死神』に刃物をあげちゃダメよ!あっ、あっちのトンネルを抜ければ出られるわ!」
リアンはこの先の情報をくれた。
「ありがとう!」
私はリアンにお礼を言って手を振った。リアンは嬉しそうにネムチーと一緒に手を振り返してくれた。
私たちはそのトンネルの方へ歩き出した。
雑ですみません。変なところ後で直します。




