十一のお話
ザワザワと風で揺れる緑色の綺麗な葉たち。
ここ…昔、来た事ある気が…
「ありますよ…」
「え…」
チェシャ猫が私の少し後ろを着いてきていた。
私の心の声が聞こえたのだろうか…
「ホラ、オレンジ色の花」
「えっ、あ…」
なんだ、そっちか。私たちは指さされた木の根元を見た。
「うわ…」
副島が声を漏らす。
花というより目玉だ。目玉にオレンジ色の花弁がついた気持ち悪いやつが一本生えていた。目玉は斜め前を見ていた。
「あっ、あっちにもある」
オレンジ目玉花の目線の先の木の根元にも同じ花があった。そしてその花の目線の先にも同じ花がある。
私たちは花を見つけながら進んでいった。
心地いい風が木々の間を通り抜けて私たちに届く。
『アハハッ…××!早く!』
どこかから男の子の声がする。
『待ってよ〜』
その後に女の子の声。
向こう側で黒く小さな影が二つ、楽しそうに遊んでいる。笑い合い、走り回る。
「懐かしいですね」
チェシャ猫がポツリと呟いた。
ホント、なぜか懐かしい。
いつのまにか2人の影は消え、一本のオレンジ色の美しい花に変わっていた。
向こうへ行って花をよく見たいが、皆んなに置いていかれたら困るので諦めて歩いた。
私はいつも3人から少し離れたところを一人で歩いている。今はチェシャ猫と二人だから少し気が楽だ。
「チェシャ猫って…一体何者?」
私は小さな声で聞いてみた。チェシャ猫はちゃんとそれを聞いていた。
「私は…」
チェシャ猫がそう言うと、視界が真っ暗になった。
暗い…、何も見えない…。
あの3人は?チェシャ猫は?
「…グス…グス…うぅ…」
誰かが泣いている。女の子の声だ。
「泣かないで…××…泣かないで…」
影の女の子だ。それと
「チェシャ…猫…?」
影の女の子の背中をさするチェシャ猫がいた。それともう一人、影の誰かがいる。
「あ…」
もう一人の影の子の手に、あの水色の猫のストラップが見えた。
「大丈夫…××…もう大丈夫だよ…」
「僕らがいるから!××は僕らが守るから!ね!」
名前が聞き取れない。何、この感じ。
苦しい、痛い、寂しい、怖い、辛い、でも、すごく幸せだ。
大好きなんだ、二人が。そう、あれは私。泣いているのは私。でも、思い出せない。あの男の子は、いったい…
「…美月さん?」
ハッと我に返る。
「なんで…泣いているんですか?」
「え…」
気づけば私の両目からは大粒の涙が溢れている。どうして…
「悪い夢でも、みたんですか?…大丈夫です…大丈夫…」
そう言ってチェシャ猫は私を優しく抱きしめてくれた。あぁ、懐かしい。この感じ。すごく温かい。
「わからない…わからないんだ…思い出せない……。私は…あなたを知っている…」
「ええ…、今は、まだ思い出さなくていい、思い出してはいけない」
何も考えたくなくなった。このまま、ずっとこうしていたい。でも…
「ごめんね…、皆んなに置いてかれちゃったね…」
私はチェシャ猫から少し離れ、涙を拭いた。そしてニコッと笑ってみせた。するとチェシャ猫もまた、薄っすら笑ってくれた。
「じゃあ、行きましょうか」
「うん!」
3人を見失ってしまったが、オレンジの目玉花があるから迷う事はないだろう。それにチェシャ猫もいる。なんか、心強いな。
「手、繋いであげましょうか?」
チェシャ猫が言う。
「…うん!」
私はチェシャ猫と手を繋いだ。
そして花を見つけながらゆっくり歩いた。
チラチラと脳裏に浮かぶ幼い頃の記憶。いつも三人、…三人…。誰なんだろう。なんで私はチェシャ猫を知っているのだろう。
「…見えましたよ」
「え?…ホントだ」
前を歩く3人を見つけた。それほど離れていなかったようだ。
少し早歩きして追いついた。
「チッ、どんだけあるんだよ…」
東村が不満を漏らす。
確かに、私も少しそう思う。多分もう百本くらいは見ている。
私たちは長い花の道を進んでいく。
変なところあとで直します。雑ですみません…




