十のお話
「行くか…」
東村が小さく呟く。相変わらず藤原は体調が悪そうだ。
「大丈夫なの…?東村怪我だらけだし…なおは具合悪そうだし…」
副島は心配そうに言った。
「大丈夫だろ。トンネル潜るだけだし」
休まず私たちはトンネルを潜る事にした。
「喋ったり振り向いたりしたらダメだったな…」
東村はそう呟く。そして4人はトンネルの中へ入った。
中は真っ暗で何も見えない。本当の闇の中って感じだ。
「……」
無言で進んでいく。喋ったらどうなるんだろう。振り返ったら何かいるのだろうか…。
そういえばチェシャ猫はどこにいるんだろう。
静かな空間だから、誰にも邪魔される事なく沢山の疑問が頭の中に浮かんでいく。
ズル……ズル……
「………」
何の音だろう。後ろから聞こえてくる。
ズル…ズル……ズル……
なにかがレンガの床と擦れるような音、気味が悪い。
「アハハッ」
「こっちこっち!!」
小さな子供のような声も聞こえてくる。
私たちは気にせず歩いた。
すると前でボール遊びをする小さな何かが見えた。
緑色の耳のうさぎだ。ウェイトレスうさぎや耳の赤いうさぎより少し小さい気がする。三匹でサッカーでもしているのだろうか。
「こっちだってば〜」
「はいはい!」
うさぎたちが蹴っているのは何だろう。ボールではない気がするが…
「ッ!?」
突如副島が口を押さえ、床に座り込んだ。
涙を流しうさぎたちが蹴るボールを指差した。
「……!?」
やはりボールではなかった。あれは…
井上の頭部だ。顔は蹴られグチャグチャ、目玉と鼻が無い。全体的に傷だらけだがなんとなく井上だと4人はわかってしまった。
引きつった顔の東村と今にも倒れそうな藤原、それに声を出さずに泣く副島。
ズル…ズル…ズル……
後ろからも何かが近づいてくる。
東村が前を指差し『走るぞ』と合図した。副島はどうするんだよ、と思った瞬間東村と藤原は勢いよく走っていった。
『酷い奴らだね…さぁ、走るんだ…』
あの声が聞こえた。私だけならいつでも走って行ける。だが副島が…、嫌いだけど…大嫌いだけど…
「!?」
私はなにも考えず副島を無理矢理立ち上がらせ引きずるような格好で走った。副島も必死に走って着いてきている。
『君は…優しすぎる…』
あの声はそう言った。優しすぎるもなにも置いて行ったら副島は死ぬかもしれないだろう!?
私は副島を連れ、全力で走った。
もうすぐ出られる。闇の中に小さく光る場所を見つけた。きっとあれは出口だろう。
私は、勢いよく光る場所に飛び込んだ。
「うっわあ!!おまっ…えら…」
トンネルを抜けてすぐのところに東村と藤原がいた。2人とも生き返った死人でも見るような顔で私たちを見た。
「酷い!!最低!!」
副島はまた、ガクンと地面に座り込んだ。今度は声を出して泣く。
「ごめん……」
「だって…仕方なかったんだ…」
仕方なかった、自分が助かるためなら他人なんてどうでもいい、か。まあ、皆んな人間だ。それが当たり前のことだ。どれだけ仲のいい友達でも裏切る醜い生き物だ。そしてごめん、で済まそうとする。言葉だけの謝りなんてどうでもいい。
まあ、それはどうでもいいがここは何だろう。灰色の薔薇はどこにも見当たらない。
今度は明るい森のようだ。空は少し雲が多い。
「少し…休むか…?」
東村が言う。2人はコクリと頷いた。
「休憩ですか?これでは日が暮れてしまいますね」
チェシャ猫だ。
「お前…」
東村が小さく呟く。
「カイさんに聞きましたが、あなた泳ぎが上手なんですね」
東村は無視して地面に腰を下ろした。
「日が暮れる前にこの森を抜ける方がいいですよ。トカゲに喰われたくなければ」
「トカゲが人を食べるの?」
私の問いに、チェシャ猫はいつもの薄っすら笑いで「えぇ」と頷いた。
「灰色の薔薇はどこにあるんですか?」
藤原が聞く。
「さぁ、自分たちで探してください」
チェシャ猫は意地悪くそう言った。
「じゃあ、ヒントか何かくれない?森は広いし…」
「ヒント…ですか…、じゃあ、オレンジ色の花を見つけながら歩いてください」
チェシャ猫は私の問いには答えてくれる。なんか、私の味方って思えて少し安心できる。
「チッ、行こう…」
東村が立ち上がり歩き出す。私たちも着いていく。
変なところあったらすみません。あとで直します。雑ですみません。




