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かわいいかわいいあの子

作者: 一ノ瀬 葵

チリンチリン

チリンチリン


キィィィィ

ドン


「いてててて」


危ないな。

ってシロナガスクジラ?

じゃなくて、白永さん、だよね。


彼女は、白永早苗さん、僕と学校は違えど予備校が一緒で去年までは英語の講座が一緒だった。

受験生になって志望校別に分かれてからはあんまり会うこともなく自習室で会うことも少なくなったように感じる。

白永さんはあの有名なお嬢様学校に通っていて、サラサラ髪が分かるポニーテルと、ぱっちりした目、白くて綺麗な肌、きちんと着こなされた制服。いつ見ても目を奪われる。

そんな彼女と話すようになったのは、彼女がテキストを忘れた時に、そのクラスに友達がいなかったこともあり見せてからだ。

そしてなんで今、白永さんが僕に自転車のまま突っ込んできたのか、分からなかった。


「白永さん、大丈夫?」


「あぁ、青葉くんじゃん」

「蒼井だよ、いつまでこのやり取りするの」

「まぁいいじゃないか、坊や」


名前を聞かれたとき、僕の声が小さかったのか、青葉だと言われて、訂正してを繰り返したのだがすぐ覚えてくれたにも相変わらず青葉くんと言ってくる。


「坊や、はどっちですか、お嬢様、いきなり自転車で突っ込んできて、はしたないですよ」


お嬢様学校にいそうな先生の真似をして受け答えをしてみた。


「お嬢様じゃないし、何、今日キレキレじゃん」


と彼女は腹を抱えながら笑っていた。


「で、一体どうしたの、傷がついちゃうよ」


「あーえっとね、探検してたの」


「探検?」

「そう探検、蒼井くんも手伝ってよ」


「探検してたのしても、僕にぶつかる理由にはなってませんけど」


「君がいるって思ったらブレーキ忘れちゃった」


彼女はあの有名なお嬢様学校にいるような雰囲気は最初からしなかった。

実際、今、僕がいるクラスの子で同じ制服を見るけれど、その子たちは大体話し方もおしとやかで持っているものも高級そうなものばかりだった。

なぜそんなお嬢様学校に通っているのか、以前聞いたところはぐらかされたのでそれ以上は聞かなかった。


「で、探検ってどこに行くの?」


「この写真のところに行かなきゃいけないの」

「どここれ」


「いやぁそれが分かんなくてさ、でも、明日までの課題なんだよね」


「課題?」


そんな、言ってしまえば野蛮な、課題出すのか、この学校は。


「そうそう、課題」


と彼女は右斜め上の方を見ながら答えた。前にはぐらかされた時と同じだ。


その写真には、綺麗な海と砂浜があった、むしろそれしかない。


「待ってよ、白永さん、これだけじゃ、どう考えても分からないよ」


ん、ちょっと待てよ、砂浜になんか書かれてある。


LAQUA


「ラクーア?だよね」

「そう、そうなの」

「確か、ラクーアってみみず港のあるところが聖地のアイドルだよね」

「だから、ここに行けばいいんじゃないかと思うの」

「あーそういうことか。行ってみるか」


僕たちがいるのは、海辺近くのコンビニでなのだが、彼女はさっきお昼を買って海辺まで向かう坂を降りてきていたらしい。なのでこのまま降りていけば、みみず港の海に出る。


だいぶ降りていくと、また急に彼女は止まった。


「ねぇ、ここだよ、絶対、この角度」

と白永さんは嬉しそうに海にスマホをかざす。


「で、探検でもなんでもなかったわけだけどここに来てどうするの」


「どうもしないよ」

「え?」


「君と話がしたかっただけだもん」

「たまたまそこのコンビニ行ったら君がいたからギリギリのところまで行って話しかけようと思ったけど、無理だったからブレーキかけなかった」


随分と強引な。

「写真はたまたま持ってただけ」


「ねぇ、白永さん、いや、アイラと呼んだ方がいいのかな」


「なーんだ、気付いちゃったんだ、蒼井くん」


「でも、あの高校って芸能活動禁止じゃないの?」

「世の中バレなきゃいいってもんよ、でも君に気付かれるくらいだもんね、もう時間の問題、受験もあるし、やめるの」


「そ、そんなやめることなんてしなくても休止とかでいいんじゃ」


「大学生にもなってアイドルなんて私は出来ない」


「最近はユニドルとかあるじゃん」

「いいの、私はこの町からも出るしもう二度と君に会うこともない」


彼女は苦しそうに涙を落とし、俯き加減で言葉を繋げた。


「私は帰らなければならないところがあるの」


「でも、たまには会えるでしょ」


彼女は涙を振り落とすように横に首を振った。


「私、海へ帰らなければならないの」

とこのみみず港の海を指差した。


僕は彼女何を言っているのか理解が出来なかった。


「私、高校生活が終わったらあの海へ帰って姫を続けなければならないの、君と会うことも話すこともない」


「じゃあなんで君は今、ここで生活出来てるの?」


「特殊加工ってやつよ、高校生活が終わるまで後半年か、仲良くしてね、これからも」


彼女は振り切るように笑顔で僕にそう告げた。


「ラクーアでの日々は夢のようだった、君がいつも特等席で応援してくれて、アイラって叫んでくれて、いつも泣いちゃうの、嬉しくて」


「でも、私、姫に戻ってもしっかり仕事するからね」


「ちょっと待ってくれ、受験をする必要はどこにあるんだ」

と素朴な疑問をぶつけると

「ないよ」

と彼女ははっきに答えた


「君と一緒に過ごしたかっただけ、三年生は私が地上の勉強についていけなかったから離れちゃったけどね」


とまた君は右斜め上を見ながら話している。

それでも切ない表情をしているのが分かった。


「家は海の中ってことで、また予備校でね、チャオ」


といつもの可愛い笑顔で海へ帰っていった。


白永って変換しようとしたらシロナガスクジラって出てきて、これは書くしかないってなったの。はい、すみません。笑

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