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俺と除霊とブラックバイト2  作者: ゆずさくら


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 何度も考えるが、興奮は抑えらえなかった。

 とにかく、痛くないようにそっとそこの清掃を終えると、俺はため息をついた。

「やっぱり、こいつ、本当の使用方法はラブドールなんじゃないの」

 と、突然上から声がする。

「それっぽいね」

「加藤さんまでそんなこと言わないでください。話がこじれちゃうから」

「……」

 俺たちのやりとりをマリアは黙って見ていた。

 そういえば清掃が終わったのに裸だった。

「ああ、マリア、清掃(クリーニング)は終わったから服を着ていいよ」

「キセテクダサイ」

 そうだった。着替えは自分でしないのだ。

 俺はマリアの背中を押して風呂場へ向かった。




 その日から、俺は下の部屋で寝ることになった。

 マリアが充電している反対側の壁に、寝袋のような細長い結界を張られ、そこで寝た。

 時間が来ると、自然に結界が解け、自由に動くことができた。

 朝が来て、まだ部屋のなかで誰も起きていない状況で、俺は目が覚めた。

 気づくと、結界も解けていた。

 俺は起き上がり、スマフォの画面を眺めた。

「……」

 どうでもいいニュースを読んでいる時、俺は突然、エリーの顔が頭に浮かんだ。

 同時に、ビルから落ちてくる人、入線してくる電車に飛び込む人の映像が、何度も繰り返された。

「ごめんなさい…… 俺のせいで……」

 目の前のスマフォがスリープになっていた。

 しかし、俺はそのスマフォを見ていない。だからといって、他のどこかをみているわけでもない。

 ただ漠然と目を開いているだけだった。そして頭の中で、人が飛び降りたり、飛び込んだりすることを何度も思い出している。

 暗い気持ちが心を支配し、身動きが取れなかった。

「カゲヤマ?」

 音声はなかった。ただ意味だけが頭に問いかけられた。

「キモチニマケタラ、オモウツボデス」

 マリアの言いたい意味がわからなかった。

 手に振動を感じた。

 スマフォに何か連絡が入ったようだった。

 俺はスマフォを確認する。

 メッセージが表示される。

『わるけど、今日もバイト入れる? 店長』

 一体、何時にメッセージを打ってくるんだ。

 こんな時間に、誰かが急にバイト休む、って連絡入れたのか? 違う。最初から人手が足りないんだ。まったくどうかしてる。

「はぁ……」

 こういう現実は、どこにいても追いかけてくるのか、と思った。

 今日は、大学にもいかなければならないから、バイトだけ避けてもしかたない。

 俺は『行く』とメッセージを返した。




 大学は何も変わることなく俺を迎え入れてくれた。

 校内に入り、友達と話をし、授業を受けた。

 そう俺が変わっただけだ。

 俺は午後の授業が休校になったため、バイトに行くまでの間、どうやって暇をつぶそうか考えていた。

 考えるための適当な場所がないから、とりあえず学食にいた。

「ワタシハ、ドウシタラ?」

 マリアはアンドロイドで、人間のように飲食はできない。

 学食にいるのに、飲み食いせずに突っ立っていると不自然に映るだろう。

「学食の周りを歩いていて」

「リョウカイシマシタ」

 マリアと別れ、俺は学食に入った。

「あれ? カゲヤマ、授業は?」

 俺は横から声をかけられた。

「加藤さん?」

 四人掛けの席に加藤さんが座っている。

 その横に蘆屋さんがテーブルに突っ伏して寝ている。

 俺は近づいていって、向いの席に座る。

「部屋にいると思ってました」

「さすがにそれでは暇なので、出てきちゃいました」

「けど、また変な除霊士に……」

「……」

 急に顔を曇らせる。

 俺はカバンの中から、橋口さんから借りた霊圧測定器を出す。

 そしてスマフォにつなげ、

「ちょっと測定していいですか?」

 加藤さんは無言でうなずく。

 アプリを起動すると、霊圧の測定が始まった。

 立ち上がりの妙な波形を無視して、安定するまで待つ。

 パターンは昨日測った時と同じ。異常なし。

 俺は結果を記録する。

「大丈夫です」

「……」

「どうしました? 気分悪いとかありますか?」

 加藤さんは俺の顔をじっと見ている。

「冴島さんに聞きました」

 突然の申告に俺は何を答えていいか悩んだ。

「はい。えっと、何を聞きましたか?」

「除霊事務所で何をしたか、を聞きました」

「……ああ、はいはい」

「影山くん、あんたも所詮、あの悪徳除霊師と同じじゃない!」

「えっ? そんなこと…… あっ、まさか……」

 冴島さんがお金を要求した。俺はとっさにそう思った。おれの給料から経費という名で天引きされる費用の数々が頭に浮かんだ。

「冴島さんが請求してきた?? もしそうなら、俺の給料から引いてもらうようにするから」

 俺はスマフォをもって立ち上がった。

「何言ってるの? 違うわよ。お金じゃない」

「へ?」

 俺はもう一度座席に座りかけ、中腰の姿勢でとまった。

 お金じゃないのに、悪徳除霊師と同じ、ということは、エロの方向? 誰が? まさか蘆屋さん? それとも一緒に暮らさなければならないこと?

「えっと、もしかしてロフトで何かあったのかな?」

 俺はそれとなく伏せて寝ている蘆屋さんの方に視線を向けた。

「もしかして、蘆屋さんが何かしたとか思ってる? あなた私の状況ってわからないの?」

 懸命に頭を働かせるが、想像出来なかった。俺はたずねる。

「えっと、どういう状況なんですか?」

「恥ずかしいから耳かして」

 俺は横を向いてテーブル越しに耳を近づける。

「〇×△〇□□〇〇」

 加藤さんの手が当たって、こしょこしょ、と息がかかる。

 そのせいで何を言ったか聞こえない。

「えっと、もう一度言ってもらえます?」

「もうっ!」

 頭を叩かれた。

 そしてももう一度ささやかれる。

「あなたに抱かれたい」

 吐息交じりのその声に、俺の体中に快感が走ったようだった。

「馬鹿!」

 叩かれて俺は座席に戻る。

 加藤さんが言う。 

「私、影山くんのこと、ちっとも好きでないのよ。こんな衝動絶対おかしい。私に施術した時、何か細工したに違いないわ」

 確かに加藤さんの霊的隙間に、俺の霊光を入れ、埋めた。

 霊的隙間が埋まれば、悪霊に取りつかれることはなくなり、悪徳除霊師に除霊を持ちかけられることもなくなる。はずだった。

 しかし、実際は俺の霊光が悪霊のように、加藤さんに性的衝動を引き起こしている、ということだ。

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