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俺と除霊とブラックバイト2  作者: ゆずさくら


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 もう少し働くと、手当を付けなければいけない時間なのだ。どうせ働くなら、すこしでもその時間にかかるようにすると、賃金が良くなるのだ。店長は可能な限りバイトへの給料を抑えようという魂胆なのだ。

「もう落ち着いたし、あとは大丈夫。影山くんは急に頼んじゃって本当にごめんね。ほんと、大丈夫だから……」

「はい……」

 自分でムッとしてしまっているのがわかる。

 あと少し働けば、手当がでるのに。

「あがりますね」

 俺に話しかけてきた美香ちゃんはエプロンを外しながらそう言った。

 店長は美香ちゃんに手を振りながら、俺に向かって

「お疲れさま」

 と言う。さっさと帰れ、と言わんばかりだった。

「君も帰ろ?」

 さらに追い打ちをかけるように、もう少し粘ろうか、という俺の袖を美香ちゃんが引っ張る。

「あ、ちがった。カゲヤマくんだっけ」

「えっと……」

「加藤美香です」

「加藤さん。あのさ……」

「話があるなら店出てからにしよ」

「えっ」

 俺は店を出ざるを得ない状況になってしまった。




 冴島は、影山とすれ違ったあと、橋口の事務所に戻った。

 橋口の事務所に入ってくるなり、冴島は扉の鍵をかけた。

「麗子、何してるの……」

「鍵をかけたのよ。入ってこれないように」

 橋口はムッとした表情を浮かべた。

 事情が飲み込めない蘆屋が言う。

「あれ、今さっきカゲヤマが出て行ったところで……」

「蘆屋さん、麗子はそれを確認して戻ってきてるんだケド」

「?」

 冴島は橋口の顔を見てから、蘆屋の顔を見た。

「蘆屋さん。あなた『さやか』としばらく替わっててくれない?」

「えっ…… そんな……」

 橋口がさっと近づいて、蘆屋の額に手を当てると、蘆屋はまぶたを閉じてソファーに横になった。

「なに? さっき言ってた重大なことって」

「……」

 冴島は橋口の向かい側に座り、タブレットを置く。

 反対向きに書かれた文字を見て、橋口は言う。

「これが?」

「とにかく見てみて」

 橋口はタブレットをそのまま手に取ると、上下が認識されて文字が表示し直された。

 それは良く使う文書ファイルの形式で、人名がリスト化されていた。

「なんの……」

 橋口は文書のタイトルを見た。

「これって『大災害』の時の被害者リスト?」

 冴島はうなずく。

「この囲んだ名前って『カゲヤマ』だけど……」

「となりのタブを開いてみて」

 橋口がタブレットの画面をタップすると、別の画面に切り替わる。

 影山家の一家失踪を伝える、今はない当時のネットのまとめサイトだった。

「あれ……」

 橋口はさっきの文書とそのまとめサイトをタップして行き来する。

「どういうこと?」

「……」

 冴島が指で指し示す。

 その特定の名前が、切り替えたどちら側にも表示されている。

 冴島が言う。

「考えられることは、二つ。本当に死んでいるか、大災害で死んだことになっていたのか」

「死んだことになっているっていうのは?」

「捜索願が出ていて、途中、大災害にあうであろう場所に移動の履歴があれば、例えば宿泊先とか、航空券の購入だとか。大災害後に行方が分からなくなればこのリストには載る。実際に死んでいようといまいと」

 手で囲いを作り、あれ、これ、それ、という風に冴島はその手を下ろす場所を変えて説明する。

「けど、死んでしまったことにしたい意味は?」

「死んだことにすれば都合がいいことはいっぱいあるでしょう。例えば保険金の受け取りとか」

 そう言って冴島が人差し指と親指で丸を作る。

「麗子。カゲヤマ家は大金持ちなのよ」

 橋口も同じように指で形を作って言い返した。

「それだけではお金がいらない理由にはならないわ。お金があればあったで余計必要な場面はある。納税とか」

「死んだことにしたかったんだとして、何か問題あるの」

 冴島は首を振る。

「もちろん、死んだことにして死んでいなかった、だけではなく、本当に大災害で、本当に亡くなっていることもありうる。大災害で亡くなったのだとしたら、大災害を二度と起こしたくない、と思って霊力を偏在させよう、と思ったのかもしれない」

 橋口は思い出したように口をはさんだ。

「……この前みた反魂の術のようなことをしようとしたのかも知れない?」

「そういうのも当然ありうる」

 橋口はそこまで聞いて、両手を広げ、手のひらを上に向け肩をすぼめると言った。

「まあ、全部推測に過ぎないケド」

「影山家が大災害とかかわっている、というところがポイントだと思うの。影山家の一回失踪事件は、大災害と深く関わっているという点がね。 ……そろそろさやかは起きてこないかしら」

「……無理矢理起こしてみる」

 橋口が蘆屋の額に手を当てて、もう一方の手を口元に添え、何か呪文を唱える。

 紐で引っ張り上げられているように、蘆屋さんの上体がスーッと起き上がる。

「みなさん何を急いでるんですか?」

「あなた、影山さやかなの?」

「ええ。呼び出しておいて、名前を問いただすなんて失礼な感じ」

「ごめんなさい。ちょっとこれを見て。 ……これって、あなたの母親ね?」

 冴島がタブレットの画面を指さして、言う。

「そうよ」

 橋口が割り込む。

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