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俺と除霊とブラックバイト2  作者: ゆずさくら


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(47)

「わかったよ!」

 トーマスの反対側にピートが座った。両手の指を絡めるようにして、テーブルに突き、そのまま肘を曲げた。指を絡めた手で自らの頭をなんどか叩く。

「どうしてこんなことになった。一体、何者なんだ『カゲヤマ』ってのは」

 トーマスはタブレットを切って、机に置いた。

「ピートは見たのか?」

「少し」

 そう言いながら、ピートは自身の手を何度も頭にぶつける。

「死ぬところを?」

「ああ、そうだ。電車に飛び込んだ」

 トーマスとは目を合わせようとしない。

「何て言っていた?」

「何て言っていたかだって? こっちは怖くて逃げるのに必死だった。強烈な霊光で何も見えなくなってた」

 怒ったように激しい口調だった。

 トーマスは少し机の方に身を乗り出した。

「強烈な霊光?」

「ああ。霊光が消えた後、エリーが仕掛けた術が全部解けた。付いていた髪の毛が全部燃えたんだ」

「それだけか?」

「逃げださなきゃ、と思った。体から湧き上がってくるような感情だった。もう、理由は分からなかった」

「……エリーは?」

「わからない」

「何か言ってなかったか?」

 ピートは指を絡ませた手を、激しく頭にぶつけだした。

「こっちは逃げるのに必死だったって言ったろう。逃げないと死ぬと思ったんだ」

(らち)()かないな」

 トーマスは立ち上がった。スマフォを取り出して電話を掛けた。

 そして、しゃべりながらゆっくりとピートの背後に回った。

 トーマスに肩を叩かれ、ピートの体はビクッと反応した。

「お前をGPA(ゴースト・フェノミナ・アナライザー)にかける」

「なんだって?」

 ピートが立ち上がろうと手を机に突いたが、肩に乗せたトーマスの手で抑えられ、体はビクともしなかった。

「記憶をトレースさせてもらう」

「やめろ!」

「我々が生き残るためだ」

 トーマスの力で押さえつけられていて、ピートは身動きが出来ない。

 開いていた扉にエリックがやってきた。

「トーマス。例のを持ってきたぜ」

 電極のついたヘルメットのようなものを持っていた。

「ピート、少し眠ってもらおうか」

 トーマスが、手の平をピートの顔面に押し付けると、ピートは目を閉じ、手足の力が抜けたように椅子にだらっともたれかかった。

「何があった?」

 エリックは、ピートの頭にGPAをセットしていた。

「エリーが死んだ。ピートは見ているはずだが、覚えていない。だからGPAにかける」

「……ピートはGPAに耐えられるのか」

「これは簡易型のGPAだ。問題ない。耐えられるだろうさ」

「いや、逆だろ? 簡易型は出力調整が雑で危険だと……」

 トーマスがエリックの顔を『だまれ』と言わんばかりに指さした。

「ピートが耐えられなくて死んでも構わん」

「……」

 慎重なトーマスが、『死んでも構わん』という発言をしたことに、エリックは内心驚いていた。

 表情は落ち着いているが、トーマスはかなり焦っている。

「行くぞ」

 ノートパソコンに映像が映し出された。


 駅のホームだった。

 帰路を急ぐ会社員や、買いもの帰りの女性客、学校帰りの学生などがごった返している。遠くで、何かが光っていたか、と思うと消えた。そして、発火現象が起こった。

 ピートの小さい声が聞こえる。

「エリーのコントロールが解けた」

 映像の右隅には、エリーが見える。

「……」

 辺りにいた人々が突然一直線状に分かれて退き、エリーの正面にカゲヤマの姿が現れる。

 エリーは声が出ないのか、口を動かすだけだった。

 エリーはそのまま、目を見開くと、反対側に入ってきた電車へ飛び込んだ。

 ドン、と鈍い音がして、その列車も緊急ブレーキをかけた。

 線路の砂利がぶつかるような音がして、電車が止まった。


「何て言ったんだ?」

 GPAに接続したパソコンを操作しながら、トーマスがエリックに聞いた。

「聞こえなかった」

 トーマスは無言でパソコンを操作する。

 集団がごちゃごちゃとしている映像に戻り、また、一直線に割れるように人が退いた。

「ここだ」

 やはり音声は出てこない。

 トーマスはまた映像を戻す。

 そして、スローモーションにし、エリーの映像を拡大した。

「唇を読むしかないか」

 トーマスとエリックがエリーの映像の通りに口を作るが、何と言っているのかは判明出来なかった。

 トーマスが言う。

「スマフォのアプリでないか探してくれ」

「ふん……」

 エリックがスマフォの操作を始める。

 トーマスは何度もエリーの口マネをして、なんの音が出ているのかを推測していた。

「神…… 罪…… 自殺…… 耐えがたい?」

 エリックがアプリを見つけたらしくて動画を送れとゼスチャーする。

「送ったぞ」

「ちょっと待ってろ」

 トーマスは自らの頭でエリーの唇を読むのを諦めた。

「どうなってる?」

 そう言ってトーマスがのぞき込むと、スマフォは処理中のバー表示をしたまま、進行する様子が見えない。

「……」

「ピーシーのアプリで似たようなのがないか探す」

 トーマスはパソコン画面の前に戻り、検索を始める。

「簡易モード? こっちにしてみるか」

 エリックがスマフォを操作すると、読唇した結果が表示された。

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