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俺と除霊とブラックバイト2  作者: ゆずさくら


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(44)

「そこ感心するとこ?」

 やっぱり学生だ。

 何故、俺は被害者が学生じゃないか、と思ったのだろう。

 何か理由があったはずだ。

「……そうだ。下駄箱」

「何を言い出すの?」

「エリーが髪の毛を仕掛けた場所さ」

「なるほど…… って、靴箱に向かって髪の毛撒いてたら相当変だけど?」

 透きとおるような白い肌、真っ赤な口紅に、黒い髪。しかも相当美人ときている。

 そんな女性がザルに自分の髪の毛を切って粉上にしたものをいれ、掴んでは下駄箱に撒き、掴んでは撒いている。

 ……確かに異様だ。

 俺は首を振る。

「いやいや、そんなことしなくてもいいじゃない。履き替える時に靴下で足を置く場所、スノコ。あそこに適当に落として置けばばいいのさ」

「そうか」

 靴下に付いてしまえば、上履きでも外履きでも操り放題だ。

 服の上からついた髪の毛とは違って肌に近いから、コントロールの強さも強いし、風で飛ばされることもない。

「警察の人に言って、スノコを調べてもらおう」

「今から?」

「橋口さんにお願いしてよ」

「わかった」

 俺たちは近くの駅で降りて、再び逆方向の電車に乗り直し、学校へ向かった。




 すでに夕方近くになっていた。

 電車が会社帰りの人たちで混雑し始めていた。

 俺たちは車両の先頭の方に乗っていた。

 停車するため、電車が駅のホームに入るとき、ふとホームを見ると黒髪の外国人女性がこっちを見ていた。

「!」

 こっちを見て、ニヤリと笑った。

 何も出来ない俺たちを、嘲笑っているかのようだった。

 俺の雰囲気を感じ取ったのか、蘆屋さんが訊ねる。

「どうしたの?」

「蘆屋さん、今のエリーだ。四聖人のエリーだ」

「何を考えてるの? だめよ。何も証拠がないんだから、手出しできないわよ」

 拳を握り込んで、震えていた。

 こんなに強い感情が湧き上がってくるのは、人生の中で初めてだった。

「ぶん殴る。せめてそれくらいしても……」

「ねぇ、ダメだって」

 電車がゆっくりとホームに停止する。

 俺は戸口に立っていた。

「行ったらだめ。向こうの思うつぼよ」

「けどっ!」

 電車の扉が開く。

 俺は思わず降りてしまう。

 蘆屋さんは手を引っ張って、車内に連れ戻そうとする。

「本当にだめ。殴るのもだめ。犯罪になったら、除霊士なんてなれないよ」

「……」

 俺は腕を振って、蘆屋さんの手を振りほどいた。

「待って!」

 蘆屋さんがホームに出てこようとした瞬間、電車の扉が閉まる。

 俺は車両の後方側ホームにいるエリーを睨んだ。

 ホームには大勢の乗降客がいた為にエリーが真っすぐ見える状況ではない。

 だが、その先にいるであろう、エリーを睨みつけた。

 バンバン、と扉を叩く音がする。

 俺は蘆屋さんに言った。

「……ゴメン」

「何て言ったの?」

 蘆屋さんはそう言ってから、またバンバンと扉を叩く。

 電車はゆっくりと、そして次第にスピードを上げ、駅から離れていく。

 俺はホームの先に歩き出した。

「エリー…… お前は俺が許さない」

 反対側のホームに止まる電車から、再び大勢の人が降りてくる。

 階段から大勢の人が電車に乗ろうと上がってくる。

 ごった返したホームをゆっくりと進むと、ホームの端に付く前にエリーを見つけた。

「いたっ……」

 エリーは階段から何かを落としている。

 エリーの手にはハサミが握られていた。もしかして落としているのは……

「まさか、髪の毛?」

 その声でエリーが俺に気付いた。するとエリーは何か言葉を口にした。

 外国語で、意味は分からなかった。

 周りからエリーの言葉に、何人かの人間が俺の方を向いた。

「まずい」

 この人数の中で、エリーが人を操り始めたら……

 階段から上がってくる人間が、エリーに操られて河原まで追ってきた連中のように、ゆらゆらと揺れながら歩いている。かなりの数だ。

 電車から降りて、階段を降りようとする乗降客を押し返すようにして上がってくる。

 エリーは降りようとする連中の上から、新たに切った髪の毛を振りかけた。

「逃げないと……」

 もし一人一人が武器を持っていなかったとしても、一斉に首を絞めてきたら死んでしまう。

 殴ったりけったりされても同じだ。数の暴力だ。

 俺はエリーから離れるように、駅を移動し始めた。

『マチナサイ!』

 操られている人々が一斉にそう言ったのだ。

 俺は振り返った。

『逃げるなら、もうすぐ来る電車に飛び込ませるわよ』

 男の声、女の声、若い声、おじさんの声。様々な声が重なりあいながら、俺を脅した。

 エリーならやりかねない。

「……」

 しかし、ここで立ち止まっていたら殺されてしまう。操った人間を使って、電車に向けて俺を突き飛ばしてもいいわけだ。これだけの人数を使えば、俺を殺すことはそう難しいことではない。

「なら、こうするしかない」

 俺ははっきり操られている人に向かって、手を当てた。

 頭の先から、足先まで。

 手を当てて動かしていると、突然、その人の背中のあたりで髪の毛が燃えた。

 これで一人、正気に戻った。

「一人一人やっていくしかない」

 その階段付近は、エリーに操られた人が動かない為にどんどん人と人との隙間がなくなり、人がぎゅうぎゅう詰めになってきていた。

『うごくな』

「そう言われて止まる馬鹿はいない」

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