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俺と除霊とブラックバイト2  作者: ゆずさくら


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43/103

(43)

「何か見つかると良いんだケド」

 巡査は返す。

「そのエリーとかいう人物の証拠ですか」

「そう。上のレストランで取得したDNAと一致すれば、少なくとも被害者とエリーは接触していたという証拠にはなるわね」

「そこまで分かれば十分です」

 俺はそう言った後、エリーに対する怒りが込み上がってくるのを感じた。

 無関係の人間を三人も落としたのだ。まるで石を拾って投げるかのように、人を落としたのだ。

 鈴木巡査が急に俺の目の前に回って来て、言った。

「君、何があっても自分の判断で他者を罰してはいかんぞ」

 そう言いながら、俺の両肩に手を置いた。

「えっ?」

「何か思いがあるのは分かる。だが私刑(しけい)はダメだ。いいな。この件は警察に任せてくれ」

 俺は唇をかみしめた。

「鈴木巡査が言う通りよ」

 橋口さんがそう言った。

「除霊士になろうというなら、なおさら」

 俺は頭を下げた。

 そして両手の拳を握り込んだ。

 俺の中では明白な事だった。エリーが何らかの形で髪の毛を撒き、それを利用して人々を操った。操られた人は校舎から飛び降りたし、俺に向かって刃物をもって向かってきたし、ビルの上から飛び込んできた。世界を混乱に陥れる為なのか、自身の教団の繁栄の為なのか。なんにせよ、まったく無関係な人を巻き込み、殺した。

 一方的に殺された相手からすれば、犯人も同じ目にあってもらわねば割にあわないだろう。

 罪を暴いて、罰を与えるのはいいが、時間がかかりすぎる。下手をすれば罪を確定できないこともありうる。罰が罪に合わないものになることもあるだろう。

 その時、人を殺した犯人が、のうのうと生き延びているのを許せるだろうか。

「……」

「鈴木巡査。私が後で良く話しておきます」

 鈴木巡査は橋口さんの方を見てうなずいた。




「まずいな」

 ピート・ウイリアムズは足を組んで、机をトントントン、と苛立ちげに叩いた。

「ちょっと派手だったかな。この国の警察に目を付けられるのは間違いない」

 口調は落ち着いていたが、トーマス・ホーガンも怒りを隠せなかった。

「やっちまえばよかったんだ!」

 エリック・ジャクソンは、そう言って短い髪をかき上げるように何度も頭をなでつける。

「やっちまえば問題ないものを、半端にして逃げ帰ってくるから厄介なことになる」

「……」

 トーマスが無言で部屋を見渡す。

「張本人はどこにいる?」

 机をトントンと叩きながら、ピートが答える。

「シャワー浴びてる」

「……」

「トーマス。先に俺にやらせろ」

 エリックが立ち上がった。

「ダメだ。お前がやるとすれば、屋敷に入ってからだ。都心ではお前の技を使うのは無理だ」

「この前屋敷に入ったそうじゃないか。何故俺を呼ばない?」

「まさかあんな時間に外をうろつくとも思わなかったし、まして屋敷に入るとは思わなかったからな」

「ふん…… 一人で始末して手柄を独り占めとか思ってたんだろう?」

 トーマスはエリックの前で立ち上がった。

 二メートルの壁のような男に見下ろされ、エリックは少し後ずさりした。

「トーマス。だいたい、なんでお前が仕切ってんだよ。お前の仕切りが悪いから」

「そこは謝る」

 そこに黒髪をタオルで拭いながら、バスローブ姿のエリー・フォックスが戻ってきた。

「おい」

 エリックが勢いよく進み出るところを、トーマスが制した。

「シャワー浴びるまえに説明を済ますべきだったな」

 エリーは三人の顔を一人ずつ確かめるように見てから、ピートの反対側に座った。

「ピートに説明したけど」

 トーマスはエリックを抑えたまま言った。

「なんで人を落とした」

「殺せると思ったから」

「やれてないぞ」

「そこは謝るわ」

 エリーは誰もいない方を向いてそう言った。

「なぜパペッターの特性をいかして、もっと隠密にやれなかったんだ。この国の警察に目をつけられたのは間違いない」

「あれは自殺なんだから目をつけられたりしないわ」

 トン、と机をたたく音がする。

「あまいな……」

 ピートが言った。

「もうこの警察の手に君の髪の毛が渡っているぞ。今度DNAが分かるようなものを採取されたらDNA鑑定される」

「DNA鑑定での本人断定は法的に……」

「そういう話をしているんじゃない。エリーが捕まるかではなく、こっちに目が向けられている状況が問題なんだ」

 トーマスが椅子に座ると言った。

「ほとぼりが冷めまで、しばらく活動を止める」

「ふん。殺してくりゃ文句ないでしょ」

 エリーは立ち上がって、髪に巻いていたタオルを机に叩きつけると、部屋を出ていく。

「まて、エリー」

 ピートはひょい、と机を飛び越すと、エリーを追いかける。

 エリックがトーマスの肩をポン、と叩き、トーマスの前に回って、エリーがいたところに座る。

「活動停止。そこは俺も同意見だ」

 トーマスはエリックを見てから、扉の方を不安気に眺めた。




 俺と蘆屋さんとマリアは電車に乗って家に帰る途中だった。

 エリーがどこで髪の毛を撒くのかを考えた。

 普通にやったのでは飛んで行ってしまう。

 うまく密着するような場所に仕掛けなければ、風が吹いて飛んでしまうようなところでは意味がない。

 だから靴下、というのは、エリーからすれば非常にいい場所だった。

 しかし、靴下に仕掛けるのは難しい。

 どこでやったのか。

「被害者って、みんな大学生?」

「ビルから落ちてきた人も、大学生風ではあったけど…… あんた学校で見たことある?」

 俺は首を傾げた。

「けど、学校で落ちた二人、俺を追いかけてきた刃物をもった連中、は生徒だよ。ビルから飛び降りたのは……」

「師匠に連絡してみる」

 しばらくすると、蘆屋さんがスマフォをこっちに向けた。

「メッセージアプリ?」

「そうじゃなくて、師匠からの回答を見て」

「橋口さんの?」

 俺は差し出されるスマフォのメッセージを読んだ。

『落ちてきた三人ともおたくと同じ学校の生徒なんだケド』

「橋口さんて、メッセージアプリでも、『ケド』って言うんだ」

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