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俺と除霊とブラックバイト2  作者: ゆずさくら


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(41)

「なっ……」

 背後で声がした。俺は慌てて振り返る。

 蘆屋さんが軽蔑するような目で俺を見ている。

「何やってるの? 相手(それ)はアンドロイドよ?」

「誤解だ誤解」

 そう言って俺は手を振った。

「誤解なら手をどけなさいよ」

「緊急充電って、こうやるんだよ。蘆屋さん、代わりにやってくれる?」

 蘆屋さんは首を横に振る。

「いやよ。第一、なんで充電がなくなったのよ。こんなところでアンドロイドに変な事させたからじゃないの?」

「そんな訳ないだろ」

「……いいから手をどけなさいよ」

『キンキュウジュウデンカンリョウシマシタ』

 俺は慌てて手をどける。

 マリアが体を起こし、これまでの経緯を蘆屋さんに説明し始めた。




 マリアと蘆屋さんと俺は、大学から最寄り駅まで歩いていた。

「エリーはどこでその髪の毛を撒いたのかしら?」

 俺が答えようとするとマリアが遮る。

「オーナー」

「マリア、ちょっとまて。俺は今蘆屋さんと話してるから待って。後、オーナーって呼び方何とかならないのかな?」

「デハ、オーナーアラタメ、カゲヤマ、アソコヲミテクダサイ」

「だから今、蘆屋さんと話して」

 蘆屋さんも突然叫ぶ。

「あっ! あの女っ!」

「蘆屋さんまで、どうしたの?」

「いいからあそこを見なさい」

 俺は蘆屋さんの指差す方向を凝視した。

 そこにはパペッターのエリーが立っていた。

「エリー? だよな」

「間違いないわ」

 七、八階建てのビルの、最上階からこっちを見下ろしている。

「まさか、あそこから髪の毛を飛ばしたのか?」

「さすがに効率が悪すぎるわ」

「じゃあ、何であんなところに」

「知らないわよ」

「とにかく捕まえる」

 と、走り出そうとする俺を、蘆屋さんが引き留める。

「証拠はないわ」

「ぶん殴ってでも白状させる」

「自白は証拠にならないのよ」

「だって……」

「とにかくだめ。今関わったら……」

 俺はもういてもたってもいられなくなっていた。

 蘆屋さんの制止を振り切り、通りを走り出していた。

 俺が近づくと、ビルの最上階にいるエリーがニヤリと笑った気がした。

 少しして、ガチャ、と鍵の開く音がする。その近くの窓が開く。

 その開いた窓から人間が落ちてくる。

「えっ?」

 当たる、と判断した俺は足を踏ん張って止まった。

 ゴトッ、と鈍い音がした。

 落ちてきた人が…… 俺の目の前にで、ぐしゃりと割れていた。

 赤い体液が道に広がる。

 時間が止まったような気がした。

『カゲヤマ、キケン!』

 マリアがそう叫んだ。

 パリン、とガラスが割れる音がした。

 見上げると、ビルからガラスが降ってくる。

 その後を追うようにその窓から人が飛び降りてくる。

「まさか、これ、アイツがっ!」

 エリーが他人(ひと)を操って、まるで花瓶でも落とすかのように、人間を降らせているに違いない。

 俺が何かしても間に合わない。ただ叫んでいた。

「マリアっ!」 

『カゲヤマ、タスケル!』

 勢いよく走って、ジャンプする。

 マリアは俺の頭の上を滑空し、落ちてくる人を受け止め、着地する。

「ありがとう、マリア!」

 俺はビルの最上階を見上げる。

 見えてはいないが、そこにエリーがいる。

「許さない!」

 俺はビルの入り口から中に入る。

 再びガラスが割れる音がする。

 まさか、まだ人を落としてくるのか……

『コッチハナントカシマス」

 マリアの声を信じて、俺は階段を駆け上がる。

 最上階。

 息が切れていたが、頭に血が上っていて気にならなかった。

「どこだ、出てこい!」

 そのフロアはレストラン街になっていて、俺は店員に止められた。

「どけっ!」

 店員を押しのけて店内に入る。こっちを見下ろしている場所は……

「だめです、そこはお客様が……」

 俺は個室の扉を開けた。

「いない」

 俺は並びの個室の扉を次々開けていく。

 そこには誰もない。

 俺は最初の部屋にもう一度入る。窓を開けた形跡がある。

「くそっ……」

「えっ? そんなはずは」

 と言って店員が俺を追って入ってくる。

 俺は店員を振り返り言う。

「ここに居た客って、こんな感じか?」

 スマフォで四聖人の写真を見せる。

 店員は個人情報を言っていいのか悪いのかわからず、それとなくうなずいた。

「……」


 俺がビルを降りたころ、通りには警察車両と救急車が止まっていた。

 警察が現場検証を始めている。

 俺がビルの一階に降りた時には、警察車両と救急車がやってきていた。

 警察の現場検証も始まっていた。

「君、君が第一発見者だね」

 短髪、スーツのおじさんが、俺に向かって警察手帳を見せる。

「……」

 俺は通報した訳でも、誰かに助けを求めたわけでもない。何故俺が第一発見者ということになっている。不思議に思いながらも、ここに落下してきた人のことを言った。

「第一発見者かどうかはわかりませんが、人が落ちてくるのを見ました」

「何か変わった様子はなかった?」

 俺はビルの上階を見つめながら手を広げる。

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