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俺と除霊とブラックバイト2  作者: ゆずさくら


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(40)

 以前、街を徘徊させたことがある。これに掛かれば、うまくこの結界に誘い込める。

 後はどこまで結界を書き直せるか…… いや、どうやって結界を発動さえるか…… だった。

 野球場のネットを避けるために、連中が大回りしてくる間に俺はベンチに身を潜めた。

 マリアはマウンドからホームベース付近の結界方法を見下ろしている。

 俺の姿の式神(デコイ)が結界中央で霊弾を撃つような構えをして挑発する。

 連中は操られているせいか、足を引きずるように歩くから、侵入してきた方向は、確実に結界が消えてしまう。

 後は俺の姿をした式神(デコイ)の動き次第となるが……

 本当の俺の存在に気付かれない内に、結界を完成させられるかが勝負だ。

「かげやま……」

「かげやまをつかまえろ」

「そいつ、かげやま」

 操られている連中がボソボソと何か言っている。

 姿形は普通の学生なのに、動きかたはまるでゾンビのそれだ。

「つかまえろ」

 一人、二人、…… と次々に結界の中に入っていく。

 俺の姿をした式神(デコイ)が必死になって逃げ回る。

 俺は姿勢を低くして、ベンチを飛び出し、連中が引きずった足で消された図柄を整える。

「イテテテ……」

 傷がついた指先が痛む。

『オーナーケッカイヲハツドウ』

 俺はどうしていいか分からなかった。

『ハツドウ!』

「どうりゃいい?」

『イメージシタカベヲタタイテ!』

 俺に気付いた一人がこっちを睨みつける。

「ほんもの、かげやま」

「かげやま、こっち」

『タタイテ!』

 俺は良く分からないまま、半球をイメージしてその壁がありそうな部分に手を叩きつけた。

「えっ?」

 雷が落ちたような音がして、俺のイメージした半球状の部分に、光る壁が作られた。

 俺は『やった』と思って思わず手を引いた。

『オーナー、オサエテ、オサエツヅケテクダサイ!』

 そうか。俺が手を放すと消えてしまうのか。

 もう一度、壁をバン、と叩くように振り込むと結界の壁が作り上げられた。

 光が落ち着くと、シャボン玉のような薄い膜のように変わる。

『レイリョクチュウニュウシマス』

 マリアは結界の膜を手で小さく開けると、腕を突っ込んだ。

 そして目を閉じると、手のあたりから紫色の霧のようなものが出始める。

「電子レンジのイメージと違うな。毒ガス出しているみたいだ」

「かげやま、こわす」

 結界の中で、俺の式神(デコイ)の四肢が引き裂かれた。

「これ、かげやまじゃない」

 四肢がバラバラになった俺の式神(デコイ)は、元の紙きれに戻ってしまった。

 操られている連中は、結界を作っている俺の方へ向かってくる。

「マリア、早く! 連中がこっちに来た」

 紫色のガスは、まだ結界の中の数パーセントにしか広がっていない。

『モチコタエテクダサイ』

 連中の引きずる足で、中の模様が消されている。

「マリア、図が消される……」

『ダイジョウブデス。オーナーガテヲハナサナケレバ、ケッカイハコワレマセン』

 一度張った結界は、図としての『陣』が崩れても存在するということか。だが、一度結界を消してしまえば『陣』がないから次は張り直せない。

 結界に触れている手が熱くなっていることに気付く。

 結界を保つために、きっと俺の中の霊力を使っているのだ。

「かげやま」、「出せ、ここからだせ」

 そう言いながら操られた連中が、どんどん俺の方に近づいてきて、薄いこの結界を叩いたり蹴ったりし始める。

 割れるような感じはないが、叩かれるたびに手と体に衝撃が響いてくる。

「マリア、後どれくらいかかる」

『オーナー、アトモウスコシデス』

 確かに、結界内部、全体にうっすらと紫色の霧がかかっていた。

 中にいる操られた連中が、刃物を取り出して結界の壁をガリガリと削り始めた。

 一瞬、刃先が結界を抜けて外に出たように見える。

「マリア!」

『ジュンビカンリョウ。ハツドウシマス!』

 紫色の霧に雷のように細い光が走る。

 次から次に伝わり、反射し、拡散していく。

 細い光が隙間なく広がり始めて、あっという間に結界の中が溢れる光で見えなくなった。

「マリア!」

『……』

 反応がない。

「マリア?」

 結界の内側からくる衝撃に耐えられなくなって、俺は手を離してしまう。

「しまった!」

 結界がなくなり、中の光が失われていく。

 描いていた円の中に、十数人の学生が倒れていた。服や靴、帽子の一部に焦げ目がある。おそらく、マリアの霊波に反応して、消滅したエリーの髪の毛の跡、だろう。

 俺は倒れている連中に触れ、呼吸をしていること、意識があることを確かめた。

「マリア?」

 さっきからマリアはほとんど動かず、充電が切れた様子だった。

『オーナー、キンキュウジュウデンヲ……』

 音声はほとんどなく、意味だけが頭に伝わってくる。

 俺は思った。緊急充電ってあれだろ…… と、昨日の緊急充電のことを思い出した。あれは女性と行為に及んでいるようにしか見えない。したがって人目の多い場所では絶対に出来ない。

 だからといって、今は日中。黒王号を出してマリアを家に運ぶわけにもいかない。大学で充電するにも、正しい充電器も持ってきていない。

 緊急充電するほかなかった。

「ベンチまで行ける?」

 あそこなら、ある程度遮蔽されている。

 ここで寝転がっている連中が目を覚ましたら、見られてしまうが……

『イケマス』

 マリアはゆっくりと歩き出した。

 ベンチに入ると、奥の長いすにマリアを寝かせた。

 例によって、スカートの中に手を入れて充電を始める。

『OH……』

 どうして充電中に声を出すようにつくっているのか。俺は言った。

「マリア、声出さないで」

『リョウカイシマシタ』

 とりあえず、声は出さなくなった。

 ただ、AVのように腰を振っていて、俺自身は無駄に興奮していた。

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