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俺と除霊とブラックバイト2  作者: ゆずさくら


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(21)

「蘆屋さん、あの女どっちに逃げた?」

 居酒屋の扉が開くと同時に、橋口さんがそう言った。

 俺と蘆屋さんは顔を見合わせてから、橋口さんに向き直った。

「出てきてませんけど……」

「うそ!」

 橋口さんは顎に指をあてて考える。

 俺は言う。

「紫宮さんって運動神経いいんだなぁ……」

「あれは運動神経ってレベルじゃないでしょ」

「カゲヤマくん、頼みがあるんだケド」

「なんですか?」

 橋口さんがスマフォを見せる。そこにはスマフォに付ける機械が映っている。

「霊波を測る機械ね。今度、これを渡すから紫宮さんと一緒にいるとき、バレないように測ってみてくれない?」

「俺だって除霊士の勉強してるんですよ。個人の霊波パターンて、指紋なんかと一緒で個人ごとに違うんでしょ? それって勝手にとっちゃだめじゃないですか」

「さっきあたしがそう言ってダメだったのは分かるでしょ?」

「けど、俺を操っていたのはエリーでしょ? 紫宮さんとは関係ない」

 蘆屋さんが割り込んできた。

「果たしてそうかしら」

「?」

「エリーはいつでも操れたのに、それをしなかったのはなぜか。ってことよ。紫宮さんがピンチの時に発動するなんて偶然にもほどがあるんだケド」

 俺は蘆屋さんと橋口さんの顔を交互に確かめた。

「つまり、グルだってこと?」

「エリー達の目的が分からないからまだ何ともいえないけど、そういう可能性があるわね」

「あんたも除霊士の勉強しているなら知っているでしょ? 犯罪捜査としてなら、容疑者の霊波を計測しても構わないということ」

「それは法律上はグレーなところだって……」

 蘆屋さんがうつむいた。髪で顔が見えなくなり、両手で目をこすっている。しゃくりあげるような声がする。

「えっ、蘆屋さん、泣いてる?」

「あたしより、あの女の方が…… カゲヤマは抱けない女より、抱ける女の方がいいのね」

「何言ってるの?」

「あたしより、紫宮の方がいいんでしょ? だから霊波を測らないんだわ」

 俺は必死に手を振り、首を振って否定するが、泣いている蘆屋さんには見えていない。

「ちがうよ」

 蘆屋さんはさらに大きな声をだして泣く。周りの視線が俺に集まる。

「あたしからもお願いなんだケド」

「……わかりましたよ」

「じゃあ、通販で注文しとくから、明日には機械が届くと思う。よろしく」

 橋口さんはスマフォをスッとコートにしまうと店の中に戻っていった。

 俺は蘆屋さんの肩を抱きながら、警察官に礼をして、立ち入り禁止のテープの外に出た。

 そして駅に戻り、帰りの電車へ乗った。




 翌日、霊波測定装置を受け取ると、冴島さんの事務所に呼ばれた。

 授業の帰りに一人で冴島さんの除霊事務所に行くと、冴島さんと一緒に橋口さんがいた。

 俺を見ると、冴島さんが立ち上がって言った。

「じゃ、打ち合わせ室にいきましょうか」

 秘書の玲香さんが飲み物を持っていくか、と問うと、

「いえ、いいわ。玲香はここに居て」

 俺と橋口さんが入って、冴島さんが入ると、事務所側の扉を閉めた。

 打ち合わせ室には、冴島さんのお爺さんだという僧侶の像が置いてあった。

 以前、ここで打ち合わせをしていた時、動かないはずの像が持っている錫杖がなって、びっくりした記憶がある。

「わざわざここに移動する意味が聞きたいケド」

「……」

 冴島さんはムッとした表情で答えなかった。

 俺と橋口さんが、椅子に座ると、いきなり大声を出した。

「あんたねぇ!」

 冴島さんはテーブルに手を突いて俺に向かってきた。

「何回同じことを繰り返せばわかるの?」

 おそらく、この烈火のごとく怒っている様子を秘書の中島さんに見せたくないんだろう、と俺は思った。

「あんたに言ってるのよ?」

「……なんのことですか?」

「納戸繰り返せば理解できるのか、ってことよ。ほら、火狼(ほろう)には組んでる(パートナー)がいつもいたでしょ?」

「ああ」

 そう言って橋口さんは人差し指を立てた。

 橋口さんが何に気付いたのかわからなかった。

「もう、鈍いわね。黒い火狼(ほろう)の美紅、赤い火狼(ほろう)の井村杏奈って言えばわかる?」

「?」

「つまり、紫宮も火狼(ほろう)仲間(パートナー)よ。間違いない」

「そんな馬鹿な」

 冴島さんは額を指で支えるように抑えた。

「頭痛い」

 俺は冴島さんの肩に手をかける。

「だ、大丈夫ですか?」

「違う。『頭痛い』は、あなたがアホだ、ということの言い換えよ」

「?」

 冴島さんは椅子に座って机に伏した。

「もういいわ」

「端的に言えばヤキモチなんだケド」

 錫杖が、シャリン、と鳴った。

「誰が、誰にヤキモチをやくのよ」

「それを麗子本人が言うわけないでしょ」

「誰がヤキモチなんか」

「大丈夫ですよ。ほら、今までだって大丈夫だったじゃないですか」

 冴島さんは顔を上げずに指を一本立てて言った。

「何度もピンチになっているでしょ? 今回だってそう」

「こんかいのはエリーが俺に」

「じゃあ、居酒屋の店長は?」

「えっ?」

「そこは、あたしが説明するんだケド」

 そう言って橋口さんがタブレットを立てた。

「昨日の居酒屋の事件だけど、どうも計画的にカゲヤマをはめ込む為の事件だったようね」

「俺をはめ込む?」

 冴島さんがタブレットに指を這わせ、画像を拡大した。

「その証拠がここ。厨房に何箇所か仕掛けられていたわ」

 映像をみてもなんのことか分からなかった。

「今日、あんたのとこに到着したとおもうケド」

 あっ…… 確かにこの装置は……

「……霊波測定器?」

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