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俺と除霊とブラックバイト2  作者: ゆずさくら


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103/103

(103)

 俺は風よりも速く動ける能力を使って何度も何度も冴島さんの周りを回っていた。

『うぉぉぉおおお……』

 俺は叫ぶと、体が大きくなっていた。一瞬にして、プロレスラーかボディビルダーのような、ムキムキの筋肉に変わると同時に、大きくなる肉体で、衣服をすべて粉々にちぎってしまっていた。

 止まっている兵士の中を、俺は剣を振り回し、草木を刈るように首を切り落としていく。

 目を丸くする冴島さんの顔。

 血をすすりたくなる、強い欲求。

 天蓋のついたベッドに女王を押し倒す。

 冴島さんに何か言っている。初めてみる冴島さんの表情は、少し恥じらいながらうっとりと笑みを浮かべていた。まるで俺じゃない誰かを見ているようだ。

『駄目です…… 我慢できません』

 目の前で震える女王をに気付き、自らの頭を抱え、ベッドから転げ落ちる。

 冴島さんがブツブツなにかつぶやくと、俺に向かって手で横に払うように動かした。

 ベッドで恐怖の表情を浮かべる女王。俺は、耐えきれずに部屋を出ていく。

「今、聞いても無理みたいね」

 その言葉に、ハッと気が付く。

 橋口さんはコーヒーを飲み終えていた。

「影山くん、何やってんの。商品の陳列残ってるよ」

 店長が背後からそう言って声をかけると俺の腕を引っ張った。

 俺は店長に引かれて店の奥に引っ張り込まれる。

 同時に、橋口さんは小さく手を振りながら店を出て行ってしまった。




 陰鬱な雲が垂れ込める街の中心に広場があった。

 人通りの多い広場の正面には、尖った三角屋根の大きな教会があった。

 真っ黒なコートを着た人物が、広場の人込みを縫うように進み、教会に入っていく。

 教会に入るなり、地下墓地(カタコンベ)に入る扉を開け、階段を下りていく。

 下りた先には人骨が散乱して、奥から腐臭が漂ってきた。ここは観光用に整理された地下墓地(カタコンベ)ではなく、現役の墓地のようだった。

 黒いコートの中から鍵を取り出すと、足で床を何度か蹴った。

「ふぅー」

 蹴ったところに息を吹きかけると、床に穴が開いた。

 男はそこに鍵を差し込み、回した。

 ガラガラガラ…… と散乱していた人骨が床に開いた暗闇に、音を立てて流れ落ちていく。

 しばらくすると、その落ちた人骨の一部が上がってきた。

 四角く開いた穴の床の一方が床の高さまで上がってきていた。そのまま下へと降りるスロープが出来上がった。

 男は散乱する人骨を踏みつけながら、そのスロープを下りていく。

 暗闇の中、壁に手を付けながら、進み、ふと立ち止まると、後方のスロープが水平に戻り始めた。と同時に、床に開いた長方形の穴がふさがれていく。

 完全に閉まると、そこは真っ暗になった。男はスマフォを取り出し、ライトをつけた。

 正面の通路を進み、奥の扉を開けると、先には壁が煉瓦で作られている螺旋階段が、下へ下へと伸びていた。

 扉を抜けると、男は扉を閉めて螺旋階段を降り始める。

 下から湿った、カビの匂いのする空気が吹きあがってくるせいで、男は時折、鼻と口をコートの袖で覆いながら、螺旋階段を降り続けた。

 階段を下り切ると、さら奥の一部に長方形の鉄板へ向かう。

 男は口に指をあて、小さく声を上げた。

 すると、長方形の鉄板の一辺から光が入ってきた。

 スマフォの明かりなどとは比べ物にならない、明るい光。

 男は目を閉じてその鉄板が開いた先に進んだ。

 広いのか、狭いのか、何か物があるのかないのか。

 すべてが真白く、光り輝いていた。明るすぎてすべてのものの境界が見えない。男は薄く目を開けるが、すぐ閉じてしまう。

「マスター」

 目を閉じたままそう言った。何かの気配を感じたようだった。

「来たか」

 男は礼をするように膝をつき、胸に手を当て、頭を下げた。

「東方へ四名を派遣した作戦ですが、失敗しました」

「どういうことだ。四人も送れば攻略はたやすいはずではなかったのか」

 男は薄目を開けると、一瞬、真白い世界のなかに、マスターの赤い、口の中だけが見えた。

「すみません」

「我々の存在を知られていまいな」

「その点は抜かりなく。四名とも自供する前に処分しました」

「処分?」

「……自殺処分しました」

「本当に処分によっての『自殺』か」

「その通りです」

「……まあいい。もうあとが無いぞ。次は必ず『屋敷の力』を手に入れろ。さもなくば『屋敷』ごと破壊するのだ」

「はい」

 辺りが一瞬にして暗くなった。男はゆっくりを目を開ける。

 そこは長方形の鉄板の外だった。

 いつの間にか、男は元いた螺旋階段の真下に戻されていたのだ。

「……」

 スマフォを取り出し、明かりをつけると、螺旋階段を上り始めた。

 男が地下墓地(カタコンベ)に戻るスロープを上りかけると、右目に眼帯をした男が立っていた。

「どうだった」

「……」

「ほらっ」

 眼帯の男の横にいた男が、スロープの方へ手を出した。

 その手は、肌の色が鋼の色をしていた。義手だった。義手の指先が数字を数えるようにち密(・・・)に動いた。

「……」

 スロープを上りかけている男が、差し出されたその義手につかまると、一気に床上に引き上げられた。重量を検知したのか、スロープは元に戻り、床の穴が閉じていく。

 引き上げられた男は、眼帯の男の手を取り、義手に重ねた。

「次はお前たち二人でやってもらう」

 眼帯の男が、ニヤリと笑った。






 第二部 終わり




 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました


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