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俺と除霊とブラックバイト2  作者: ゆずさくら


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102/103

(102)

 最後の文字を書き終えると、ペイントからかすかに霊光が光った。

 しばらく日向はそこの様子を見る。

「無いよりはましか」

 霊の入り込みが減ったところで、日向は周囲に殺気(さっき)を感じた。

「低級…… じゃないな。かなり力が……」

 屋敷に通じる道…… には何もない。左右の林…… 何かいるような気配はない。

「ん?」

 日向が、ふと空を見た時、かすかな違和感があった。

 枝が不自然に揺れた。

 その木の上の方を凝視する。

「……」




「影山くん」

 冴島麗子は、銃声を聞いて屋敷を飛び出していた。

「麗子、ちょっと、話がまとまって無いのに単独行動しないで欲しいんだケド」

 橋口かんなも追うように屋敷を出てくる。

「何、今の銃声」

 蘆屋初音が、おそるおそるそう言って、橋口の後を追ってくる。

 ドン、と橋口が冴島の背中にぶつかる。

「ちょっと、急に止まらないで欲しいんだケド」

「……」

「どうしたんですか?」

 蘆屋が、二人の背中を避けてその先の様子を確認する。

「えっ…… まさか…… 影山…… 撃たれたんじゃ……」

 三人の視線の先には、銃口を上に向け、仰向けに寝ているトーマスと、それに跨って、後ろに反り返った影山が重なっていた。

 銃口から出ている煙と、ピクリとも動かない影山。

 パン、とまた銃声がした。

 トーマスの手からは銃が消え去っている。

「何?」

 冴島が言うと、橋口が指さす。

「あっ、あそこに日向がいるんだケド」

「影山くん!」

 冴島はそう叫ぶと、走り出していた。

「えっ?」

 冴島は、影山の様子をみて、走るのをやめた。

 反り返った影山が、頭をもたげたのだ。

『あれを避けた…… のか』

 トーマスの母国語でそう言った。

「至近距離の銃弾を避けられ、その銃も失った今、お前に勝ち目はない」

 トーマスは、なぜかニヤリと笑った。

「どうした? 気でも狂ったか」

 影山が言うと、トーマスは何かボソボソとつぶやいた。

『もらった』誰かがそう言ったようだった。冴島と橋口は、川原のグランドで影山が撃たれたことを思い出した。

 しかし…… 何も起こらない。

 影山とトーマスに日向が近づいていく。

「もしエリックという男に期待しているなら無駄だぞ」

 トーマスがピクリと反応した。

『バカな……』

 日向が見せるスマフォの映像に、トーマスは目を丸くした。

「つまり、これでおしまい、ってことだ」

 日向がすべてに細かい文字が掘り込まれた手錠を取り出すと、トーマスの腕にかけた。




 その夜、俺は店長に呼び出されてコンビニで入荷した商品の陳列を行っていた。

「それはこっちに置くんだ。何回言ったら覚えるんだ」

「すみません」

 ついさっきまでトーマスと死闘をしていたのがウソのように平和だった。

 屋敷で日向に逮捕されたトーマスは、手錠をかけられた直後、服毒死した。日向も懸命に吐かせて、救急車を呼んでいたが間に合わなかった。

『教団との関係がバレるのを恐れたんだろう』

 日向はそう言っていた。

『エリックも輸送中に同じように服毒死したそうだ。連中が死んでしまえば教団との関係は追及できないからな』

 結局、屋敷の力を狙って来た四人組は全員自殺をしたことになる。

 自殺を最も罪深いとしている宗派のはずが、その教団を守るために自殺させられるとは皮肉なものだ。

「お客さまきたから、レジ入って」

 店長に言われるまま、俺は手を洗ってレジに入った。

「橋口さん!?」

 小さなミント・タブレットを置いて、橋口さんが言った。

「これと、コーヒー一つ」

「248円になります」

「で、さっき部屋で裸だった件なんだケド」

「えっ?」

「(しっ、声が大きい)」

 橋口さんがイートインスペースを指さす。

 俺はレジを出て、店長に『イートインスペースが汚い』と言うお客様のクレームで掃除しに行くと説明した。

 橋口さんがコーヒーを飲んでいる脇で、俺はテーブルや椅子を布巾で掃除している。

「あの、どういうことですか?」

「あの部屋、麗子がいたわね。ほら、正直に言いなさい。私に隠し事をしても無駄なんだケド」

 俺はどう反応していいか悩んだ。

「霊圧計って嘘発見機の代わりになるって知ってる? 体から出る微妙な霊圧の違いで、嘘を見抜けるのよ」

 テーブル上で布巾を動かしながら、俺は観念して正直に話した。

「いました」

「もっと状況を詳しく教えて欲しいんだケド」

 俺は橋口さんと目を合わせないように、残りのテーブルや椅子を拭きながら考えた。

 話してしまって、俺のドラキュラ・ヴァンパイア病が良くなっていないということが分かったらどうなってしまうのだろう。そういう結果を含めて、冴島さんは二人の状況で確かめてみよう、と思ったのではないか。

「……正直、俺にも状況はよくわかってないんです」

「裸になったいきさつも?」

「はい。記憶が混乱していて」

 橋口さんには言わなかったが、頭の中で断片的な映像がよみがえった。

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