コレクター
別の作者が書いています。
町の細い裏路地を進んでいった奇妙な黒い扉の向こう。
そこには普通日本では手に入らない品物が置いてあるといいます。
「わぁ、本当にあった。」
10代そこそこの少女が薄暗い不気味な店内でガラスケースに張り付いてそこに入っているものをまじまじと見ていました。
それを見て輝かせている目はまるで欲しいおもちゃを見つめている子供のようです。
そんな少女の目の先には一丁の銃が飾ってあります。
名前は『H&K MP5』ドイツのヘッケラー&コッホ社が作った短機関銃。
経口は9mm弾の分速に800発撃てるという近距離戦闘にはもってこいのサブマシンガンです。
「あのーよろしいでしょうか」
「あ、はい」
すると困ったように白いヒゲを長く生やした老人が話しかけてきました。
少女はとっさにガラスケースから身を離すとすぐに老人に体を向け話をします。
「そちらのMP5はあまり人気がなく発注もしていない為その一丁が最後になりますが」
「買います」
少女はそう即答しました。
理由はともかく残り一丁しかない銃となればもう買わざるを得ないと思ったからでした。
老人は少し驚く表情を見せたあと少女に訪ねます。
「分かりました、でも君はまだ若いのによくこんな場所を知っていますね」
「いやまぁ実は私には親はいなくて孤児院から逃げ出したんです、昨日」
「昨日…」
少女は少し悲しげに…
そう老人が呟くと少女は話を続けます。
「父親が軍人、母親が軍関係者である日戦場に行ったきりで帰ってこなくて…」
「それで…」
老人は察しましたが口には出さず、
「それでも銃が好きなんです、唯一両親と関わりがあるものからかもしれませんが」
「うん。いいですよ、ではそんな君にはこの銃を半額にしてあげましょう」
少女の話が終わり、老人は数秒考えて提案しました。
すると少女は驚いたように、
「え、いいんですか」
そう聞くと、老人は「ええ」とだけ言って少女に優しく微笑んであげます。
それを見た少女は嬉しそうにその半額にしてもらった『H&K MP5』を買って店を出ていきました。
その横で不気味な表情を浮かべた老人に気付かず…
薄暗い霧の中少女は、右手に体に似合わない銃を抱えたまま隠れるように細い路地を糸を縫うように曲がりながら走っていました。
迷わないように小さな声で「右、左」と曲がるたんびにそう言っています。
そして長い迷路の末、少し広くなった道に出ると周りを見渡し誰もいないのを確認すると奥の茶色い扉を開け中に消えていきました。
「おじさん、買ってきたよ。本当にあの話をしたら半額で売ってくれたよ」
中にいた肌の露出が一切ない服を着て顔までも髭で分からないほどの男にそういい、男が座っていたバーカウンター席の隣に着きます。
すると…
「ふふ、良かったじゃないか」
「うん」
低いガラガラな声で男は答えると右手に持っていたカクテルを回し口に運び、
「じゃあバイバイ、おじさん」
それを見てすぐにまた扉の方に歩きだしました。
おじさんと呼ばれた髭面の男は不気味な声で低く笑って…
それを少女は知りませんでしたが、髭面の男もまた少女が不気味な顔で笑っていたのを知りませんでした。
店をでて銃を背負っていたリュックに隠し霧の中を走って行きました。
その頃店では…
少女が出ていきすぐのタイミングで店の扉が開きました。
中に入ってきたのは一人の老人。
バーカウンターに座っていた男はそれを見もせずに言います。
「良くやった」
すると老人は席まで歩いてきてさっきまで少女の座っていた席に座り、
「さてこれからどうなるか…………ふふっ」
不気味に笑うのでした。
しかし老人は何か違和感にきずきます。
座っている席の下に何か落ちている事に、何かの小さな袋……、中はもうなく透明です。
老人が袋に気を取られていると、
「ううっ」
隣でガタンとなり、ふと見ると男が喉を抑え倒れています。
焦った老人はやっときずきました。
酒に毒がもられていたことに、そうしている間に男は全く動かなくなり、それを見た後に老人もその酒を口に含みます。
数時間後、バーの店主により二人の死体が発見されました。
山の中に一つの小屋がありました。
普段は誰も使っていないはずの小屋の中にあの少女がいました。
少女は新しく買った銃を丁寧に壁に飾り、持っていた銃と一緒に眺めます。
『FN-SCAR、HK416、M16A2、Kar98k、UZI、P90、レミントンM870、モシンナガン、SIG P320、、そしてH&K MP5』
それ以外にも小屋のそこらじゅうに色々な銃が散らばっています。
と言ってもこの銃たちはMP5みたいに買った訳ではなく先程のように殺して手に入れたものばかり。
これは、あのバーでたまたま銃店への道を訪ねた時にあの髭面の男に言ってしまったからお金を払っただけです。
仕方なくなんです。
でもこうして持っている銃を眺めていると誰かに打ってみたくなります。
しかし街中で発砲でもすると捕まるのでやっていないだけで、
だからこそ少女はいつも思います。
『人を殺し合う世界に行けたなら、どれだけ楽しいかな』
と……。
そう思った突如、眺めていた銃の中の一丁。
MP5がひとりでに光だしそのまま巨大な轟音とともに小屋や銃、少女を連れて大爆発し、少女はそれに飲み込まれ跡形もなく消えてしまいましました。
そう、少女は男達を毒で殺した様に、人殺しと知っていた男達もまた、少女を殺そうと企んでいたのです。
そしてどちらもまんまとこの世界から姿を消しました。
なんか銃の名前って難しいですね。