第1話『そうじゃなーーーい!』
初投稿です。お楽しみください。
「よし、準備OK!」
〝ドキン〟
可愛く笑った笑顔におれの心臓は高鳴る。
「それじゃ、行ってくるね!」
あの子が微笑んでこちらに手を振る。
「ええ、それじゃあ行ってらしゃい」
おれは少し照れながらも見送る。
「うん、行ってきます!お母さん!」
それを聞き、おれはため息をついた──────
────それは遡ること1日前の話である。
おれ、御厨和樹─みくりやかずき─は普通の高校に通う普通の高校2年生だ。部活は入ってなければ、成績も顔も普通。友達もいないわけでもなければ多いわけでもない。そんな普通に足が生えて歩いているような普通人間だ。
そんなおれにも実は好きな子がいる。それは、
「おっはよー!!かずきくん!早くしないと遅れるよ!」
そう、好きな子というのはこの朝からテンションMAXな金子未来─かねこみらい─という女の子である。
「お、おはよ!金子さん、えっと、」
「私、無遅刻無欠席狙ってるから先に行くね!じゃっ!」
そういうと金子さんは嵐のように走り去ってしまった。
金子さんはいつもこんな感じである。お胸は小さいけど、可愛くて、優しくて、元気で、にぎやかで、そして太陽のように明るいそんな女の子だ。そして、おれはある事件がおきてから金子さんのことが頭から離れなくなっていた。その時間についてはまた別の話──だとしてもだ、思い出してしまった。今ここで事件が起きかけていることを。そう、遅刻ギリギリだ。
「やっべ!!おれも歩いてる場合じゃないじゃん!」
おれは急いで学校へ向かった。
学校なんとか間に合ってからは特に何事もなく休み時間を迎えた。
「おっす!なにぼーっとしてんだ、、ってお前また未来のこと見てんのか!?」
「っつ!み、見てねーし!!ただ外を眺めただけだから!」
おれを冗談交じりに冷やかしてきたこの男は渋谷冬馬
─しぶやとうま─である。こいつはおれが高校に入ってから初めてできた友達である。まあ一応親友ってやつなんだろうとおれは勝手に思っている。そしてこいつは羨ましいことに金子さんの幼馴染なのである。
「お前、いっつも思うけど未来のどこがいいんだか。たしかに顔は可愛いけど貧乳だしきゃーきゃーうるせーじゃねーか。」
冬馬はいつもこうやって金子さんをバカにする。おれはこう言われるといつも
「お前に金子さんの良さが分かるなんて10年早いんだよ!この、お子様!」と答える。これがいつもの日課である。
「あーはいはい。あ、そういえばこれ知ってか?」
冬馬は唐突に話を切り替えスマホの画面を見せてくる。
「なんだこれ?きつねか?」
「そうそう!きつねなんだよ!なんでもこいつはよ、この街に伝わる都市伝説でよ、会うとなんでも願いを叶えてくれるらしいぜ!」
冬馬は鼻息を荒くし、嬉しそうに語る。
「あー、そうだなーあえるといいなー」
おれは気のない返事をする。
「お前、信じてないだろ!!こうやってちゃんと写真も撮られてるのに!!」
「どうせこれ、普通のきつねなんだろ」
「ふっふっふっ、君の目は節穴かね」
冬馬がドヤ顔を決めながら俺の方を見てくる。
「なんか変なとこでもあるのか?」
おれは聞き返す。
「よくぞ聞いてくれました!!こいつはなんと鼻の先が青いんだよ!」
言われてみれば確かに少し青いかも知れない。しかし、こんなの誤差の範囲だ。
「こんなの誤差の範囲だろ」
おれは思ったことを口にする。
「そうだけどさーー、でも願いを叶えてくれることになったら鼻が光るらしいぜ!!」
「んな、バカな。そんな子供じみたことよりも昨日のペケコの話しようぜ」
ペケコとはいま絶賛流行っているアニメのことである。
「ペケコも十分子供じみてるだろ」
冬馬は文句ありげな顔をした。
その後は特にこれといったこともなく、休み時間が終わり、いつも通り金子さんを眺めていたら午後の授業も終わり放課後になった。
「冬馬ー、今日は部活か?なかったら帰ろうぜ」
おれは冬馬に話しかける。
「わりーな!今日は部活だ!」
冬馬は申し訳なさそうな答える。
「そっか、んじゃ部活、がんばれよ!」
「おう!サンキュー!また明日な!きつねに会えるといいな!」
まだ言ってるのか。そんな冬馬を尻目におれは帰路に着いた。
「きつね、ねえ。まさかいるわけないよな」
そんなことを言いながら帰っているとあるに人物に出会った。
「あら、久しぶりね〜元気だった〜?」
そう、この人は金子さんのお母さん、金子真理子─かねこまりこ─さんである。
「はい!お母さんも相変わらずお元気そうで!」
「そうね〜じゃあ、和樹くんもお勉強頑張ってね〜」
そういうと真理子さんはゆっくり歩いていった。
「相変わらず綺麗だったなぁ〜」
真理子さんは美人だ。そしてナイスバディである。おれはいつも2つの大きな房をみてついつい鼻の下を伸ばしそうになる。
再び歩き出して、しばらくすると変なものを見つけた。
「なんだ、これ?きつねの石像?こんなものここにあったか?しかもきつねって」
おれが不思議がっていると
「こん!」
すごく典型的なきつねっぽい鳴き声が聞こえる。
いやいや、そんなまさか。こんなベタなことがあっていいのかよ。そう思いながら後ろを振り返ると、そのには鼻が少し青いきつねが座っていた。
「ほんとに会うとはな‥‥願いを叶えくれるんだっけか」
おれはまさかと思いながらも
「金子さんと一緒にいられるようになりますように。なんちゃって」と願いを口ずさんでみた。
すると、なんときつねの鼻が青く光り出したではないか!!!そしてその光の強さに視界が遮られて、一面青の世界になる。
「お、おい!まじかよ!これってつまり願いを叶えてもらえるってことか!?」
そして光は止んだ。きつねもいなくなっていた。
というか、それ以外にもいろいろと違和感がある。まず、周りに見える家の形が光に包まれる前と違っているのだ。まるで場所を移動してしまったかのように。
そして、何よりもすごい違和感があった。おれはその違和感の場所に手を伸ばした。もみもみ。柔らかい感触が手に伝わる。そう。おれの胸にはおっぱいがついていた。
「なんじゃ、こりゃー!!!」
おれはたまらず叫んだ。そうするとそれを聞きつけたのか男が走ってくる。そしてよく見るとその男はおれだ。あの普通な感じ、間違いなくおれだ。
「あー!!やっぱ私だー!私がいる!!」そんなことを叫びながらこちらに走ってくる。
ん、この反応はつまりあれですよね。体が入れ替わったとかってことですかね。つまりその、おれはもしかして、そんな期待をしながらおれに聞いてみる。
「もしかして、あなたは金子さんですか!?」
おれはの体のやつは答える。
「そうよ!私は金子よ!金子真理子よ!」
そうだよな、金子さんだよな‥‥ってうん??いま、なんて?真理子さん?
いやいや、まさかと思いながらおれは手に持っていたカバンに入っていた携帯を取り出し、カメラ機能で顔を確認した。
「ってうわーーー!?真理子さん!?」
そうおれは真理子さんになっていた────────
────そして、冒頭は戻る。
どうだろうか。これが導入でおれがため息をついた。理由である。きつねはたしかに願いを叶えてくれた。しかし、おれが思っていた方法とは全く違う方法だった。たしかに一緒にいられる。しかし、違うそうじゃない。母親として一緒にいたいわけじゃない。そしてさらにおれはきつねに一言言いたい。
「入れ替えるならそっちじゃねーーーーよーーーーーーーーー!」
おれたちはこれからどつなってしまうのか。
続きます。