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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

とあるVRMMOに生息する、ガチャ自慢を絶対に許さないプレイヤーのお話

作者: (#^ω^)

某ソシャゲで爆死した怒りで書いた(´・ω・`)


 レア度五の召喚獣〈天駆ケル無双ノ戦乙女〉が新しく実装されたので深夜に鉱山に忍び込んで魔導石を採掘しようとしたら、同じことを考えていたらしい召喚士数十人とかち合って血で血を洗う闘争となった。そして俺たちは横合いから殴り込んできた寝起きで機嫌が悪いレアエンカウントエネミーのドラゴンに全員召喚獣をロストさせられた。


 俺がロストさせられたのはレア度四の召喚獣。上から二つ目の、微課金ユーザーの俺にとっては虎の子の一体だった。


 怒髪天をついた俺はまず運営に口汚い抗議メールを送った。

 モンスターが騒音で起きるリアル仕様なんていらねえんだよそれに召喚獣が死んだらロストする仕様いい加減なくせあと魔導石の値段もっと安くしろと。すると一秒で返事が返ってきた。


『月間課金額三万円以下のポテッチンさん、メールありがとうございます。大変申し訳ありませんが全て仕様となっております。召喚獣をロストされたとのことですが、只今全世界五千万ユーザー突破記念で魔導石のお値段が五%安くなっております。是非この機会にお買い求めください。【世界初のVRMMO】Legend of Summoners ユーザーサポート係』


 どう考えても自動返信メッセージだった。死ねと思った。俺は一万課金した。グロ画像だった。死ねと思った。


 憤怒の化身となった俺は、次に他のプレイヤーどもに仕返しをすることにした。


 結局レアエネミーに全員やられたとはいえ、与し易しと見られたからか真っ先に狩られそうになった屈辱を俺は全く忘れていなかった。

 かといって今の俺の手持ちじゃ一人ずつ闇討ちするにしても勝ち目がない。連中の中にはレア度五の召喚獣を連れ、いかにも高レアなプレイヤー用装備で着飾ったやつもいたのだ。

 そこで俺は匿名掲示板の過疎スレでデマを流した。とある川の下流で新たな鉱脈が見つかったらしいと。魔導石に飢えた奴らなら間違いなく掲示板を血走った目でチェックして旨い採掘場の情報収集をしている。俺は確信していた。何故なら俺もそうだからだ。


 そして次の日の深夜、俺はその川の上流にあるダム壁の近くにいた。双眼鏡を覗く。いるわいるわ、欲にまみれたプレイヤーたちがゴミのように蠢いていた。


 「ふははははははははっ、我が怒りに呑まれるが良いッ!!! そう、塵芥(ちりあくた)のようになッ!!!」


 俺は哄笑しながら、各所に緻密な計算の上で配置した、前の一万でやたらと出てきたレア度ニのボム型召喚獣たちに指令を下した。爆発が重奏する。轟音とともにダムが決壊し哀れなプレイヤー達は激流に呑まれた。ふはははははは、低レアでもこれくらいできんだよ。俺ほどボムとかいうゴミをうまく使えるやつはいないだろう。

 そして、大自然の脅威には例え高レア持ちといえど耐えられない。プレイヤー自体の耐久度は召喚獣とは比較するのもおこがましいミジンコレベルしかなく、故に効率的にキルするならプレイヤーを直接狙うべきなのだ。


 こうして無事、復讐を遂げた俺はしかし、達成感のあまりぽろぽろと落涙すると同時に、ひどい虚しさを感じてしまう。これがいわゆる復讐は虚しいというやつか……。

 同志達よ、済まぬ。俺はお前たちを殺したかっただけで死んでほしくはなかった。


 大量に溜まったカルマポイントで黒く禍々しい魔導石を購入しながら、とぼとぼと山間にあるタウンに帰ると、俺はあっという間に駆けつけてきたNPC警備兵達に捕まった。

 公共物破壊のテロリスト容疑だった。違う、俺はプレイヤー達に死んでほしかっただけで公共物を壊したいなんて思っていなかった。だが何故バレた。

 そう思って振り返るとレア度一の〈湿気たボム〉が俺の後ろを付いてきていた。

 俺は泣いた。


 冷たい手錠を嵌められた俺は全てを告白した。無駄に高性能のAIを積んだNPC警備兵たちは気違いでも見るかのような目をしながら俺の話を聞いていた。

 そして俺の自供に同席してくれていた、うちのギルマスのミルミル(キャラ名はミルミルモ)は慈愛の篭った声音でこう言った。


 「うん、ポッチン……。罪は償わないとね?」


 俺は泣いて謝った。

 俺の公開処刑は、慄いた顔をした大勢のプレイヤー達に囲まれながら翌日のゴールデンタイムに行われた。デスペナでしばらく指揮コスト減少と召喚獣の能力減退がついてしまった。それにやりすぎたからか咎人ペナルティで更についた減退幅が大きい。これは当分まともなプレイは出来ないだろう。


 処刑後、女神の碑石から復活した俺は、ミルミルに優しく手を引かれながらギルドハウスへの帰途についた。ミルミルの変わらぬ優しさが痛かった。それはともかくとして俺は道中黒い魔導石で五十連ガチャをした。レア度三の〈呪われしボム〉が沢山出てきた。レア度四以上はゼロ。確率偏ってるだろ絶対……。



§



 うちのギルドの名前は【ふんわりマリモ】という。ミルミルがギルドマスターで、メンバーは俺とミルミル含め五人。だが今日はまだ俺たちしかログインしていないようだった。

 まったく薄情な奴らだぜ。人が公開処刑されてるっていうのによ。慰めに来てくれてもいいじゃねえか。つうかあいつら俺が臭い飯を食っている間、一度も面会に来なかったな。それでも同じギルドの仲間かよ。はあ。

 深い悲しみに包まれた俺はため息をついた。


 そんな傷心の俺を癒やしてくれるのはやはりミルミルだった。

 彼女はレア度五、現状の仕様ではほぼマックス育成の〈深淵ヨリ覗キシ虚ロナルモノ〉を巧みに操りながら、手の凝った晩飯を用意してくれる。その豪勢な食事を食べながら俺はジロジロとミルミルを見た。

 着たままの、内部の質量で押し上げられたピンクのエプロンがエロ可愛い。それに加え、幼い顔、低めの身長、ハニーブロンドの髪色。俺はロリコンじゃないが性癖にクリティカルな容姿である。


 このゲームは一昔前の完全没入型MMO系の創作物と違ってキャラの性別と中の人の性別が一致しているとは限らない。だがそれでも俺はこのおっぱいさえあれば例えミルミルの中の人が脂ぎったおっちゃんであろうと気にしない所存だ。

 ロリ巨乳サイコー。


 そんなことを考えながらおっぱいを凝視していると、ミルミルは恥ずかしげに顔を赤らめて胸を押さえた。


 「もう、ポッチン! 今は食事中ですよっ。いっぱい食べて、デスペナを早く直さなきゃっ!」

 「俺はミルミルのおっぱいも食べたいなあ」

 「っっ!? もうっ、ポッチン!」


 彼女の感情の高ぶりに応じてか、厨房から溢れる肉色の触手の群れが不気味に蠢いた……。俺は慄いた。くそっ、忌々しいナイト気取りの触手野郎め。セクハラくらい別に良いじゃねえかッ。これでもくらえッ。

 俺はゆっくりと迫る一本の触手に黒い魔導石を一個献上して恭順の意を示した。全てミルミルからは見えないテーブルの下で行われた取引であった。


 一方のミルミルはぷくーとしばらく頬を膨らませていたが、やがてコホンとひとつ咳払いをすると真面目な顔になった。


 「ところでポッチン。【ふんわりマリモ】のギルドマスターとして、私はポッチンに大切なお話をしなければいけません。いいですか?」

 「なんでしょう」


 まったく心当たりが無かった俺は、子供のような純真な目をしながら首を傾げた。


 「ポッチンが犯した大罪についてですよっ。ダムの破壊にプレイヤーの大量虐殺……。ほんっとーに稀に見る迷惑行為です……。ポッチン、同じギルドの仲間として私は悲しいです。迷惑行為はいけないことなんですよっ」


 悲しい目をするミルミルに俺はきょとんとした。

 ミルミル、俺は自分の死で罪を償ってその件はもう全て終わったはずだ! システム的には完全に無罪だろう!

 そう思うも、再び目の端で触手がこんにちはしたのを見て俺は即座に謝罪に移行した。日本人の国技、土下座である。これ以上、魔導石を取られてはかなわない。見た目以外は最強と評判の触手なのだ。AIもやたら高性能ときた。


 「ごめんなさい」


 すると廊下の方から腹の立つ高い声が聞こえてきた。


 「おいすー、コスモさんがログインしたよー。ってわーお。ポテチが土下座してる。あ、そういえばポテチ、ダム爆破したんだって? いやーいつか何かビッグなことしでかすとは思ってたけどとうとうやっちゃったかー。晒しスレがすごい盛り上がってたよ―。仕方ないから擁護レスしたんだけど、そしたら本人認定されちゃったぜ。いやーごめんぷー」


 こいつ殺す。絶対わざとだろ。それにごめんぷーってなんだよ。反省出来ない人種か。全く嘆かわしい。お前がミルミルに内緒で裏で転売しまくってるのを、俺は知ってるんだぞ。

 そう素早く秘密チャットで脅すと、いつぞやの不自然な崖崩れで狩場への道が封鎖された事件やら謎の地雷で時折プレイヤーが吹き飛んだり生き埋めになる怪事件について追求された。今回の爆破と関連付けたらしい。こいつは時折妙に勘がいい。

 もちろん実際は俺とは全く無関係だけど、仕方ないから俺はコスモとお互いに平和条約を結ぶことにした。


 しかしそんな俺達を深淵さまは密かにタゲってくる。

 深淵さまのパッシブスキルによる確率スタンのデバフが一瞬点灯した。このゲームは召喚獣じゃないプレイヤーにもHPがある。俺とコスモは震え上がった。やはり悪いことはしてはいけない。

 俺は深く反省した。


 「いや、気にしなくていいよコスモ。俺が大罪を犯してしまったことは事実だ。それにお前は、こんな罪深い俺のことを擁護してくれたんだろう? 俺としてはその心意気に感謝こそすれ、責めるなんてことはしないよ」

 「そ、そうは言ってくれても、私はポテチの立場を更に悪くしちゃったわけだし……。謝罪は受け入れてくれると嬉しいな」

 「そうか……わかった。謝罪は受け取っておこう。だがそれでも言わせてくれ。ありがとう、コスモ。俺はお前のようなギルメンを持てて幸せだ」

 「ふふふ、私もだよ、ポテチ」


 俺とコスモのたいへん和やかな仲間思いの会話に、ミルミルは目を潤ませる。


 「ポッチン、スモりん……。うう、まったくどうしてポッチンはそんなに仲間思いで優しい人なのにこんなことをやらかしちゃったんだか……」


 俺の敬愛すべきギルドマスター、大天使ミルミルモさまはそう言って目をこする。胸を撃ち抜かれる。彼女にこんな顔をさせたのは一体誰だ。俺だった。


 俺はこの時初めて自身の罪の重さを認識した。それによく考えたら、俺は全く無関係なプレイヤーも多数巻き込んだ気がする。まあそっちは比較的どうでもいいけど。

 いやどうでもよくない。ごめんなさい、深淵さま。再び邪視を飛ばしてきた深淵さまに、俺は涙目になる。超怖い。つうかデバフだけじゃなくてなんか地味にHPも削れてきてる。あと何回か食らったら死んじゃう。


 「本当にごめんなさい」


 俺は心持ち土下座の完成度を上げる。


 「ポッチン……大丈夫だよ、ポッチン。明日、街の広場に行ってみんなに謝りにいこ? ちゃんとポッチンがこれからも気持ちよくゲームできるようにね? 大丈夫、私も一緒に謝ってあげるからっ。聞いて回った感じだと、先にプレイヤーのHPが尽きたせいで召喚獣までロストした人はいないみたいだしっ! みんなもきっと一時の気の迷いだったって分かってくれるよっ」


 俺のためにそこまでやってくれていたらしい、ミルミルに俺はおいおいと涙を零してしまう。


 うーん、だけどロストしたやついないのかあ。それは残念だ……。プレイヤーってほんとカスみたいなHPしか持ってねーんだな。下手に全体攻撃かつ大威力だったのがダメだったっぽい。

 次はもっとうまくやろう。そう、俺にはきっと殺すKAKUGOが足りなかったんだろう。それだから未熟なことに対象外の余計なのも巻き込んでしまったんだ。精密にかつクリティカルに殺意を研ぎ澄ませ。そういうことだなきっと。間違いない。


 俺は額を床にこすりつけた。せっかくミルミルが場を用意してくれるんだから、巻き込んでしまった無辜の民には謝らないと。ついでに広まってるらしい今回の悪評も幾分抑えられそうだしな。うん。


 「はっ。仰せのままに、マイマスター。是非とも謝らせていただきます」


 コスモは呆れたように小さく呟いた。


 「いや、こいつぜってーわかってないだろ……」



§§§



 次の日、俺は愛すべきギルマスとともに広場で謝罪をした。きっとみんな分かってくれたと思う。たくさんフレンド増えたし。俺の技量が未熟だったばかりに巻き込んでごめんね。でも、核○弾ポッチンとかいったやつの顔は覚えたからな。


 そんなこんなでいつになく人間の善性ってやつに感じ入りながら、ギルドハウスに帰ったら、残りのギルメンのコルデンとぴょっぽが二人ともすべての切っ掛けとなった〈天駆ケル無双ノ戦乙女〉を引けたと自慢してきた。


 俺は殺意の波動に囚われた。


 この二人は俺と同じく、手口は異なるがPKの達人だ。きっと厳しい戦いになるだろう。だが殺すKAKUGOを得た俺はきっとこの二人に負けはしない。



 ――ガチャ自慢は絶対に許さない……ッ!




なんでこの主人公、召喚獣がバトルするゲームでプレイヤーを狙うゲームしてんだろ(´・ω・`)

連載の方書いてきます……。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 驚くほど某なろう小説に似ていますが、作者さん同士のコラボ作品だったりするのですか? [一言] キャラクターとか、舞台設定なんかは偶然似ることがあるかもしれないけど、話の流れまで同じな…
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