始まりの夜に
初めての投稿です!
緊張です!
古来より、日本ではある密約が交わされていた。自然に対する礼儀なのか、それともより良い種を求めてなのか、はたまた儀式なのか
それは誰にもわからないが、わかるのはただ一つ。それが未だ続いているということ。
それは、自然界ではほとんどないと言われている異種混合。
人と獣。【人間獣】と呼ばれるもの
「ねえ、知ってる?」
「あぁ〜、知ってるよ。また出たんだってね。未登録〔ハーフ〕」
ごく普通の、ごく普通な夜。しかし、違うのは、暮らしているのは人間だけではないということ。
人間獣、ハーフと呼ばれる存在が確認されたのは、20世紀初頭の
ある事件がきっかけだった。
自然界から突如舞い降りたハーフの大群と、人間との戦いである。
結果は五分五分。人間のもつ兵器に対し、ハーフ達は自然の力で戦った。その後、双方に友好条約が締結され、人間と獣人。二種による、異形の生活が始まった。
条約が締結された当時こそ対立していた二種だが、今となっては、
互いに助け合い高めあっている。
そんな普通の街を歩く一人の青年。
見た目は高校生といったところか。
長い銀色の髪とすらりと伸びた長身、さらには整った顔立ちも加え
一見モデルのようにも見える。
普通の街を歩く普通の光景。それがいつまで続くかなんて、まだ、誰にもわからない。
「あり得なくない⁈マジハーフとか⁈勝手に攻めてきて友好条約とかさ!!」
「ほーんと、ありえねぇよなー、
勝手に人間様の街に入ってきて、自分たちも人間の暮らしがしたいですーって、何様だよ⁈」
「ねぇ!」
すれ違いざまに聞こえてきたそんな会話に、青年は気にする余地もなく、右手に握りしめた携帯電話の画面を凝視している。
しばらく歩くと、青年の家が見えてきた。一戸建ての、純和風という奴だ。
「ただいま〜」
気だるそうな声をあげ、引き戸を引く。ガラガラと、音を立てて開く扉。青年が入ろうとした瞬間。
「おっかえりー!ソウタ!遅かったねーー!どこで道草くってたの⁉︎何?もしかして彼女⁈くぅー
やっるねー!!いやー、お姉ちゃん嬉しいっ!!」
弾丸のような速度で、機関銃のように言葉を乱射して飛び込んでくる女性が一人。
「げっ⁉︎姉ちゃん⁉︎なんでっ⁈」
反応する暇もなく、玄関から飛び込んできた姉ちゃん。西狼縁に抱きつかれ、そのまま後頭部からコンクリの地面に倒れるソウタ。
受身も取れず頭蓋骨を強打し、ぐはっ、と苦悶の声をもらす。
「なんだ⁈なに⁈ちょっ⁉︎」
痛みと戸惑いで苦しむソウタの頬に頬ずりをしてくる姉、縁をなんとか引き剥がし、ここではまずい
と、思い家の中に入る。
そして、リビングで縁を正座させて、うえから威圧的に見下ろすソウタ。まるで、聞き分けのない子供を叱る親である。
「姉ちゃん、前も言ったよな?勝手に俺の住所調べんなって…?」
「えぇ〜、だってぇ、ソウタがいないと寂しいんだもんっ!」
超上目遣いで見つめてくる縁に、不覚にも一瞬ドキッとするも、すぐに態勢を立て直す。
「もんっ!じゃない!前も、その前も、その前も!能力乱用して追ってきて!家の方はどうしたんだよ!」
現在ソウタは二人暮らし。ソウタと祖父である。父と母は、もっとど田舎の家で旅館を営んでいる。
縁はその正当後継者で、色々と仕事があるはずだ。
「えぇ〜ん、だってぇ〜」
遂には泣き出してしまった姉ちゃんを見て、やれやれと嘆息し、持っていた携帯電話で、家の方に連絡する。姉ちゃんの回収要請だ。
「もしもし、かあさん?姉ちゃん、またこっちにきてんだけど……何⁈ちゃんといるよ?
何がだよ?は?今偽物だって気づいた?はぁ⁉︎……もう、とにかくすぐ向かえよこしてよ?こっちも色々とあんだからさ」
母親との会話を終え、携帯の画面を見ながら、またやれやれと嘆息する。気のせいか、ため息のつきすぎで幸せが逃げていったような気がする。
「じいちゃんもなんとか言ってよ。ねぇ、じいちゃんー!」
「やれやれ、やかましいなぁ」
のそりと、コタツからじいちゃんが起き上がる。純銀の毛並み、鋭く尖った犬歯、体調二メートルはあろうかというほどの、巨大な日本オオカミ。紛れもなくハーフである。
「あぁ、また獣化して、ご近所さんに見られたらどうすんの⁉︎」
「あぁ〜あぁ〜、やかましいなぁ
いいじゃんこれくらいぃ」
「ダメだって!人化してよー」
「ソウター!私なら何してもいいよぉ〜!」
「あぁっもう!頼むからちょっと五分でいいから黙ってて姉ちゃん!!」
賑やかになる部屋。一戸建てなので、近所迷惑はそんなに考えなくて良いが、誰も文句を言ってこない。それはそれで辛い!
これが、西狼ソウタの普通。
ハーフの………普通である
いかがでしたでしょうか。お楽しみいただけたなら、僕も嬉しいです。