世界構造システム17
数時間後。
単冠基地にラーズは戻ってきていた。
「草加閣下、ヒドイです」
滑走路に着陸するなり、基地司令の日比谷大佐自らがやってきて、機密通信室で草加と話すように伝えて来た。
そして、今ラーズは機密通信室に居るというわけだ。
「今回は大した怪我も無いようだし、よかったじゃないか」
笑いながら草加は言うが、細かい怪我はいっぱいあるし、お稲荷さんが拉致されそうになったのは大問題である。
「しかし、実際問題」
突然真顔になって草加が声を潜める。
「どこまで感づいているのかね?」
「なゆ太が居たということは、この件、内調主導ですよね!?
となると、必然的に択捉でソ連のスパイが暗躍してることは承知の上だったんですよね!?」
そうなのである。
本来なら浜大津で那由多を見た地点で、ラーズはこの結論に至るべきだったのだ。
しかし、那由多が内調のエージェントであるという事をラーズは完全に忘れていたので、華麗にスルーしてしまったという話である。
この事を思い出したのが、スターリン戦の最後の方に那由多本人が出現してからなので、もうどうにもならない。
「流石に鋭いな。
一応神崎さんとも話し合ったのだが、事前に十分な情報を渡すとキミが思ったように動いてくれないという結論に至った。
これについては本当にスマナイと思っている。『翔鶴』に戻ったら何かオゴろう」
何か奢る程度の話なのかとラーズは思うワケだが、ここでそんな話をしても仕方ない。どうせ聞いてくれない。
「帰ったらカツカレー奢ってください。
それで、閣下の目的は果たせたのですか?」
今回の件、要約するとソ連のバケモノとソ連のスパイをラーズがぶっ飛ばした。という事に集約する。
本当にこれだけである。
「ラーズ君は、東京条約の時の事を覚えているかね?」
「陸軍に内通者が居るとか居ないとかの話ですか? 辻中佐の話なら一応の決着が付いていると……」
その辻中佐は、センチュリアでアベルによって撃破されている。
結局、本当の所は分からないのだが、センチュリアの失われた魔法王国の秘宝を盗もうとして失敗した。という話で落ち着いている。
「ところが、最新の分析で面白い所に繋がったのだ」
「林という男は覚えているかね?」
林と言われても、そんな名前はラーズの知り合いには多分居ない。
「いえ。記憶にありません」
「それはそうだろう。朝鮮半島の時のハイジャック犯の名前だよ」
「ええ!?」




