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魔法使いたちの宇宙戦争 ~ ユニバーサルアーク  作者: 語り部(灰)
魔法使いの本分

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魔法使いの本分18

◇◆◇◆◇◆◇


「……ラーズ君! 無事だったか!?」

 定時直前に開発室に駆け込んできたラーズに向かって都築は言った。

「無事の定義によりますが……

 ……虹色回路も、ほらこの通り!」

 おお。という感嘆の声がエンジニア達から上がる。

「……解像度問題の解決方法、わかったかも知れないんで、早速試したいんですが」

「おお。それも朗報だ。早速やってみよう」

 ラーズを伴って、都築は大テーブルへ移動。

 ベース基盤に、ラーズがコガメ基盤を接続する。

「……なにか、必要な物は?」

 解像度問題の解決の為に、なんらかの変更をハードかソフトに入れる必要があるのか? と都築は言っているのだが。

 ラーズは首を振った。

「いえ。原因は単純です。

 なんで気づかなかったのか、恥ずかしいくらいです」

 そういうと、ラーズはベース基盤に手をかけ持ち上げた。

「……データの取得を、お願いします」

「ああ……それはいいが一体……?」

 ワケがわからない。と言った風情の都築が言う。

「単純な事です……すぐにわかります。

 行きます!」

 そういって、ラーズは魔法を展開した。

 都築の目の前にあるホロディスプレイに、今までに見たことが無いような鮮明な画像が浮かび上がった。

「!?」

 うをををを、というような歓声が周囲のエンジニア達から上がる。

「……センチュリアのVMEは左腕に固定して使います。

 しかし、東通工製のこの基盤は魔法使いに対して固定されていません。

 これじゃブレるのは当然」

「……そんな単純な……」

「単純故、見落としてました。

 まったく恥ずかしい限りです」

 ラーズは下を向いて、頭をかいた。

「いやいやいや。これはスゴイぞ。

 早速、ハードウェアの設計からやり直そう。

 制御ソフトも開発しないと……

 ……よし、まずミーティングしてチームを再編成しよう。

 忙しくなるぞ」

 都築は心底嬉しそうにまくしたてた。

 

 これを境に、それまで滞っていた開発が一気に動き出した。

 年内に実験用の基盤が再設計され、その性能は有意な向上を果たした。

 明けて二九九八年、春を待たずに最初の帝国製のVMEのプロトタイプが完成した。

 このデバイスは、当初の予定通りマジックシンセサイザーと名付けられた。

 マジックシンセサイザーは、直径5センチ、厚さ1センチほどの腕時計状のデバイスであり、虹色回路PSM-1と制御用にスーパー日立シリーズの車載グレードのMPU、ユーザーインタフェースとして早川電機製モバイルホロデッキを備える。

 センチュリア製のVMEの、一万倍の処理能力、二四万倍のメモリ、一兆倍以上の電力効率も持つモンスターの誕生である。

 OSはiTronを採用、対応する制御ソフトは開発中であるが、ベンチマークレベルではすでにAiX2400を遥かに超える性能をたたき出している。


◇◆◇◆◇◆◇


 こんこん。と執務室の扉がノックされた。

「入りなさい」

 と永井が言うと、すぐに扉が開き、現れたのは草加だった。

「……珍しいね。確かトリトンに居たと思ったんだが……」

「はい。閣下に内々の話があり、戻ってまいりました」

「ほう。どれ、この爺でよいならば、聞こう」

 永井は真っ白な髭をなでながら答えた。

「……ラーズ君から、こんな手紙が来まして……」

 草加が差し出した手紙を受け取り、永井はその文面に視線を落とす。

 わざわざ紙に書かれた手紙である。

「……なるほど、魔法の次はこれか。

 彼もいろいろ考えているようだ」

「いかがいたしましょうか?」

 草加はそう言うが、わざわざ内地まで戻ってきているという事は、既になにか考えがあるのは明白である。

「いかが、か。

 君の考えている事を、言ってみなさい」

「……はは。見抜かれていますか。

 では……

 海軍の新規部隊編成計画に沿って、現在坂井大尉が部隊のメンバー集めをしています。

 彼に預けてみようと考えています」

「ほう。『サムライ』坂井か。それは面白い」

「それでは、よろしいので?」

「ラーズ君は我々に魔法を教えてくれたからな。今度は、好きにさせてみようではないか。

 九重総理には私が話を通しておこう」

「はっ。ありがとうございます」

 草加は敬礼した。


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