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魔法使いたちの宇宙戦争 ~ ユニバーサルアーク  作者: 語り部(灰)
マザーランド・リターン センチュリア逆上陸

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マザーランド・リターン センチュリア逆上陸11

「ヨーソロ」

 そう答えて、鈴女が『雛菊』の噴進弾を敵の噴進弾に向ける。

 ……イケるか!?

 ラーズは自問した。

 海防艦が搭載する対空噴進弾の射程はそんなに長くない。

「……ダメか!」

 そうラーズが漏らすと同時に、『雛菊』の噴進弾が爆ぜた。

 燃料切れである。

 こうなってしまうと、あとは『雛菊』の対空砲による迎撃に託すしかない。

 しかし、『雛菊』の弾幕は薄い。

 やはり、火器管制に不具合を起こしているようだ。

 迎撃が成功するかどうかは、かなり微妙な線だ。

 弾道的には、噴進弾は『雛菊』の艦尾左側に向かっている。

 ……当たる!

 ラーズはそう判断した。

 対空砲火が少なすぎる。

 ……なら……

「……行けっ!」


◇◆◇◆◇◆◇


「ダメです! 迎撃、間に合いません!」

「総員、衝撃に備えっ!」

 勝間は艦内放送にそう叫んだ。

 対艦噴進弾は、一発でも『雛菊』にとっては十分致命傷になりうる。

 『雛菊』も、先に逝った駆逐艦の後を追う事になるのか。と勝間は思った。

 だが、その時信じがたい光景が勝間の目に飛び込んできた。

「……なんという事を!」

 なんと、あろうことか『雛菊』の周囲を飛んでいた二機の『烈風』が、迫りくる噴進弾と『雛菊』の間に入り込んだのだ。

 その意図は明らかだった。

「……我が艦の盾になる気か!」

 それはゾッとするような光景だ。

 『雛菊』は噴進弾を喰らっても、あるいは全員生還できるかも知れない。

 しかし、戦闘機が噴進弾を喰らえば、そのパイロットの生命は絶望である。

 勝間が止めるように『烈風』に通信を送るより早く、その一機が噴進弾に体当たりした。

「-っ!」

 声にならない悲鳴。

 そして、『雛菊』をバラバラと『烈風』の破片が叩く。

「……被害報告を」

「我が方に被害ない。

 友軍航空機一機、喪失しました」

「……そうか……」

 まずは、これで『雛菊』の危機は去った。

 勝間は軍帽を脱ぐと、短い黙とうをささげる。

「……『烈風』……スズメ1より入電。

 艦長宛て電文です」

「読み上げてくれ」

 軍帽をかぶり直し、勝間はそう告げた。

「はっ……発スズメ1、宛『雛菊』艦長勝間大佐。

 先の借りは返した。なお、喪失した機は無人機。R。

 ……以上であります!」

「……R……

 そうか、わざわざ借りを返しに来たのか……

 しかし、少々多くもらいすぐだな。釣銭を出さねばならないね」

 聖域のリムで拾ったラーズは、その後帝国の内地で海軍のパイロットになったと勝間は聞いていた。

 まさか、一航戦の空母に乗っているなど、考えても居なかったのだが、向こうはちゃんと覚えていたというわけだ。

「……艦長。返信はなさいますか?」

「不要だろう。向こうも礼など欲してはいないよ」

 勝間はそう言って、母艦を目指して飛び去って行く三機の『烈風』を見送った。


◇◆◇◆◇◆◇


「好き勝手やってくれてるな!」

 ペロリと唇を舐めて、坂井はそう言った。

 その目が見据える先は、『翔鶴』に群がる敵機である。

「宮部! 付いてきてるな」

「ヨーソローっ」

 返事はすぐに来た。

 ちなみに、村田は爆撃による敵陣地破壊に参加していた為、はぐれてしまった。

 最新の戦術情報によると、かなり後ろの方にいるようだ。

「よし、敵を蹴散らせ。俺は左から、宮部は右から行け」

「ヨーソロ!」

 ほぼ同時に、宮部の『烈風』がドローンを従えて右へ変針していく。

 一旦『瑞鶴』の陰に入った後、敵を襲撃する意図だ。

 ……なかなかやる。

 坂井はほくそ笑んだ。

 この若き海軍のエースは聖域海戦を経て、大きく成長するだろう。

 そうでなければ九三一空に連れて来た意味がない。

「……さて……」

 からめ手を選択した宮部とは対照的に、坂井は敵との真向勝負を選択した。

 幸か不幸か敵の艦戦『ワイルドキャット』は、『劒崎』と『高崎』の艦載機に吊り上げられている。

 ……いいぞ。

 坂井は思った。

 『劒崎』と『高崎』の艦載機は全て無人機である。『ワイルドキャット』を誘引してくれているだけで、十分に役に立っている。しかも、撃墜されても痛くもかゆくもないと来れば、言う事なしだ。

 直掩機の居ない艦爆隊に適当に当たりを付けて、坂井は猛然と襲い掛かった。

 石川島播磨謹製の主機が心地よく響く高音を響かせ、『烈風』の機体が坂井のイメージした通りに『ドーントレス』に襲い掛かる。

「……悪く思うなよ」

 『ドーントレス』のパイロットが、こちらに気づいていたのかどうか、坂井にはわからなかった。

 しかし、それはあまり関係はない。

 『ドーントレス』を上から下に向かって坂井は、居合う。

 『烈風』の二八ミリ機関砲は、この世で一番鋭利な刃物である。

 二機の『ドーントレス』が瞬時に砕け散り、誘爆した噴進弾は放たれる事なく爆ぜた。

 名も知らぬパイロットに対して敬礼した坂井は、操舵スティックを倒して次の獲物を求める。

 『翔鶴』の艦首から、艦底を抜けて左舷へ抜け、再び上へ。

 坂井の向かう先に戦闘機が何機か見えたが、これは無視。これらは『式神』の獲物である。

「……狙うはあくまでも、『ドーントレス』!」

 左のラダーペダルを蹴り飛ばし、坂井は再び『翔鶴』に攻撃を試みようとしている『ドーントレス』を狙う。

 敵はどうやら、狙いを『翔鶴』に絞っているようだ。

 限定的な戦力で、大型空母に致命的な損傷を与えたい。そんな意思を感じる。

 だが、それを許す気は坂井には毛頭なかった。

 噴進弾を抱えて動きの鈍い『ドーントレス』が取れる行動は二つ。

 噴進弾を捨てて逃げるか、坂井に撃墜されるかの二択。

 坂井が目指す先の『ドーントレス』二機は、前者を選択したようである。

 ろくに狙いもせずに噴進弾を発射すると、左右に分かれて急旋回。坂井を振り切りたいらしい。

 しかし、それは甘い考えである。

 そもそも素の性能で『烈風』は『ドーントレス』より速いのだ。逃げ切るなど虫のいい話だ。

 坂井は左に旋回していく『ドーントレス』に狙いを定めた。

 タイトに『ドーントレス』の内側を回り込んで、機関砲の引き金を引く。

 数発の曳光弾が『ドーントレス』の推進器に吸い込まれていく。坂井の腕前をもってすれば、回避運動をする敵機の弱点に砲弾を送り込むことなど容易い。

「次!」

 『ドーントレス』が爆ぜたのを確認し、坂井は周囲を見回す。

 見れば、先ほど右に旋回していった『ドーントレス』は宮部のドローンに喰われていた。

「……どうもドローンの扱いは、あいつの方が上手いらしいな……」

 悔しいような嬉しいような微妙な心境である。


 坂井、宮部ペアが『翔鶴』の直掩に入ってから、明らかに敵機は浮足だし始めた。

 今まで、『翔鶴』の直掩をやっていた『式神』を『ワイルドキャット』が抑え、『ドーントレス』は攻撃に専念できるという図式が壊れたためだろう。

 実際、『ドーントレス』の危機を感じ取った『ワイルドキャット』が坂井のドローンに襲い掛かる。

「カンムリワシ3、自動迎撃実施中」

 『烈風』の戦術AIがそう報告して、ドローンが戦闘に入る。


◇◆◇◆◇◆◇


「騎兵隊の登場、と言ったところか」

 『翔鶴』の周囲で繰り広げられる戦闘を特等席で見られるのは、空母の艦橋要員の特権である。

 しかも戦っている『烈風』は、尾翼にリボンを巻いている。隊長機の証だ。

 つまり、海軍最強の戦闘機乗りサムライ坂井の空戦である。

「これで決着だな……」

 貝塚は腕組みしながらそう呟いた。

 そうこうしている間にも、『翔鶴』の周りを飛び回っている『烈風』の数は増え続けている。

 『烈風』と『式神』の数が『ワイルドキャット』『ドーントレス』の数を一定数上回れば、それ以降は一方的な殲滅戦になるだろう。

 しかし、今がラストチャンスとばかりに、果敢に攻めてくる『ドーントレス』も居る。

「二時方向、敵機三、見ゆ」

「ヤンキー魂、ここにありと言ったところか……

 右舷対空砲、弾幕が薄いぞ! 敵機を近づけるな!」

 『翔鶴』右舷側に展開した『ドーントレス』三機が、一直線に向かってくる。

「敵噴進弾に警戒。

 面舵一杯!」

 『翔鶴』が艦首を右に振り始めるとほぼ同時に、『ドーントレス』が噴進弾をばら撒いた。

 直後、その三機は上から襲い掛かってきた『烈風』によって撃墜される。二機がその場に爆発して消えた。

 残り一機は、翼と破壊されてキャノピーの一部が砕け散っている。

 避けられなかった、というより攻撃を優先して回避行動を取らなかったのだろう、と貝塚は判断した。

「……ぬ。

 ……いかん!」

 撃破された『ドーントレス』の一機、翼を破壊された機がヨロヨロと体勢を立て直すと、『翔鶴』の方に向かってくる。

 明らかに飛行甲板に突入する意図だ。

「迎撃をっ……いや、迎撃は敵噴進弾を優先!

 上空の『烈風』隊に、突っ込んでくる敵機の迎撃を指示! 急げ!」

 敵の放った噴進弾は計十八発。『翔鶴』の迎撃能力を考えるとギリギリだ。

「取り舵一杯。推力最大! 合図したら下げ舵……」

 『翔鶴』が左に艦首を振り始める。

 貝塚は最悪、敵機をアイランドで受けるつもりだった。

 『翔鶴』型のアイランドは、ちょっとした戦艦のバイタルパートほどの防御力がある。

 航空母艦の艦長は、いかなる手段を使っても飛行甲板を守らなくてはならない。

 敵機は破片を撒き散らしながら、一直線に飛行甲板へ向かう。

「……今!」

 その合図で、『翔鶴』は艦首を下げた。

 その瞬間、貝塚は確かに『ドーントレス』のパイロットの顔をみた気がした。

 衝撃波ほとんどなかった。

 『ドーントレス』は翼を『翔鶴』のアイランドに引っ掛けて、錐もみ状態になりながら、弾き飛ばされた。

 そして。

「……敵機、飛行甲板に落ちました!」

 見張り員の悲鳴。

「見事なヤンキー魂だ……

 各部、被害報告を急げ! 初期対応班、医療班集合急げ!」

 『ドーントレス』のパイロットは、『翔鶴』の艦橋にぶつかりながらも飛行甲板に突入して見せた。

 これを見事と言わずして、なんと言うだろう。

 艦橋後方に堕ちた『ドーントレス』に向かって貝塚は敬礼した。

「被害報告! 艦尾四番エレベータに被害!」

 『翔鶴』型の航空母艦には四基のエレベータがある。飛行甲板から待機甲板へ航空機を引き込む為のエレベータが二基。逆に飛行甲板へ上げるために二基。

 損害を受けたのは待機甲板から飛行甲板に航空機を上げるのに使う物の内の一基。艦橋後方にあるエレベータである。

 このエレベータは、飛行甲板の外に張り出すように設置されている物なので、人的被害はないだろう。


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