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魔法使いたちの宇宙戦争 ~ ユニバーサルアーク  作者: 語り部(灰)
歴史のしるべ - エッグ叛乱

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歴史のしるべ - エッグ叛乱6


◇◆◇◆◇◆◇


 エッグの内海にE5315、E5318、E5321の三隻が居たという事は、外海に居るのは必然的にE5314一隻という事になる。

 E5314のリスロンド艦長は、これをハズレだと考えていた。

 何しろ一隻で、ソーラーシャフトの外側を閉塞して近衛隊の『ブラックバス』の通過を阻害しろ、という無茶な命令が出ているのである。

 E5314の性能的には、ソーラーシャフトを閉塞するのは難しくない。

 何しろ、シャフトの中で艦船は自由に機動できないので、主砲で牽制しているだけで出てこれないだろう。

 問題はそれ以外の要素である。

 エッグフロントには近衛隊の艦隊司令部があり、そこには三十隻を超える『ブラックバス』が居る。

 さすがに全部が全部稼働してるわけでもないだろうが、それでも半分以上は稼働可能だろう。つまり十五隻から二十隻。

 リスロンドはアイオブザワールドのE5300が、近衛隊のE4400やE2400に劣っているとは思わないが、数の暴力はいかんともしがたい。

 ……ドラゴンマスターやマイスタ・アベルは援軍を送る。とは言ってたけど……

 E5314の艦長席で、リスロンドは漠然とそんなことを考えていた。

 もちろん、口には出さないし表情にも出さない。

 艦長が心配事を抱えていると士気が下がる。

「艦長。指定座標まで一分」

 タイムキーパーが告げた。

 すでにE5314の目の前にはエッグの殻が見えている。

 ダイソン球であるエッグはその内側に太陽を閉じ込めている為、可視光線では見えない。今見えているのは、E5314のコンピュータが可視化した映像である。

 その映像の中、ソーラーシャフトから『ブラックバス』がゆっくりと出てこようとしている。

 E4425。近衛隊の旗艦である。

「砲撃戦用意!」

「砲撃戦用意。アイ」

 復唱がなされ、主砲とその照準システムがオンラインになった事が、リスロンドの手元のディスプレイに表示された。

 E4425はまだソーラーシャフトの中に居る。狭い水路であるソーラーシャフトの中では、巨大な『ブラックバス』は回避行動は著しく制限を受ける。

 攻撃は必中である。

「放て!」

 E5300シリーズの主砲は連装一基二門の陽電子砲。この主砲が斉射され、ソーラーシャフトの中のE4425を襲う。

「命中!」

 E4425の艦長は豪胆だった。その場を動かなかったのだ。

 これは後続のE4422を守るという意図だろうとリスロンドは思った。

 向こうの艦長も本分を尽くしているらしい。ならば、こちらもアイオブザワールドの艦長として、本分を尽くさねばならない。

「E4425の損害を確認。急いで」

「損害確認、アイ」

 リスロンドの見立てでは、艦首に相応のダメージが入ったはずである。

 魚雷発射管と主砲全損が望ましいが、リスロンド自身そこまでは望んでいない。

「E4425、主砲機能不全と判定。命中精度低下をきたしている可能性、大」

「なお魚雷発射管は無傷の模様」

「よろしい」

 リスロンドは頷いた。

「両減全速。ソーラーシャフトに突入します」

 ドラゴンマスターの策はこれである。

 ソーラーシャフトの入り口に船をねじ込んでしまえば、近衛隊は迂闊に攻撃できなくなる。

 ソーラーシャフト内で船が撃沈されれば、そこを通れなくなるのは必定。

 戦力で劣るアイオブザワールドが、近衛隊に勝つための戦略である。


◇◆◇◆◇◆◇


 プレスコットは、自分の船の艦長席に転がり込んだ。

 整備に出ていたE2437を先ほど受領したプレスコットは、その直後に近衛隊司令本部からの緊急命令を受けた。

 曰く、アイオブザワールドがクーデターを起こしたと言う。

 おおよそ正気の沙汰ではないが、ふとレクシーの顔を思い浮かべると、なるほどあの連中ならやりかねない、と思う。

「プレスコットより各部署。各部署はE2437の出航準備を優先。気密確認を急いで」

 近衛隊は大きく分けて二つのグループに分けられる。

 一つは、VIPの警備を主に行うグループ。もう一つは首都防衛を行うグループだ。

 E4400とE2400。二種類の『ブラックバス』級巡洋艦を近衛隊が擁するのは、そういう事である。

 E2400シリーズを駆るプレスコットは、栄えある首都防衛艦隊所属だ。

 通常VIP警備サイドから、首都防衛艦隊へ出動要請はない。

 なぜなら、E4400は極めて強力な戦力であるからだ。通常、海賊や反政府の過激派など鎧袖一触。しかし、今回は違う。

 敵はE5300シリーズの『ブラックバス』級巡洋艦を保有する、アイオブザワールド。

 理由は聞くまでも無い。マザードラゴンへの不満が限界に達したのである。

 これについては、プレスコットも思うところがないと言えば嘘になるが、仕事は仕事。


「後手後手に回ってるわね」

 ソーラーシャフトの様子を見て、プレスコットは思わず呟いた。

 そこには、既にE4400、E2400を問わず結構な数の『ブラックバス』が集まっている。

 敵性の『ブラックバス』は、見えている範囲で一隻。データ上はエッグの内海に三隻居るらしい。

 それだけである。

 しかし、目の前の一隻を見るだけで、アイオブザワールド側が作戦を練りに練っている事は明らかだ。

 アイオブザワールドは勝てる公算があって、クーデターを実行している。すなわち自分たちは負ける。

「……E5314……?」

 識別が終わって、ディスプレイ上に表示されている『ブラックバス』に型式番号がオーバーレイされる。

 それがE5314である事に、プレスコットは違和感を覚えた。

 こうした危ない事こそ、レクシーのE5312が居ると考えたのだ。

 あるいは、こんな事よりももっとクレイジーな事に、レクシーは投入されているのか?

「それにしても厄介ね……」

 E5314は、丁度E4425の進路を塞ぐ形でソーラーシャフトの入り口に陣どっている。

 迂闊に攻撃すれば、ソーラーシャフトが閉塞されてしまう位置である。

 皆、それをわかっているので攻撃が出来ず、膠着状態に陥っているのだ。

 これは非常に良くない状況である。マザードラゴンを乗せたE4422は、E4425のすぐ後ろで身動きが取れなくなっている。

 エッグの内側の様子は不明だが、単純に分かっている情報だけだと二対三でアイオブザワールド有利。いくらE4400シリーズが優れた船とは言え、最新鋭のE5300相手で一隻分の戦力差をひっくり返すのは難しいだろう。

 つまり時間経過で、エッグ内海側の戦力が全滅する。戦力が全滅すれば、E4422を拿捕するのは容易い。

「誰が考えたのか知らないけど……見事だわ」

 プレスコットは関心した。

 この様子だと、近衛隊以外の外的戦力……例えば沿岸警備隊……なども排除されているだろう。騎士団は元々内乱に手を出せないので、この場合は関係ない。

 しかし、マザードラゴンをドラゴンマスターが倒したとして、その後アイオブザワールドはどうするつもりなのだろうか? とプレスコットは考える。

 普通に考えれば、ドラゴンマスターは近衛隊に逮捕されて終了である。

 マザードラゴンが倒されれば、彼らが盾にしている色々な物が機能しなくなる。


◇◆◇◆◇◆◇


「詰まったみたいね」

 戦術データを見ながら、ガブリエルは誰にともなく言った。

 詰まった。というのは、言うまでもなくソーラーシャフトの事である。

 これは、予定通り。

 予定通りでないのは、近衛隊の『ブラックバス』二隻が頑張っている事。

 当初ワーズワースの立てた作戦では、ここにレクシーのE5312も投入されるはずだった。

 しかし、E5312は損傷した為、ここでの戦力には計上できていない。

 もちろん、レクシーのように優秀な艦長を遊ばせておくという事もないのだが、ここに居ない物は居ないのである。

「アベル、どう思う?」

「この船はソーラーシャフトに突っ込んでいいと思う。

 どうせ近衛隊の船は付いてこれない」

 当然である。狭いソーラーシャフトの中に入れば、E5318やE5321にいいように撃たれるのは明白。

 問題は残される事になる二隻。E5315が居なくなれば、数の優位が失われる。

「だが、数の優位を手放したくない。

 残念ながら、艦長の腕前は向こうに分がありそうだしな」

「では、事態が動くまで待ちましょう」

 ガブリエルはパン! と手を叩いた。

「アイオブザワールド各艦に命令よ。

 各艦、近衛隊の動きを抑え込む事に注力せよ」

 その命令に従い、E5300シリーズ各艦はあくまで、近衛隊の船を大気の中に封じ込める事を主眼に立ち回るようになる。

 これに対して、近衛隊のE4400シリーズも主砲による砲撃戦で応じる。

 実は、近衛隊に勝機があったのはこの瞬間だった。

 もし近衛隊の船が一隻でもソーラーシャフトの中で自沈すれば、アイオブザワールド側の勝機は無くなったのである。

 しかし、近衛隊の艦長達はE4423が手負いである事もあって、これ以上の戦力ダウンを嫌ったのだろうか? とアベルは思う。

 ……このまま、時間が経てば近衛隊は降伏する。せざるを得ないはずだ。

 アベルの予想では、この段階で戦線は膠着してしまう事になっていたし、実際降着しつつある。

 おそらく、ソーラーシャフトの外側は、既にお互いが身動きできない状況になっているだろう。

 だからこそ、この膠着状態を壊す一手が必要なのだ。

 その一手は既に打たれた。

「レクシー、頼むぞ」


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