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俺とアリスの異世界冒険手帳~ショッピングモールごと転移したのはチートに含まれますか!?~  作者: 底辺雑貨
二部

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83 ところ変われば品変わる

 ああ……それにしても閃きたい。


 キュイン! と頭の上でパトランプが回ると同時に脳を駆け巡るアドレナリン。湧いて来る活力。

 もっと技を閃きたい。ずっと閃いていたい。それ以外はなにもいらないとすら思える……。


「ちょっと! 聞いているの!?」

「ハッ……。ん? ああ、なんだっけ……?」


 あぶら汗をシャツの袖で拭いながら聞くと、チョップの態勢に入っていたアリスがそのまま俺の後頭部に軽い衝撃を与えてから口を開いた。


「だから、朝食のあとはショッピングモールの案内をするんでしょ? どこから行くの?」

「ああ……。あれ、もうみんな食べ終わったのか」


 テーブルの上に置かれたカップラーメンやら紙皿やらは空で、全員が満ち足りた表情をしていた。

 どうやら俺も食べ終わっていたようで、全員の視線がアリスに問われた俺へと向けられていた。


「じゃあ……ビイングホームから回るか」


 立ち上がりながら俺は言った。


 そのままテーブルの上を簡単に片づけると、アリスは張り切ってボルサとレリアと領主代理の甥にショッピングモールの案内を始めた。


「この店のお洋服はどれも可愛いわよ! 私がレリアの服を選んであげる!」


 三角形のショッピングモールの東に位置するビイングホームに向かっていると、途中のテナントでアリスは足を止めた。

 

「あら……じゃあお願いするわ」


 レリアもアリスの誘いに乗り、俺達男性陣も2人に続いて店内に足を踏み入れた。


「ちょっと! あなた達は外で待っていてちょうだい!」


 即、アリスに追い出された。


「別に中に入るぐらい良いだろ……」


 ガラスのドア越しに言うと、店内からアリスの声が聞こえた。


「女の子のショッピングの邪魔をしないでちょうだい!」

「ショッピングじゃない、甥の視察だ。……まあいいか、じゃあ俺はボルサと甥を案内するから、お前はレリアの案内を頼むわ」

「了解よ! いってらっしゃい!」


 そう言うと、アリスは店の奥へと消えて行った。


「じゃあ、そういう事だから俺達は行こう」

「アリスたん抜きの視察か……。マイナス評価だな」


 甥がショップの中を覗き込みながら言った。


「いくらでもマイナス評価してるといい。俺には秘策があるからな」

「秘策? なんですかそれ」


 ボルサが興味を持ったようで、歩きながら聞いてきた。

 俺はその問いに後のお楽しみだと返し、足早にビイングホームへと向かった。


 店に着き、俺達は店内をまわった。

 甥はその物珍しさに圧倒されており、ボルサは元の世界の様々な物を懐かしそうに見ていた。


「これは……なんだ?」


 ビイングホームの店内で、甥が陳列棚にある物を指さした。

 

「すっぽんだ。トイレのつまりを取り除く物だ」

「素晴らしい形状だな、武器にもなりそうだ」

「いや、ならないだろ……」


 すっぽんを剣のように構えてから棚に戻すと、甥は帳簿になにかを書き出した。

 俺はその事はあまり気にせずに、再び店内を甥のペースに合わせて歩いた。


 すると、今度はスコップや草刈り鎌などの棚で足を止め、すっぽんと同じように握り具合を確かめてから帳簿を取り出した。

 それらはこの異世界にもある道具だろうに、なにを記入する事があるのだろう? と考えると、答えはすぐに思い付いた。


 あ……。武器になりそうな物をチェックしてるのか……。


 どうやら正解だったようで、その後もバールやハンマーなどを入念にチェックしていた。

 流石にプラスチックのつっかえ棒まで記入していたのはツッコミを入れたかったが、我慢をした。

 しかしチェーンソーをスルーした瞬間、俺は思わずプッっと吹き出した。


「プッ……」

「プッ……」


 ボルサも同時に吹き出した。





 ビイングホームの視察を終え、俺達は三角形の西に位置するツゲヤへと向かった。


 頭に安全ヘルメットをかぶっている甥に店内を軽く案内すると、色々な書籍に興味を持ち手に取ってパラパラと捲った。

 しかし、当たり前だがどれも日本語で書かれているので、甥はまったく読めずに持ち始めた興味はすぐに消え去った。


「ここは大した物はなさそうだな。ファングネイ王国の王立図書館の方がよっぽど役に立つ本がある」


 甥は帳簿を閉じながら言った。そのあとに回ったゲームやDVDの陳列棚にもあまり興味を持たなかったようで、退屈そうに欠伸をしながら俺の後を付いて来ていた。


 しかし、その代わりにボルサは見た事も無いような楽しそうな表情をしながら、1人で店内を駆けまわっていた。


「このマンガの続き気になってたんですよ!」


 元の世界を10年も離れれば誰でもこうなるかもしれない。

 ボルサはマンガの続きを見てテンションを上げたと同時に、10年経っても完結していない事に驚いていた。


「楽しそうだな……。ボクも文字が理解出来れば読んでみたいが……」

「安心しろ。あんたには文字が分からなくても楽しめる素晴らしい物を紹介してやる」


 俺はそう言い、敢えて回っていなかった短いカーテンの向こう側へと足を踏み入れた。そう、俺の聖域のエロコーナーである。


「な、なんだこれは!!」

「ふん。これが俺の秘策だ」


 俺は甥が持っている帳簿を指さしながら続けた。


「因みに、今の俺の評価はいくつだ?」

「マイナス2415だが……それがどうした」

「なんでそんなマイナスなんだよ! ……まあいい。そのマイナスをプラスに今すぐ書き換えるなら、ここにあるエロ本を土産にやろう……どうする?」


 エロは世界共通である。当然、その世界という言葉には異世界も含まれる。

 甥は少し考えた後に、ピースサインを俺に向けた。


「2冊だ。それなら条件を飲もう」

「……いいだろう、商談成立だ」


 俺が頷くと、甥は目を輝かせながらエロ本を物色し始めた。


 俺が引くぐらいの物を選んだ甥は、俺の目の前でマイナス評価をプラスに書き換え、甥次第では今後もエロ本を提供しようという俺の誘いに対し握手で答えた。





 ショッピングモールの視察が終わった頃には既に昼食の時間となっていた。

 ジャオン1Fの食品売り場のテーブルにはボルサ以外が着席しており、朝食と同じように各々が選んだ物を食べていた。


「ボルサはどうしたの? 食事は全員でするものよ!」


 レリアが切り分けたパンケーキにフォークを刺したアリスが言った。


「まだツゲヤでマンガ読んでるわ。まあ……気持ちは分かるし放っといてやろう」

「マンガって……なんですの?」


 上品に食事をしているレリアが反応し、一旦フォークとナイフを置いた。


「絵が多い本……かな」

「絵本という事かしら? わたくしも読んでみたいですわ」

「絵本じゃないけど……まあ、午後にでも見に行ってみるか?」


 どうやら午前中はショッピングモールにいくつかあるファッション的なショップで過ごしたらしいレリアに言うと、アリスが代わりに口を開いた。


「じゃあ、レリアのヘアカットの後に案内するわ!」

「そうるすか。ヘアカットの道具、ビイングホームでゲットしてきたからすぐにでも出来るぞ?」


 と話していると、後方からトボトボと歩いて来たボルサがなにも言わずにテーブルの席に着いた。


「どうしたのボルサ? なんだか元気がないように見えるけれど」


 その姿を見て、アリスが聞いた。


「いえ……。好きだったマンガの続きを読んだんですけど、凄い気になるところで終わってしまいました」


 一旦着席したボルサが、再び立ち上がってから俺に熱い視線を向けた。


「ウキキ! ゾフィは山賊王になったんですか!? 続きを読んで余計気になってしまいました!」


 その問いに対し、俺はなんて答えればいいのだろうか。嘘でも完結したと言った方が、今後もスッキリと異世界で生活出来るのだろうか?


 やがて答えは見つかり、俺はボルサの熱い視線に相対した。


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