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俺とアリスの異世界冒険手帳~ショッピングモールごと転移したのはチートに含まれますか!?~  作者: 底辺雑貨
二部

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80 声は甲高く

「レリアの従者が死霊使い(ネクロマンサー)だったのか……」


 なんとか歩けるまで回復した俺は、自力で森の中を歩行し河原で起きた出来事をみんなに話していた。

 アナにとっても青天の霹靂だったようで、そう言ってから暫く口に手を当てて黙り込んだ。


「しかし、それなら納得のいく事があるな」


 合点のいく事があるようで、アナは再び口を開いてから俺が差し出した短い杖を受け取った。


「で……これが持っていた杖か。確かに文献に載っていた物と似てるな」

「トロール事件の時に見た物と同じっぽいしな」


 杖は黒く、先端は薔薇のつぼみのような形をしていた。

 これで殴られたら相当痛そうだが、高価そうなので鈍器として使う者はいないだろう。


「いてっ!」


 と思ったら、いつの間にかアナから杖を奪っているアリスが鈍器として使用し俺のケツを殴打した。


「いてーよ! ってか、こんな禍々しいモンお前が持つな!」


 俺は杖をアリスから奪取し、再びアナに渡した。


「少し叩いただけじゃない、大袈裟よ! ……杖技を閃くかと思ったけれど、なにも起きないわね」

「俺で閃こうとするな! ……俺も、もっと閃きてーな……ああ閃きたい……」


 閃きの快楽を思い出していると、隣を歩くボルサが声を上げた。


「死霊使いは禁忌とされていますが、それ以前に死霊使いになれる者はそうそういません。いえ、僕が知る限りでは今ゼロです。それなのに、ここ数日で既に2人の死霊使いが確認された……」


 ボルサはメガネに触れ……ないで続けた。


「なにかが、この世界で起こってます……。僕達の計り知れない、なにかが……」


 なにか……か。

 それに禁忌……。確かに、死人が地上を歩くこの異世界では死霊使いなんてまさにチートだよな……。

 そいつらは死ビトが力を増す円卓の夜を、今か今かと待ち望んでるんかな……。


 と歩きながら考えていると、突然チルフィーが後方で大声を上げた。


「アリスが!!」


 振り向くと、アリスが男に捕らわれダガーを頬に当てられていた。


「レリアの従者……! お前この野郎!!」

「杖を返してください! それはまだまだ必要な物ですから! でないと、この馬鹿ガキの可愛い顔に傷が付くだけじゃ済まないですよ!」


 目を剥き出して甲高い声で叫ぶレリアの従者は、どう見ても正気の状態とは言えなかった。

 アナが剣を抜くとレリアの従者は数歩下がり、再びよく聞くような脅し文句を並べた。


「アイス・キューブ!」


 不意に、アリスが唯一自由な左手を上空に向け、氷の塊を出現させた。

 それを見た瞬間、俺はアリスを救う方法を思い付き、ボルサに視線を送った。


「馬鹿なガキですね! 自分の上空にそんな物を!」


 アリスを後ろから羽交い絞めにしたまま、レリアの従者は頭上を見上げて言った。


「アリス落ち着け! 俺達がなんとかする! だから、絶対にキューブを落とすな! 絶対にだぞ!」


 馬鹿と罵りながらも万が一を考えているのだろう。俺がそう叫ぶと、レリアの従者は安堵の表情を浮かべた。

 次の瞬間、俺はアリスに向かって腕を構え、ボルサは駆け出した。


「落ちなさい!」

「なっ……馬鹿か馬鹿ガキ!」


 巨大な氷の塊が重力に従い落下した瞬間、レリアの従者はアリスを放してその場から逃れようと必死にヘッドスライディングをした。


「出でよ玄武! 飛べ黒蛇!」


シャアアアアッ!


 黒蛇はアリスに巻き付き、そのまま収縮して俺の胸までアリスを引き寄せた。

 と同時に氷の塊は地面に激突し、大きな音を立てて砕け散った。


「タッチアウト……ですね」


 ボルサがレリアの従者の頭に槍の穂先を当てながら言った。


「お、お前ら……なんだ今の連携は……」


 アナが驚いた様子で口を開いた。俺はアリスを抱いたまま、アナへと体ごと向いた。


「俺達の世界では、あれは落とせって意味で使われる文法だ」


 若干ドヤ顔だったのは言うまでもない。





 まだ日は高く、森に射す日差しは木々の影を東へと伸ばしていた。


「さあ、村へ戻ろう。油断してると、森はあっと言う間に夜になるぞ」


 とはクワールさんの言葉で、旦那狼の墓前で手を合わせている俺の肩を叩きながら言ったものだった。


 森の一角に弔った大狼達の墓は河原が見える場所にあり、川のせせらぎと鳥の鳴き声は今では鎮魂歌となっていた。


 ピイッー! と鳥が一段と大きな鳴き声を上げた。サビの部分だと思われた。


 俺はその一小節を聞き終えると、もう一度親友の墓に手を合わせてから振り向いた。


「はい、戻りましょう!」


 と返事をしてから、隣で屈んでいるアリスに声を掛けた。


「おい、アリス戻るぞ」

「お墓……なんだか寂しいわね。お花を供えたいわ!」

「そうだな……。明日にでもショッピングモールの周りで摘んで持ってくるか」


 赤ちゃん狼も連れて来てやろう……。


 と頭の中で補足しながらクワールさんの元まで歩いていると、アリスの周りを飛んでいるチルフィーが声を上げた。


「お花畑のを摘むであります! 摘む時にあたしが風の舞をすれば、枯れにくくなるであります!」

「マジか、それは凄いな」


 俺が素で驚きながら言うと、俺の頭上に着地してから続けた。


「更に風の舞に風の加護を合わせれば、あたしの奥義が発動するであります!」

「奥義……おお、どんなのだ?」

「発動すると思われるであります! 特訓中であります!」

「そうか……じゃあ完成したら教えてくれ」


 可憐な風の精霊であるチルフィーの舞を楽しみに思いながら、俺は荷台を引いてクワールさん達の後に続いた。アリスはそのクワールさんの荷台に乗せてもらっており、レリアや周りの村の人達と仲良く話をしていた。


「みんな手伝ってくれて意外と早く終わったな」


 隣を歩くアナに言うと、進行方向に落ちている太い枝を取り除いてから振り向いた。


「村人も大狼を森の恩人と思ってるんだろう……実際、その通りだしな。村人は今回の件で大分意識が変わったみたいだ、領主代理が寄越した兵士達に村の防衛手段を聞いていたぞ」

「そうか……。でも暫くは村に兵士を配備してくれる事になったんだろ?」

「こんな事があった後だからな、流石に見て見ぬふりは出来ないんだろう。……領主代理は死霊使いの事やファングネイの兵士が死亡した件のファングネイ王国側への説明責任に狼狽していた」


 そう言うアナも付き添うように言われているようで、この後すぐに領主の街へと戻る事になっていた。


 死霊使いであるレリアの従者も一緒に連行されるようで、今は村でミドルノームの兵士に捕らわれていた。

 俺は前回のように賊に襲われて容疑者が死亡するという事態を懸念していたが、そこはもう領主代理達に任せるしかない。


「結局、わたしはショッピングモールの視察には同行出来ないな。またレリアを頼むぞ」

「視察か……。レリアとボルサが来るのは良いけど、領主代理の甥まで来るのがな……。あ……ってかレリアと言えば、俺この間、金獅子のカイルに会ったぞ」


 何気なく言うと、アナは予想以上に驚いた表情を浮かべた。


「本当か……? どこでだ?」

「ショッピングモールでだ。会ったってか、襲われた。まあ変装してたし、なにより本人を見た事がないからカイルとは言い切れないけど」


 俺がその時の状況を詳しく話すと、アナは当てていた手を口から離した。


「金髪の凄腕幻獣使いで、身長はウキキ殿より少し大きい程度か……。なにより、変装しているところがカイルっぽいな……」

「決め手はそこか。でもなにしに来たんだか……メモを残したかったっぽいけど」

「まあ、カイルは超人であると同時に変人だからな。奴が考えている事は誰にも理解できん……。それより、レリアにはその事を言うなよ?」

「え? なんでだ?」


 俺が聞くと、アナはアリス達と一緒にだいぶ前を歩いているレリアに目を向けた。荷台の車輪が山道でガタッと揺れた。


「取り乱して追いかけると言いかねん……。あいつのカイルに対する想いは相当深いものがあるからな」

「なるほどね……」


 俺が納得していると、アナは再び口を開いた。


「さて、尋問は以上だが……。最後にもう1つだけ聞こう」

「尋問だったのかよ! ってか、尋問らしい事なに1つ聞かれてないぞ!」

「構わん、既にわたしはウキキ殿とアリス殿の事を味方だと思っている……だが、これだけは聞いておかねばならん。……お前らは何者だ?」


 アナの問いに、俺は少しだけ間を作ってから答えた。


「お前達の友達であり、仲間だよ」

「……そうだな、知っている」


 アナが少し不器用に微笑みながら言うと、前方でクワールさんの荷台に乗って目を輝かせているアリスが振り返ってから山道を指さした。


「そこに窪みがあるから気を付けるのよ!」


 俺とアナは、同時にアリスに向かって了解の合図を送った。


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