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俺とアリスの異世界冒険手帳~ショッピングモールごと転移したのはチートに含まれますか!?~  作者: 底辺雑貨
二部

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68 覚悟

 後方からは10を超える死ビト、そして屋根の上にはアラクネと無数の小蜘蛛。


 その状況を把握すると、俺は短く逡巡した。


 そして叫んだ。


「全員、集会所の中に逃げろ!」


 既にアラクネから産まれた小蜘蛛は屋根から跳んで迫っており、その先陣に向けて俺は腕を薙ぎ払った。


「出でよ狐火!」


ボオオォォォ!


 数体の小蜘蛛が空中で発火した。そのまま落下して燃え尽きるのを待たずに、俺達は引き戸を開けて集会所の中に入った。


 どうする……?

 どう立ち回れば村の全員が生きてこのピンチを乗り越えられる……?

 このまま集会所の中で大人しくしてれば、そのうち蜘蛛も死ビトもいなくなるか……?


 甘い希望を俺は抱いた。

 次の瞬間、その希望は打ち砕かれた。


「死ビトが引き戸を打ち破ろうとしてますよ!」


 レリアの従者の甲高い声が玄関先で響いた。


 ガンガンと激しい音を立てて引き戸が揺れた。

 木製の古い引き戸は頑丈な造りのようだが、いつぶち破られてもおかしくはなかった。


「死ビトって、こんなアグレッシブに扉を壊そうとするのか!?」


 激しく揺れる引き戸に手を当てながら聞くと、ボルサが槍を構えながら答えた。


「進行方向に障害物があれば珍しくない行動ですが、これは明らかに一直線に我々を狙ってますね」


 つまり珍しい行動って事か……くそっ……!

 まずは死ビトをなんとかしないとか!?

 でも先にアラクネを倒さないと、どんどん小蜘蛛が増えるか!?


 と、俺が次の行動を決めかねていると、ゴンザレスさんが叫びながら引き戸を開けた。


「死ビトはワシがなんとかするけんのう! ウキキはさっきの炎で蜘蛛をなんとかするんじゃ!」


 そう言うと、目の前の鈍器を振り上げている死ビトに前蹴りを浴びせ、槍を構えながら外に出て引き戸を閉めた。


「ゴンザレスさん! ……どうしますウキキ!?」

「やるしかねえ! ボルサはゴンザレスさんと一緒に死ビトを頼む! ……蜘蛛は俺に任せろ!」

「分りました!」


 ボルサはなんの迷いもなく、引き戸を開けて外に出ながら言った。俺は代わりに引き戸を閉め、次に後ろを振り向いて指示を飛ばした。


「クワールさんとレリアの従者はここで集会所を守っててくれ! もし中に死ビトや小蜘蛛が入って来たら頼む!」

「ああ分かった。だけどウキキ、あれはアラクネではないと思うぞ……。文献で見た事があるが、アラクネはもっと巨大なハズだ……」

「マジですか……。じゃあ、あれは中蜘蛛といったところですか……。とにかく、2人は集会所の守りをお願いします!」


 クワールさんには正直、高齢という事もあり板の間で隠れていて欲しかった。しかし、そう言っても聞かないだろう。

 2人は頷き武器を構えた。クワールさんは剣で、レリアの従者はボルサやゴンザレスさんと同じく槍を持っていた。


「わたくしはどうすれば良いのかしら?」

「レリアとソフィエさんは集会所の戸締りを見てくれ! どっから小蜘蛛が入って来てもおかしくない!」

「そんな……わたくしも戦えますわ!」

「お前、蜘蛛苦手なんだろ! いいから言った事を頼む!」


 少し強めに言うと、レリアは渋々ながら頷いた。

 その姿を見てアリスのように聞き分けなく付いて来る事は無いだろうと安心すると、隣のソフィエさんが俺の手を握った。


「ソフィエさんどうした? あ、前にアリスにやったバフをくれるのか!?」


 ずっと前に、ソフィエさんがアリスの手を取って光を伝えたバフのような魔法を思い出しながら俺は聞いた。

 その魔法は、アリスのキューブの重さを緩和するような効果があるものだった。


「バフ? あの光のおまじないの事を言ってるなら、違うよ。あれは重力に少しだけ逆らう手伝いをするだけ。私、戦う力も戦いをサポートする力も全然ないの」


 申し訳なさそうな表情をしながらソフィエさんは言った。そして差し出した俺の手にビスケットを1つ置いてからはドヤ顔に変わった。


「美味しいから食べて! じゃあ任務遂行してくる!」


 赤い髪を揺らしながらソフィエさんは集会所の廊下を走り、戸締りの確認に向かった。


「食べてって……これアリスがショッピングモールから持って来たお菓子だろ……」


 俺はそのビスケットを一口で食べながら言った。

 俺の苦手なヘビの形をしていたのは偶然だろうか?


「ウキキ様、アリスがいない間にウキキ様にもしもの事があったら、わたくしアリスに顔向け出来なくてよ。その事は承知していて?」

「当り前だ! ってか、なんでお前が俺の保護者代理みたいになってんだ、逆だ逆!」


 フィストバンプをしようとレリアに拳を向けた。しかし反応しなかったので、代わりに頭に軽くチョップをしておいた。


 そして勢いよく引き戸を開けた。


「動物クッキーうめええ!!」


 叫びながら、俺は引き戸を閉めた。





 外では既にボルサとゴンザレスさんが死ビトと戦っていた。


 2人とも中々やるようで――

 いや、俺がそんな上から目線で言うのもおかしいが、とにかく2人ともかなり戦いに卓越しているようで、死ビトを既に数体倒していた。


 特に驚いたのはボルサで、穂先が十文字になっている槍を見事に扱っていた。

 多少戦えるとは聞いていたが謙遜だったようで、ショッピングモールも無しに異世界転移してからの彼の10年間は伊達ではなかったみたいだ。


「やるなボルサ!」


 言いながら、俺は2体纏まって襲い掛かって来た小蜘蛛に向けて腕を構えた。


「出でよ狐火!」


ボオオォォォ!


 小蜘蛛を燃やし、集会所の屋根の上で再び小蜘蛛を産んでいる中蜘蛛に目を向けた。

 すると、死ビトと戦っているゴンザレスさんが大きな声を上げた。


「アレをなんとかせんと蜘蛛は増え続けるみたいじゃのう!」

「そうですね……あ、小蜘蛛は覆い被さって毒を注入してくるらしいので気を付けてください!」

「そうみたいじゃのう! さっきからちょくちょく襲って来よるわ!」


 ゴンザレスさんは持っている槍を派手に回しながら言った。


「ウキキがやらんのならワシがやるけんのう!」

「いや、俺に任せて下さい……ってゴンザレスさん後ろ!」


 油断が招いたのか、あるいは慢心が祟ったのか、ゴンザレスさんの後ろから素早く迫った死ビトの剣は彼の背中を襲った。


「ぐわあああ! ……なんのこれしき!」


 ゴンザレスさんは斬られた背中の痛みに耐え叫びながら、振り返って死ビトの頭部を槍で突いた。


「大丈夫ですか!」


 ボルサが聞くと、ゴンザレスさんはもう一度槍を派手に回して宣言した。


「手助け無用じゃけのう! ボルサもウキキも自分の敵を倒す事に集中するんじゃ!」


 俺の敵か……!

 よし、死ビトも小蜘蛛も任せて、俺は中蜘蛛をやるか!


 屋根の上で小蜘蛛を産み続けているのはアラクネではなく中蜘蛛。

 その事実は、俺が描く勝利のイメージをより鮮明にした。


「出てこいや木霊!」


――出たで ――そうやで ――中ボスやでっ


「その通りだ! 中蜘蛛なんてただの中ボスだ!」


 自分に言い聞かせながら叫び、木霊の階段を屋根の上に向けて配置した。


 アラクネならとにかく、中ボスなんて瞬殺してやる……!

 アリスが戻って来るまでに一匹残らず焼き尽くす!


 3体目の木霊から飛び跳ね、俺は子を産んでいる中蜘蛛に向けて右腕を構えた。


「戻れ木霊! ……出でよ鎌鼬!」


ザシュザシュッ!


 あるいは、斬り刻んでやる!


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