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俺とアリスの異世界冒険手帳~ショッピングモールごと転移したのはチートに含まれますか!?~  作者: 底辺雑貨
二部

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49 あなた、誰

 俺は夢を見ていた。


 そこは空気のない宇宙空間だったが、夢の中なのでそんな事はお構いなしだ。


 俺の真下にはとてつもなく大きい球体があった。それは地球のようにも見えたが、俺の知る外から見た地球とは少し違っていた。


 その惑星に、ややこじんまりとした星が近づいて来た。

 そのまま進むと衝突するんじゃないかと俺が危惧していると、まさにその通りとなった。


 惑星は一部を砕かれ、その砕かれた欠片はビデオの早送りのような速さで惑星の周りを回り続け、俺が瞬きを一つ終えた頃には惑星の周りに浮かぶ新たな星となっていた。


「俺とアリスが転移した惑星の月の誕生……かな」


 夢の中なので宇宙空間でも喋れるし、暗黒物質を伝って自分の声が鼓膜にも触れるようだ。


 どうせ夢ならこのまま宇宙の果てを見物しに行こうかなと考えていると、まだ見どころはあるよ! と言わんばかりに誕生した月が爆発し、その破片が惑星へと落ちて行くなか、なんとか宇宙空間に留まった欠片が再び惑星の周りを回り続け、今度は3つの月となった。


 その光景に感嘆の言葉を漏らしていると、突然声が聞こえた。


「あなた、誰?」


 その言葉の主は、突然俺の目の前に現れた銀髪の幼女のものだった。


「誰でもいいけど、リアを助けてあげて」

「リア? リアって誰だ? ってかお前こそ誰だ?」



 俺は疑問符とともに夢から醒めた。


 目の前にいるのは銀髪の幼女ではなく、黒髪のアリスだった。


「起きたのね!? よかった……!!」


 どうやら俺は噴水の元でアリスに膝枕をされているようで、頭の下に未発達なふとももの感触を感じた。

 それは俺の想像するソフィエさんのような成人女性の心地よい感触ではなかったが、まあこれはこれで悪くはなかった。


 しかし、俺の顔を覗き込むアリスは涙を滴らせており、俺の顔の至る所がアリスの涙と思わしき水分で濡れていた。


「……お前、涙は100歩譲って良しとしてやるけど、鼻水は勘弁してくれ」


 俺は垂らされた細い無色の鼻水を緊急回避し、上半身を起こした。


「痛っ……」

「まだ駄目よ! 大人しく寝ていなさい!」


 アリスは俺の頭を両手で掴むと、再び自分のふとももの上に置こうと強引に引っ張った。


ゴキッ……


「いてっ……急に人の頭を変な方向に引っ張るな! 今、整体師的な音がしたぞ!」

「整体師なら体にいいって事じゃない! いいから大人しくしなさい!」


 俺は観念し、アリスの手が導く通りに頭を動かしてふとももの上に乗せた。


「……ごめんなさい。私、あなたに酷い事を……」

「アリス! あれは全面的に俺の不注意が招いた事だ。お前が気に病む事はねーよ」

「でも私……」

「いや、マジでもっと考えて初使役するべきだった。青鷺火の効果でああなったんだから、それを使役した俺の責任だ。……ってか、お前は自力で殺意から逃れたじゃねーか! 助かったよ」


 暫くの間、沈黙が訪れた。

 俺はアリスの笑顔が見たく思い、その沈黙を破った。


「まあ、あの勝負は俺の勝ちだ。2回は勝つチャンスがあったのに見逃してやったからな。実質俺の圧勝だ」

「なによそれ! どう考えても私の勝ちじゃない!」


 アリスは笑顔ではなく、ムキになって言い返すタイプの表情になった。


 その、俺の好きなアリスの表情ベスト10にランクインされている好戦的ながらも人懐っこい表情を見つめていると、チルフィーがなにかを持って飛んで来た。


「気が付いたでありますか! 飲み物を取って来たであります!」


 チルフィーがアリスの膝元に置いた飲み物を見ると、ペットボトルに入ったお茶だった。


「ああサンキュー。これチルフィーにはかなり重かっただろ」

「風の加護でヘッチャラであります!」

「ああ、なるほど……って、そういやどうして俺無事なんだ? 気絶した後に自力で噴水の水を飲んだんか俺?」


 そう聞くと、アリスとチルフィーは顔を見合わせた。


「おい、まさかとは思うが、狼みたいに口移しで俺に飲ませたんか……?」

「違うわよ! ……まあどうしようも無ければそうしたけれど、私が手にすくってあなたの口に運んだのよ! あと包帯も巻いておいたわ!」

「そっか……開いた風穴も塞がってるみたいだし、噴水の水の治癒力半端ねーな……。あれ、じゃあどうしてお前ら意味ありげに顔を見合わせたんだ?」

「噴水に浮いてる丸い葉っぱの欠片も、一緒に飲ませてしまったのであります!」


!?


 それを聞いた瞬間、喉に違和感を覚え、俺はアリスのふとももの上で顔を横にして嗚咽をした。

 その際にアリスの黒タイツが少しだけ濡れたが、まあそれは気にしないでおこう。


「なにしてくれてんだお前ら……くそ、出て来ないから飲み込んじゃったか……?」

「ルナリアって花の葉っぱだったかしら? 綺麗な色の丸い葉っぱよね」

「ああ、確かルナリアだったな……リア……? あれ、語感に覚えが……」


 俺は先程の夢に出て来た幼女を思い出し、その夢の内容をアリスとチルフィーに話した。





「不思議な夢ね……。と言うか、あなたのロリコン疑惑が確信へと変わったわ。銀髪幼女って」

「誰がだ! 夢の中の登場人物に文句を言うな!」


 俺は未だアリスに膝枕をされていた。既に腹部の痛みは引いていたが、相手がアリスとはいえミニスカートに黒タイツでの膝枕が捨て難く思えてきた。


「ん? お前よく見たらなんで猫耳なんだ?」

「やっと気が付いたのね、サービスよ! あなた猫耳の愛い女の子が見たいと言っていたでしょ?」

「猫耳娘の夢を見るとは言ったけど……お前自らか」

「夢より現実の方がいいじゃない! ほら尻尾もあるのよ、可愛いでしょ!」


 俺が顔を横に向けると、アリスは黒い尻尾を振って俺に見せてきた。


「確かに客観的に見て可愛いけど、そんなもんどこにあったんだ?」

「雑貨屋よ! 他にもコスプレグッズが沢山あったわ!」

「ああ……そんなテナントあったな……」


 チャイナ服やらメイド服やらセーラー服、それに怪しいマスクや仮面などが色々と陳列されていた店内を思い出しながら俺は言った。


「その隣に靴屋さんがあるから、あなた新しい靴選んだら? その、汚物? いい加減履き替えなさいよ」

「ああ、あったな。確かに履き替えようとは思ってたけど、めんどくさくてそのままだったわ」

「じゃあ一緒に選んであげるわ! その前になにか食べ物を取って来るから、ここでお昼にするわよ!」


 アリスはそう言うと、俺に膝枕をしているにもかかわらず急に立ち上がった。

 油断していた俺は、そのままアリスが座っていたタオル越しの石畳に思い切り後頭部をぶつけた。


「あなたはそこで寝ていてちょうだい! チルフィー行くわよ!」

「了解であります!」


 後頭部をぶつけてもがいている俺を気にせずに、チルフィーを頭に乗せたアリスはジャオンへと走って行った。


「ああ……ミニスカ黒タイツ膝枕が行ってしまった。ってか、後頭部いてえ……」


 石畳の枕は、もの凄く硬かった。





 簡単な昼食を終えた俺達は、アリスの言う通り靴屋に入り俺の靴を選んでいた。

 今までは底の擦り減ったスニーカーだったが、これからの事を考え丈夫な物をと考えていた。


「これどう? カッコいいわよ? これにしなさいよ」

「おお、よさそうだな」


 入店してから4秒でアリスに決められた黒いブーツを手に取り、サイズを確認した。

 

「ピッタシだな」

「履いてみたら? 私履かせてあげるから、そこのイスに座ってちょうだい」


 アリスに促されるままイスに座り履いていた靴を脱ぐと、片膝を突いたアリスが俺の足に選んだブーツを履かせてきた。

 猫耳アリスはサービスが良いなと思いつつ立ち上がって動き回ってみると、見た目の割に軽くて動きやすく、くるぶしも隠れているので山道でも安全そうだった。


「最高だな。これにするわ……って、高いな……3万越えかよ」


 値段に驚きながら再びイスに座ると、再び片膝を突いたアリスが急に俺の手を握って来た。


「なんだどうした?」


 するとアリスは黙ったまま、握った俺の手で自分の頬を叩きつけた。


「おい……なにやってんだ大丈夫か!?」

「痛いじゃない! 普通グーで殴る!?」

「自分でやったんだろ! ……俺のケガを気にしてるんだったら、もう痛くねーから大丈夫だっての」

「……本当にごめんなさい。私があなたを傷付けるなんて……」

「……大丈夫って言ってんのに……まったく」


 俺は立ち上がり、俯いているアリスの頭に手を置いた。

 擦り減ったスニーカとブーツのコラボレーションなので、若干スニーカーが浮いたが気にしなかった。


「すげー痛かったよ……死ぬかとも思ったわ。けど、お前が正気に戻って俺に水を飲ませてくれたから俺は助かった。それと今のでチャラって事でいいだろ?」


 良くないらしい。アリスは俯いたままだった。


「……じゃあ、今から本気でお前にビンタだ。それでチャラにしてやる、覚悟が出来たら顔を上げろ」


 空気を読んだのか、アリスの頭の上にいたチルフィーが俺の頭の上に移動した。それと同時に、アリスは涙を溜めている目を瞑ったまま、ゆっくりと顔を上げた。


 その瞬間、俺は思い切り振りかぶり、そのままアリスの頬に手のひらを添えた。

 そして首に掛けていたタオルをもう片方の手で取り、零れ始めた涙を拭った。


「どうだ、俺の紳士的ポテンシャル。……笑えよ、泣きたい時こそ笑ってごらんって昔CMでやってたぞ? もしまだ自分を責めてるなら、お詫びとして俺の大好きなとびっきりの笑顔を見せてくれ」


 アリスは暫く黙っていた。俺もチルフィーも黙っていた。


 そして黙るのに飽きた頃、アリスはゆっくりと目を開け、俺の目を見つめてから微笑んだ。


「ああ、それだそれ。その泣いた後のお前の笑顔」


 溢れる涙と笑顔のコラボレーションを見つめながら俺は言った。それは、俺の一番好きなアリスの表情だった。


「……ありがとう!」


 アリスは尚も涙を溢れさせながら、とびっきりの笑顔で言った。次の瞬間、その笑顔が怪訝な表情に変わった。


「……ちょっと待ってちょうだい、そのタオル、噴水の元で敷いていた物じゃない?」

「…………えっ!?」


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