表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/246

護衛編 行方不明

 エリアス様に散々説得され、不承不承付いて行くことになった。エリアス様の話では、ビサ様に言えば何か協力してくれるらしい。

 だけれど。


「そんな事、どうだっていいんですよ」


 私が言った言葉は誰にも聞こえなかったらしい。それでもいい、これを聞かれたら変に勘繰られるだろう。

 実際、私が直接捜した方がずっと効率がいい。跳び回り、彼女の跡を追って捜す。

 猫族の少年は既に別れていた。カーティス様は、部屋で探るらしい。

 つまり、ミルヴィア様を捜しに出たのは私とエリアス様だけだった。


 もし誘拐されていて、もし震えていたのなら。

 その誘拐犯、どうしてやりましょう。痛みの限りを与えた後、最終的には地獄を見せてあげるとしますか。

 一瞬で逝かせてあげますなんて、格好の良い事は言いません。

 一瞬で逝かせるなんてとんでもない。持つ知識を総動員して苦しませましょう。


 でもその前に、ミルヴィア様を見つけ出す必要が――


「……ユアン、さん?」


 気が付くと、エリアス様と庭で立っていた。そして、鋏を手にしたコナー様がこちらを見ていた。それさえも、今はどうでもいい。

 おそらく、今私の心を動かすものは、無いのだろう。


「え……っと、随分、遅いですね。僕はこれから帰るところ、なんですが」

「そうですか」


 我ながら、かなり無関心な声が出ただろうと思う。

 エリアス様が何か言いかけ、止め、を繰り返している。コナー様は、武術の心得がなくとも、今の私の様子がおかしい事に気が付いたらしく、キョロキョロを辺りを見渡した。

 そして、気付く。


「あれ?ミルヴィアは?」

「……」


 私もエリアス様も、何も言わなかった。エリアス様が、私に何も言うなと言ったのだ。

 それに従えるなんて、今の私は相当混乱していますね。


「ユアンさん、ミルヴィアは?」


 無邪気に、コナー様が聞く。どう思っているのでしょうか。

 ただ単に一緒にいないだけだと思ったのか、それとも異変に気が付いたのか。


「あの……?」

「ミルヴィア様は、居ません」

「居ない、って?」


 コナー様は首を傾げた。エリアス様は、何言ってるんだと私の背中を叩く。

 いいでしょう、どうせ、いつかばれるんですから。


「居ないってどういう事ですか、ユアンさん」


 コナー様の目が鋭くなる。怒っているようであったし、悲しそうでもあった。どちらにしろ、関係ない。エリアス様はいよいよ焦っているようだった。


「なあ、庭師。そこらへんで止めないか」

「どうしてですか。僕はミルヴィアが心配です」

「うん、まあ、そうなんだろうが……」

「あなたも、子供の前じゃ普通じゃいられませんか」

「黙ってろ、お前は!」

「言いましょう、ミルヴィア様は攫われました」

「っ!」


 二人が息を呑む。

 コナー様は、最早怒りを隠さなかった。私を思い切り睨み、拳を握って震わせている。


「ミルヴィア……が」

「そうです」

「あなたが守るんじゃ、なかったんですか」


 今にも手に持つ鋏で切りかかって来そうな危うさが、コナー様には見られた。

 それでも私は謝りません。私だって、今は気が立っているのですから。


「守れませんでしたね」

「――ッ」

「やめろ」


 コナー様が、私に向かって来ようとする。それも、エリアス様に制止され、ギリギリで抑え込んだ。そこで抑え込めるのは、恐らくあの子は慣れている。

 いい機会ですから、実力を見てみたかったのですが。まあ、仕方ありませんね。

 何もかも、ついでですから。


「あなたが、守るって言ったから」

「はい?」

「あなたは、ミルヴィアを守ると、誓ってました」


 なんだ、見られていたのですか。


「悪癖ですね」

「そうですね」


 コナー様は言い返さず、私を睨み付けた。睨まなくてもいいでしょう。

 そう思うのは、私がコナー様を見て、逆に冷静になって云ってるからだと考察する。

 もちろん、犯人を赦すつもりはありません。


「だから大丈夫だろうと――完全に、失念してました。僕がもっと早く気付けてれば」

「気付けませんよ。あなたは情報に疎い」

「ミルヴィアが出て行った事は知っています。帰ってないのも知ってましたが、ユアンさんが居るのでどっちにしろ大丈夫だろうと……それなのに!」

「情報通か。お前、そうなのか?」

「黙っててください!」


 エリアス様が反応したけれど、コナー様が叫ぶ。エリアス様は素直に黙った。これ以上喋ると危険だと思ったのでしょう。


「僕は……僕が……」

「エリアス様、行きましょう。もう無駄です」

「お前、本当にあいつ以外興味がないんだな」

「興味がないわけでは無く、優先順位ですよ」


 歩きはじめる。ビサ様がまだ訓練場に居ればいいのですが……。


「どこ行くんですか」


 コナー様が凄む。まったく迫力はないが、呼び止められたので足は止めた。エリアス様も足を止めて、首を傾げた。


「どこ、とは」

「僕が捜した方が早いです」

「ビサのところへ行くつもりだが」

「ああ……あの人のところですか。あの人は訓練場にはいませんよ、多分。さっきここの前を通ったので……大衆食堂にでもいるんじゃないですか?」

「なるほど。情報、感謝する」


 エリアス様はそう言うと、歩きはじめた。私もそれに続く。

 その時のコナー様の目を、見逃したわけでは無かった。

 

 闘争心に満ちたあの目を、私が見逃すはずがない。


閲覧ありがとうございます。

今回はユアンの心情が少なかったんですけど、それだけユアンが混乱してるって事です。

次回、ミルヴィアが攫われたので、神様達も騒ぎます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ