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79 人攫い

 狐ちゃんが攫われてる。

 考えられる状況は二つ。

 一つ、狐ちゃんが自分で付いて行ってる。

 でも、これは暴れてる様子を見るにそうじゃなさそう。

 一つ、力及ばず無理やりに連れて行かれてる。

 うん、こっちの方が可能性としては高そうだね。三つ目の状況に『少年が売った』ってのもあったんだけど、有り得ないな。あの二人が仲間割れ?それが起こるくらいなら、天変地異なんて何度も起こってるよ。


「ふうむ」


 私は取りあえず、ポケットから鈴を取り出す。いつだったか少年からもらったものだ。

 私はそれを振りかぶる。鳴らなかったら呼べたことになるんだっけ。

 それを、思いっきり地面に向かって放り投げる!

 

 鳴らないな。よし。

 急降下――うおっ、さすがに怖い!

 鈴を掴み取り、一気に上がる。うーっ、怖い!

 なんとか空高くまでに上がる事に成功した。近くの雲にうずまり、顔だけ出す。うわあ、これ外から見たらかなり不気味だろうなー。

 

 上空から、狐ちゃん達に影が当たらないようにしながら絶妙な角度で飛行を続ける。たまに左右にぶれたりして、見つからないように対処。なるべく雲の上を飛行、誰にも見つからないように。

 本当なら、このまま直滑降のように降りてって狐ちゃんを助けたいところ。

 だけど、戦闘になるのは頂けないんだ。なにせあの人達、武器を持ってる。多分魔導具だと思う。だとすると、まずいんだよねー。あれには対抗できる自信がない。


 悔やみながら、雲から雲へ移る。ユアンを呼んでもいいんだけど、今から戻るとあいつらから目離す事になるからなー。

 ったく、厄介な時に遭遇したものだよ。って、え!?雲が無くなってる!

 まずいまずい!

 慌てて風で雲を集める。っつー、雲の進行方向と真反対に行くんだもんな。


 しばらくそれを繰り返す。上手い具合に裏路地伝って行ってるな。

 にしても、少年遅くね?

 と思ったところで、気が付いた。


「ここ空だ――!?」


 来てくれるはずがない!来れるはずがない!

 やっば、ついユアンが来れるんだから少年も来れるだろうという前提で進めてた!来れないとしたらかなり状況が異なる!

 ていうかユアンも、雲がある高さまで来れるかどうかは分からない。来れないでしょ。

 誰も来ないなんて、今の状況では一番厄介だよ。


 方法としては、倉庫かどこかに連れて行かれた時、超特急で訓練場に行って(ここからだと訓練場の方が近い)ビサを連れて来るか、家まで戻って(遠いけどビサより強力な応援が来る)ユアン連れて来るかのどっちかだな。

 第一にそこから狐ちゃんが動かないって条件がつくけど、大丈夫でしょ。ああいうのは慎重な人が多いから……。


 そう思いながら、考えながら雲から雲へ移動。うーむ、どこまで行くつもりだろう。早く移動を済ませてもらわないと、困るんだけ、ど……?


「やばっ!」


 急降下。これはまずい!

 狐ちゃんが乗せられそうになってるのは馬車だった。これ以上遠くに行かれちゃったら、帰路が分からなくなるかもしれない。何より戻ってまた来るの繰り返しがキツイ。

 ええい、もう魔導具だとかどうだとか言ってる場合じゃない。狐ちゃんが危ないんだから!


「そこの誘拐犯、待てー!」

「!?」


 空からキック、というより乗っかる。頭に。次に狐ちゃんを抱えてる人に氷塊を向ける。でも殺さないっていう加減が難しい。次に狐ちゃんを抱えて、戦線から離脱させる。とりあえずこれで逃げ――っ、来た!?

 飛んでくる魔導具による攻撃を避け、弾き、応戦する。きっつ!

 あの魔導具、かなり高価だよね?それに、どうして魔導具で不言魔法を使わないんだろう。

 そこで、ピンときた。


 こいつら、人族だ……!


 だから魔族の中で魔法を使えないんだ、人族だってばれるから!大体の魔族は、この人達の年になれば不言魔法が使えるから!


「人族が魔族領で暴れるな!」


 魔族は、皆口をそろえて言うんだ。人族を恨んではいない。攻撃するつもりもない。

 あちらから手出しして来ない限りは、と。

 そんな人達の平和を願う気持ちを無碍にして!ちょっと状況的に厳しいけど、ここは土魔法で『土壁』を造って逃げ出すしかない。詠唱が必要だけど、今はそんな事言ってる場合じゃ


 バチッ


 電気のような音が聞こえ、私は首筋を抑えて蹲る。


「まお……」


 狐ちゃんが驚きの声を上げる。私は身動きが取れなくなって、荒い息を吐いた。

 

「っ……」

「ったく、こいつ。チッ、もういい、こいつも縛れ!見られたからにゃあ生かしては帰せん!」

「はっ!」


 縛る手つきが慣れてる。それに……


「登場三十秒でやられるとか、魔王、何しに来たの」

「デスヨネ」


 ほんっと、面目ない。でも、一応口は利けるらしい。恐怖に怯えてたりはしてないか。それとも私が来て安心してくれたのか。

 まあ、私も狐ちゃんが居るならまあいいか。

 そして、男たちが馬車の準備を整える。その間に、狐ちゃんが何やらムニャムニャと詠唱した。


「この者と我は繋がり……思考を共に分かつ……我思う時この者思う……以心伝心」

「……!」


 感覚的に、何かが分かった。強いて言うなら、糸をピンと引っ張った時みたいな。そして、狐ちゃんが荒い息を吐いていた。

 あ、これ魔力枯渇の時じゃん。やば。

 急いで魔力注入を行う。魔力注入は成功したのかどうか分からないところがネックなんだけど、息が落ち着いてきたことから考えると成功したっぽい。


 でも、何やったんだろう。狐ちゃんは魔力総量が少ないはずだから、よっぽどの事だったんだろうとは思うけど、あの詠唱聞き覚えなかったなあ。


「おいてめぇら、暴れるんじゃねえぞ。暴れた毎に大人しい方殴ってくからな」

「おお怖い」


 私が茶化すように言うと、男が私を殴って来た。おい、今のは狐ちゃん殴るんじゃなかったの?まあいいか、状には流されやすいっぽい。

 え?痛くないのかって?へーきへーき、すぐ治っちゃうから。狐ちゃんが攻撃されそうになったらバリア張るつもりだったよ。


「おい、早く縛れ」


 ん?縛ってるじゃん?と思ったら、麻縄に何か嵌められた。狐ちゃんもだった。なんだろうと思って実験のために魔法を使おうとしたら、魔力が蒸散する。

 まさか昨日の夜に受けたユアンの魔法を込めた魔導具?

 これは、マジでやばい。詠唱したらどうにかなるかもだけど、敵に今から何やるのかを教えてやるほど優しくはないし。


「おいおめぇら!早く口塞げ!こいつは魔法タイプだ!」


 ですよねー。私が魔法派なのは髪の色を見れば明白だし、短剣も取られちゃったし。

 猿轡を噛まされる。これじゃあ狐ちゃんと会話できないじゃん……。


『以心伝心、なの』


「むぐっ!」

「うるせえ!」


 殴られた。ちょっとおい、騒いだらもう片方殴るって言ったのそっちじゃん。完全に忘れてるじゃん。まあ都合がいいからいいんだけど。吸血鬼の治癒能力は治癒魔法じゃない。完・壁!

 にしても、なるほど、さっきの以心伝心の効果が分かった気がする。


『テレパシー』

『てれぱしーとはちょっと違うの。それは術者から違う人へ一方的に送るだけだけど、この魔法は術者と会話ができるってものなの。出来損ないと一緒にしてくれちゃ困るの』

『出来損ないて』

『狐族の秘伝の魔法、「以心伝心」。それを人族がぱくったの……!』

『オオゥ……』


 まあ、こんないい魔法人族がほっとくはずないしね。しょうがないけど、まあ秘伝をパクられたら誰だって嫌だもんねー。

 納得しながら、男達に蹴られるまま馬車に乗る。おのれ、あとで許さない。ユアンが。

 馬車に乗り込み、私達は横並びになった。その両サイドを男達に挟まれる。この馬車広い。まさか上級風魔法『異空間』を使ってるの?


『で、少年が来ないね。ごめん、空で鈴鳴らしちゃったから、来れないかも』


 降りる前にもう一回鳴らしときゃあ良かったな。

 そう思ってたのに、狐ちゃんは悲痛な表情で言った。


『来ないの』

『ふぇ?』


 狐ちゃんは覚悟を決めるように一回息を吐いた。


『お兄ちゃんと私は喧嘩して――お兄ちゃんは今、鈴の音が聞こえる「対の鈴」を捨ててるの』


 ちょっと待って。

 少年は来ない。じゃあ、私達どうなっちゃうわけ?

閲覧ありがとうございます。

ええ、案の定ミルヴィア捕まりました。

次回、狐ちゃんと少年が喧嘩した原因を馬車の中で話します。

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