51 久々に夢
私の一週間の予定をご紹介しましょう。
午前八時:起床、身支度
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午前九時:ビサと訓練
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午後一時:訓練終了帰宅
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帰宅次第:勉強(魔族の貴族制度について)
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午後二時:ダンス
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午後六時:ダンス終了
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夕食まで:勉強(魔法の仕組みと発動)
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午後七時:夕食
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午後八時:庭で魔法の自主訓練
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午後九時:入浴
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午後十時:就寝
これを見て思う事。
自由時間が一分もない!
なにこれ冗談だよねって言いたくなるよね!おかげで最近飛んでないし本読んだりしてないんだよ!しかも魔力の可視化のトレーニングに費やす時間もないしね!
睡眠時間だけしっかり確保されてるっていうね。しかもどう考えても就寝時間が五歳児のそれじゃない。魔法の自主訓練も、ほとんどユアンと一緒で、全然楽しめなかったしね。
そんで今。
今、明日が舞踏会で、ビサとの訓練はお休み。エリアスとのダンスの練習中であります。
シャラン……
綺麗な余韻を残して、曲が終わる。
私は最高難度のステップをマスターしたのだ!えっへん!
大変だったよ。エリアスの足踏ん付けたり踏ん付けたり踏ん付けたり。え、わざとやったんじゃないよ?無いったらない。決して、このスケジュールに不満を感じて当たったとかじゃない。
「ふう」
「ヒールも慣れたみたいだな」
「うん、もう余裕で踊れる。何ならこのまま戦える」
「それは……はしたないからやめろ」
「あれ、はしたないという概念はあるのねエリアス」
「…」
ガッ!
「うお!」
痛って!
脳天に肘鉄痛って!ひっで!酷くない!?
「ミルヴィア様、どうぞ」
「お、マドツ。気が利くねえ」
痛みをコロッと忘れて、マドツを頂く。んんー、美味しい!これは癖になる美味しさだよねえ……。
そうだな、ユアンは色々淹れるのが得意だし、今度レパートリー増やしてもらおっかな!色々知ってるはずだしね。何が良いかなー。疲れた後に効くお茶とか無いかな?
「そうですね、さっぱりしていて疲れた後に美味しく飲めるビース等はどうでしょう」
「ああ、いいね。それこそ舞踏会の後に飲みたいくらい――てなんで分かった!」
振り返って突っ込む。ユアンがこらえきれないとばかりにくすくす笑っていた。エリアスもぷっと吹き出している。苛め?ねえ苛め?
「二人そろって何なのかなー。もうちょっと私に優しく出来ない?」
「出来ませんよ」
「無理だな」
「その言い方どうにかして!?」
せめて言い方は優しくしてよ!
そう思いながら、もう一口マドツを頂く。うーっ、美味しい!なんかこの染み渡る感じが癖になるんだよねえ。
「あー、じゃあもう私寝るよ」
「お風呂はどうなさいますか?」
「さっと浴びてくる。ユアンは部屋で待ってて」
「承知しました」
「…」
私達のやりとりを、エリアスがじーっと見ている。何だろう、聞いたらロクでもない事言われそうだけど気になるなあ。
「エリアス、どうしたの?」
「お前達は夫婦か?」
「はあ!?」
予想の斜め上を行った!
私が叫ぶと、エリアスがにやりと笑う。う、激昂すると逆効果か……。
「部屋で待っててとか、お前ら、いつも一緒に寝てるのか?」
「え、ち、違うよ。ただユアンが寝るまで居るっていつも言うから、だから……」
「そうですね、寝顔はいつも見てますよ」
「うるさい黙っとけ!」
ヒールでユアンの脛を蹴る。それをやすやすと躱され、私の右隣まで跳んできたので拳を握ってパンチ――を、掴まれる。予想通り。掴まれた手を握り、そのまま引き寄せて腹に膝蹴り――と。
「ドレスが崩れてますよ、ミルヴィア様」
「ッ!」
いつの間にかユアンが後ろに回っていて、ドレスを整えていた。
こいつ……さっきから私を苛々させる事ばっかり……!
「いつも軽くケンカしているな」
「これが軽くに見えるなら、エリアス、眼鏡新調した方が良いと思う」
私はいつも本気ですよ。
ただこいつの機動力がハンパなくて一発も当てられないだけだよ。
「眼鏡を新調しても同じだろう」
エリアスは眼鏡の位置を調整しながら言う。嫌味ったらしいなーもう。
「じゃあね、エリアス。気を付けて帰るのよ~」
「気を付けなくても大丈夫だ」
「へへ」
あー、飛びたい。あの解放感、癖になるんだよねー。明日、舞踏会会場まで飛んで行こうかなあ……。まあお兄様かユアンに目立つからダメとか言われそう。あとビサって舞踏会来るのかな?
そうそう、ビサね。
そう、ビサ、ここ一週間ですごく腕が上がった。
どれくらいかって?そうだね、ユアン相手に五秒間打ち合いが出来るくらい。
これ、すごい事なんだよ?私でも八秒くらいだからね?私に関しちゃ、ビサ、もう互角くらいだよ?まあ勝つけどさ。前は喉に剣を突き付けられても笑って「さすが師匠」と言ってたビサが、悔しそうな顔で「もう一度!」と叫ぶんだから。
どっちにしろ、兵長だし来るよね宮廷。んじゃそん時ちょっと挨拶しようかな。
私はお風呂をササッと浴びて、部屋に戻る。
「お休み、ユアン」
「お休みなさいませ、ミルヴィア様」
そう言って布団を被り、一秒もしないうちに眠ってしまう。
ああ、今日も、大変な一日、だった、な……。
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んあー、何で起きちゃったんだろ、なんかベッドが固いし。
「おはよう。起きた?」
おはよう『私』。
ところで、ここはどこだい?
「分かり切った事を。元部屋だよ、元部屋」
「そうだよねー、でもさ『私』、いつの間に私ってあの水飲んだっけ?」
「前回の失敗を踏まえて、寝ている間に魔力を活性化させ、尚且つ魂がこちらに来ている間は魔力の純化を元通りにしておくという方法が出来た。つまりいつでもウェルカム」
「おー……」
でも、せめて予告はしてほしいかなー、なんて思っちゃったり?
それにしても、変わってないなあこの部屋。いつになったら買い手が付くんだろう。
「ねえねえ、ミルヴィアちゃん」
「なんだい、神楽ちゃん」
「いいね、その呼び名。これからは神楽と呼んで」
「嫌だよ。私も神楽だし」
「そもそも私の名前を使ってるだけでしょミルヴィア」
「じゃー、んん、愛発さん」
「しょうがないか」
そうそう。私はもう名字だけは無いからね。愛発でいいか。
「まあいいじゃん、とにかくいろいろ話そうよ。暇だったんだ」
「暇だからって呼ばないでよ。あ、待って私明日舞踏会だ。よし愛発、今すぐ帰せ」
「酷いな。大丈夫だって、私の過去に遡る能力使って来たときに戻してあげるから」
「お」
気が利くねえ。何だ、これなら長居できるじゃん?ラッキー、久々の人間界を楽しもうじゃないの。ああでも、精神的に疲れるんだよなあこの転移。
「ってわけで、あんまり長居できません」
「何が『ってわけで』なの。いいから話そう」
「そうだな、じゃあ今まであんた何してたの?」
「過去逆行して楽しんでた。徳川家康の性格、知りたい?」
「そこまで!?」
どんだけ逆行してんのよ!
したり顔で言わないでよ……。
「ミルヴィアは?」
「私は、そうだねー、ここ一週間は自由時間が全然なかったからねー」
「ああ。舞踏会って奴でしょ?すごいじゃん、出世したね」
「私は生まれながらにトップだから」
愛発と話してると、何だろう、私が魔族のトップなんだって実感するって言うか。
しっかりしなきゃって思うんだよねー、なんでだろ。やっぱり私前世の方がしっかりしていた?んー、日本以上に平和だから平和ボケしたんかな。前世では日本以上に平和なところがあるとは思わなかったもんなー。
「それにしても最近、ユアンさんとやけに仲いいじゃん」
「え、やっぱり愛発もそう思っちゃうんだ。ショック」
「そうかな」
愛発は何かを思い浮かべるようにしてから、頷いた。
「やっぱり楽しそうだよ、ユアンさん。妙に、何だろう、ベタベタしてるでしょ?」
「まあ」
「モテ期到来」
「違うよ!?」
「逆ハー形成してる人が、何言ってんだか」
「逆ハー?」
何言ってるの?
男の人って、ユアン、お兄様、エリアス、コナー君、少年、ビサ、だけ……
「だ、け……?」
「だけとは言えないねえ」
「まじか」
自覚なかったんですけど、まさか逆ハーとは。
まあ誰にしてもイベント発生有り得ないからあんまり意味ないんだろうけど。
「イベント発生なし?何言ってるの、ユアンさんはミルヴィアが好きだし、お兄さんも大好きだし、エリアスもでしょ?ビサは師匠とか言って慕ってるし、コナー君も許容範囲内じゃん。少年だって、友達でしょう?」
「ちょっと待って否定出来ない要素ばっかり入れないで?」
なんか本当にその気になって来ちゃうじゃないか。自惚れたくないんだよー私は。
「ユアンはからかってるだけだし、お兄様はお兄様だし、エリアスは私にあきれてるし、ビサは弟子、コナー君はただの友達、少年も同じく」
「そう?じゃあ誰と踊るつもりなの?」
「おど……踊る?」
「ヒール履いたら、誰でも背は届くじゃん」
「んん……」
踊るかあ。
考えてなかったな。練習ばっかりだったし、誰と踊るのかは、分かんないしなあ。
「私としては、コナー君がオススメ」
「コナー君使用人だもん。後腐れあるもん」
「じゃあエリアス」
「んー」
「お兄様は?」
「んんー」
「ユアンさんは?」
「んんんー」
ビサって手もあるけど、ビサは、うーん、そういう対象として見られてもって感じだし。
「そうだ、良い事教えてあげる」
「何?」
「夢魔退治、絶対ユアンさん連れて行きな」
「どうして?」
何を言うんだろうこの人は。まあ、どっちにしろ連れてく予定だからいいんだけど。
愛発は、私の前世では見せなかっただろう楽しそうににやりと笑った。
「絶対、面白くなるから」
その面白くなるって、観戦者だけ面白いやつじゃないですよね?
閲覧ありがとうございます。
愛発と神楽、分かれました。ダンスの相手はお楽しみに。
次回、舞踏会、です。




