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47 訓練

 翌日。

 私はビサの訓練のため、訓練場にやって来ていた。昨日はあのままぶっ倒れて寝ちゃったけど、あのプテラノドン(正式名称はヤンドランドと言うらしい)がどうなったかは、私は知らない。魔石とか、採られたんじゃないかなーとは思う。


 ビサの教育は、ユアンの剣術を真似ろうと計画してる。ユアンのあの勢い、生死を問わぬ戦いが合ってるビサにはピッタリだ。もちろん、巨体な分素早さは落ちるし小回りは利かなくなるだろうけど、そこらへんは踏み込みと隙を見せない気配りでどうにかすればいい。


「ってなわけでユアン、あんたの剣術教えるね」

「そこまで簡単に出来る事じゃありませんよ。私は二十年費やしてやっと完璧に使えるようになったんです。そう簡単に出来るようになってしまっては」

「だろーね。だから大本がユアンってだけで、あとは我流。それで十分だよ、ビサには」

「本音は?」

「流派とかわけ分かんないし調べるつもりもない」


 素直な私に、ユアンが苦笑する。しょうがないじゃん、流派なんて調べたって良い事ないよ。


「そもそもどうして流派なんて存在するのか自体が疑問だね」

「根本的ですねえ」


 そう、私は根本的に否定する女。

  

 一昨日と同じ訓練場で、ビサが私の指示を待ってる。うーむ、犬みたいだ。犬は犬でも警察犬、ドーベルマンだけど。ドーベルマンって飼い主に従順らしいじゃん?


「んじゃあ、素振りね」

「素振り?そんなのでいいんですか」

「いーのいーの」


 ビサはそこで、訓練場に常備してある木剣を構えた。

 そこで私はビサに、木剣ではなく長剣で素振りをするように言った。それを言った私に向けた、ビサの悪魔を見る目を私は忘れない。三分くらい。

 あ、そうだ、これ息切れした後で交戦したらどうなるんだろ。やってみよっかなー。


 見たところ、ビサの素振りに隙はない。ただ、相手が居るととたん緊張してしまうんだと思う。殺したくないがゆえに、殺してしまう可能性のある相手を前にして体が竦む。

 これ、もしかして、実戦経験積んだ方が良いんじゃないか?ああいや、殺すのに躊躇うんだから実戦なんて出来ないか。だからと言ってこのままじゃもしも戦争になった時に昇進どころか降格だよ。大見得切って始めたんだから、ちょっとくらい戦えるようになって貰わないと。


「止め」

「はい、師匠」

 

 師匠呼びもかなり慣れた。そして私は、勝手にユアンの長剣を拝借。


「ミルヴィア様……」

「まあまあ」


 呆れたような声を出すユアンに、私は苦笑してからビサの前に立つ。そして、構えた。

 私がさっき出した結論は簡単。

 殺してしまう可能性のある相手を見て怖気づく。なら、死なない相手が戦えばいい。

 簡単で、簡潔で、分かりやすい。


「来なさいビサ。私は全身全霊で相手する」

「はい、師匠」


 おっ?

 纏う覇気が変わった。ガラッと、戦場の雰囲気になる。

 ま、これでいいでしょ。


「――開始」


 最初に動いたのは、ビサ。ブン、という勢いのある音と共に長剣が振られる。それをまともに喰らう私じゃない。最小限の動きで避ける。なんとなく、昨日のプテラノドンを思い出させた。

 次は私のターン。私は避けられる事なんて絶対考えない。当てる、それだけの事を考える。そして、私の長剣はビサの脇腹に刺さった。もちろん、防具をしているから貫通しない。衝撃が来るだけ。つまり、衝撃は来る。

 一瞬怯んだビサに、畳み掛ける。ビサは致し方なく防御に回った。


 攻める。ビサの防御の弱いところを重点的に攻撃して意識させ、重心が傾いていたらその隙を狙う。手加減なんて含まない、師弟の争い。だけど。


「そのままじゃ、私の事を師匠なんて呼べないよ!」


 私は喋る余裕があった。ユアンの剣術を真似てるのは私も同じだ。つくづく、吸血鬼ってのは真似(コピー)が上手い。


「ならば!」

「っ!?」

 

 いきなり、私の攻撃を受けた剣が私に襲い掛かって来た。

 やばっ……チッ、回避!

 回避は嫌いだ、逃げているから。ビサは、逃げた私を追ってきた。すぐに、私の目の前まで迫った。


「呼ぶ事を許してもらうまで勝負を挑むのみ!」

「……!」


 今度はビサの猛攻。私はそこで風の可視化を行った。ビサの攻撃を、風の流れる方向に受け流す。受け流せばダメージはないけど、攻撃に繋げられない。くっそ、このままじゃ消耗戦で負ける!

 気力で負けるつもりは毛頭ないけど、体力では負ける。

 しゃーない、恨むなよ、ビサ!


 私はビサの攻撃を剣で受けず、ちょろっとだけ避けた。当然、勢いのあるビサの攻撃は私の右肩に当たった。そこから、私はビサの足元をすくった。右肩?痛いさ、だがそれがどうした。

 

 どうせ死なないんだから勿体ぶる事ないよね!


 シャアン!


 そうして私は、ビサの喉元に剣を突き付け、ビサとの勝負に何とか勝った。


 ……あ、私が変だって事は分かってるからね!

閲覧ありがとうございます。

諸事情で短くてすみません。ビサとの戦いでした。ビサは強いんです。強いんです。ミルヴィアが強すぎるだけで、ビサは兵長になれるくらいには強いんですよ。

次回、ミルヴィアの指導です。

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