表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/246

39 夢魔との談話

 ――降参するなら、今の内だよ!


 指を突き付けて言った私の言葉に、夢魔は目をパチクリした後頷いた。


「分かった。じゃ、話でもしようよ。ボク、君には興味あるんだよね」

「おや。おっけ、じゃお話しよっか」


 夢魔の話も聞いてみたいな。夢魔からお兄様の本音とか、聞き出せるかもしれないしね。

 私が了承すると、エリアスとユアンが信じられないという目でこちらを見ていた。おう…ちょっとその視線痛いな。結構痛いな。その感じ嫌いだな。


「ミルヴィア、考え直せ」

「ミルヴィア様、考え直してください」

「どーして二人はこういう時だけ息ピッタリなの。いいじゃん、負けないって。何か文句あるなら一緒に来れば?」

「というかどこで話すつもりなんだ」

「ん?ここ?」


 私はそう言って、金色のプレートが掛かった部屋を指差した。とたん、ユアンがガシッと肩を掴んでくる。

 痛いっ!さっきの視線とは違って、物理的に痛い!


「止めておいてください。ここはこの方のテリトリーです、下手に立ち入らない方が正解です」

「うん、分かった。分かったから肩から手を離せこの馬鹿」


 その気になれば手くらい逃れられたかもしれないけど、失敗した時のユアンからの報復が怖い。リアルに怖い。だから止めておいた。まあ、逃れられる確率は十分の一くらいだと思うしね!

 ユアンは手を離すと、心配そうな顔になった。


「ですが…やはり、どうあってもこの方と二人きりになるべきじゃないと…」

「は?何言ってんの?ユアンも一緒だよ?」


 あら。言った瞬間、ユアンがものすごい嫌そうな顔になる。嫌悪感を顕わにしたユアンって新鮮。しかもその顔もカッコイイ。


「例えユアンも一緒だとしても、三人で部屋に籠るべきじゃないと思うけどな」

「ん?何言ってんの?エリアスも一緒でしょ?」

「冗談言うな!何が悲しくてこいつらと同じ部屋に籠らなきゃならないんだ!」

「…」


 即座に反抗するのは、私の騎士かそうじゃないかの違いなのかな?まあどちらにしろ、二人の同席は変えられない。いいよね?と夢魔を見ると、仕方なさげに肩を竦めた。


「まあ、ね、いいよ」

「ありがとう、って言っとくよ、夢魔君」

「夢魔君って…ボクの事をそう呼ぶのは君くらいだ。いいんだけど、あんまりそうは呼ばないで。ボクの威厳に関わるから」

「威厳て…あなたに威厳なんてあるの?お兄様の威厳借りてるんじゃない?」

「嫌味らしい嫌味だね」


 だって私はお兄様の方が好きだもん。お兄様が一番だもん。

 …こう考えるのってなんでだろう。私、そこまでお兄様に固執する理由あったか…?後で調べてみなきゃ。あ、そう考えると話すのは三百四号室の方がいいのかもしれない。


「じゃ、やっぱり三百四号室にしよっかな。あそこなら私が見知ってるところだし、夢魔にも有利でしょ」

「ボクはカーティスの情報も共有してるんだけど…」

「まあまあ。早く。エリアス、拒否権はないよ」

「…っ分かった」


 …?

 エリアスは、歩き始めた私に大人しく付いて来た。なんで、だ?

 拒否権はないと言ったものの、私に服従を誓う身じゃないんだから当然拒否権はある。どうして悔しそうにしながら付いて来る?私とエリアスの間に、上下関係なんてない。さて、これは気になるな。探りを入れるってのもアリか?

 まー優先順位は限りなく低いけど。好奇心はあれど探求心なし、それが私。

 

 三百四号室への道すがら、男女問わず誰とも会わなかった。『魅惑』、人を惹き付けぬ力有り。夢魔としてはちょこっと残念さがあるけど、みんな忘れてることがあるんだよね。

 エリアス、隠してるからね。隠れて生活してもらわなきゃだからね!

 三百四号室に着くと、当然のようにユアンは椅子の後ろに立ち、エリアスは私の右隣に座った。私が上座になってるんだけど、いいのかな?この場合エリアスじゃ…まいっか。

 夢魔は流れるように部屋に入ったかと思うと、私の向かいの椅子に座った。あまりに綺麗な動きだったから、一瞬反応が遅れた。特に反応すべきところがあるわけじゃないけど。


「何を話そうか」

「んっとねー、私の技の事でしょ、後はお兄様の事」

「…君は随分お兄様を気に入ってるみたいだけど、どうして?」

「さあ?あなたに教えるべきじゃない事は分かってるし、それに私も好き好んであなたに弱みを見せたくない。お兄様をダシにして何か要求されても堪らないしね」

「随分警戒されてるなあ。大丈夫だよ、ボクは何もしないから」

「信用できない。悪いけど私はお兄様しか信用しない。夢魔は信用に値しないと判断する、すなわちあなたは魔王に認められない身。どうする?」

「身がカーティスである限り、カディスであるボクは退治できないよ」

「知ってる、だからもどかしい」


 あなたがお兄様と別個だったらよかったのに。そうしたら――


「あなたを退治できたのに」


 笑みを浮かべた私の言葉に、夢魔は身震いし、エリアスは警戒するように身構えた。

 そんな警戒しなくても…私怖い事言ってないよ。思ってる事言っただけなのになあ。殺すとか言ってないし。退治って言ってもね。


「とりあえず、じゃ、私について教えてよ。知りたい事あるんだ」

「いいよ。何なりと」

「『変身』について。どうやったら出来る?訓練は必要?」

「解。どうやったら出来るか。蝙蝠を思い描くだけ。訓練は必要だね」


 夢魔は、ニコニコ笑いながら言う。

 ふむ。

 蝙蝠を思い描くだけ…つまり思い描いたものになれるって事?いや、それはチートすぎる。でも容姿も変えられるなら変えたいな。

 膨大な魔力を使うとなっても、この黒髪を変えられるなら変えたいし、何なら十八歳くらいの容姿になりたい。そしたら多少の自由が利くだろうし。

 

「『吸血』、『眷属』について。どうやったらいい?どのタイミングで真名を詠唱?」

「解。噛み付いて血を吸うだけ。吸う直後、真名と呪文を詠唱」


 夢魔は、相変わらずニコニコ笑っていた。ただし、警戒のような動きとして、膝の上で手を組んだけれど。何かあったらすぐ動ける体勢だ――どんだけ警戒されてんだ、私。

 

「終わり。『変身』について聞きたかっただけ。あとは普通に話そうよ。案外楽しいかもよ?


 私は両手を広げて、何気なく攻撃する気が無い事をアピール。夢魔は頷き、妖艶な笑みを崩さないままにため息を吐いた。

 う、わ、キレー…認めたくないけど、私よりずっと綺麗な…てか憎らしいっ!


「君はとても綺麗だ」

「へー、そりゃあどうも」


 あんたから言われると嫌味にしか聞こえないんですが…。


「カーティスは君が大好きだ。だから、大事にしてあげてね」

「他人事みたいに言うんだ。自分なのに」

「ボクと、狼男と、カーティスは全員別者だ。カーティスが本体とも限らないよ?というか、ボクが本体で、カーティスと狼男が違うんだ」

「そうなの?」

「狼男は邪魔者、カーティスはボクと狼男が混ざった果ての精神――だからカーティスはボクに勝てな」


 ヒュン!

 

 夢魔の頭すれすれを、氷の刃が通り過ぎる。

 あ、勘違いしないで、私じゃないから。

 エリアスだから。

 あれ、一歩間違えたらお兄様の頭射抜いてたと思うと怖いわ……。


「カーティスを侮辱するな。お前じゃあカーティスには絶対に勝てない」

「一生涯、って事かい?はは、笑わせるなあ。君だって分かってるでしょ?ボクとカーティスを具現化したら、カーティスが負ける」


 バシュン!


 今度は私が氷を撃った。容赦なく、夢魔の左肩に。夢魔は一瞬顔をしかめただけで、すぐに治癒した。


「お兄様と」


 ダアン!


 今度は右肩と右腕にいっぺんに。今度はさすがにバリアで弾かれた。


「あなたを比べるな。それだけでもお前は私の事を怒らせる」

「ああ、ごめん。分かったよ。でも、君、本当にお兄様が好きなんだね。ボクには君が可笑しいと思うよ」


 シャンッ!


 ここまで来たら、うん、分かるかな…。ユアンが、夢魔に一瞬と言うのも憚られるほど早く、速く、夢魔の左胸スレスレの位置に剣を構えていた。力を込めれば、すぐに左胸を貫ける位置だ。

 

「…君は」

「我が主を蔑むと言うのなら、その胸も腕も足も首も腹も腰も、すべて斬ろう。我が主を蔑む事は、我が故郷を蔑ろにするよりも重い罪に値する」

「ユアン、離れなさい」


 静かな声が、私の口から発せられた。人間、本当に焦るとむしろ冷静になるんだなーとぼんやりと考える。


「私は怒ってない。だから、離れなさい。そのまま、お兄様の命も散らすつもり?」

「…っ、分かり、ました」


 冷静な私の言葉に、すっとユアンが退く。

 ………。

 …………っあー、焦った。

 ユアンにお兄様の胸を貫かせちゃいけないと、興奮させちゃいけないと、言葉を選ばなきゃいけないと、どんっだけ慎重になった事か!

 まあ大丈夫だろうとは思ったけどね。

 ユアンが私に逆らうなんて、関西弁の神様が居る確率と同じで有り得ないもん。


「そうだね、色々と言ったのは悪かったよ。そこは、謝る――すまない。でも、ユアン、あれはさすがに命の危機を感じたよ」

「こちらとしては謝るつもりは毛頭ありません」

「知ってる。だからこれは一方的な謝罪で結構だよ。謝罪というのは本来一方的なものだし」


 夢魔はふっと笑い、こちらに視線を戻した。一瞬で妖艶な雰囲気を取り戻すなんて、さすが夢魔というかさすがお兄様の半分というか。


「それで、他にボクに何か言いたい事は?」

「――」


 私は一泊置いてから、私の質問を口にした。


「明日、お兄様と私はお出かけの約束をしてる――それを破るつもりは?」


 夢魔はにっこりと笑って、答える。


「無いよ」


 明日のお出かけがどんな結末を迎えるか、私もよく分からないのが本心だった。

別の話を投稿してしまいました!

操作ミスでご迷惑をかけてしまい、申し訳ありません。

次回の予定は変わりません。本当に申し訳ありませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ