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187 かまくら

 レインコートに身を包んだ体を容赦なく打ち付けてくる吹雪。

 正直嫌になるね。バリア張って歩きたいんだけど、さすがに『温暖火』と並行してバリアまで使うとなると疲れそう。


「そろそろ休憩するか?」

「しよう」

「するの」

「しようぜ」

「……いいと思う」

「賛成します」


 気を利かせてくれたエリアスの言葉に、皆が一斉に食らいつく。

 騎士でさえ即答って、どうなってるの。

 やっぱり『温暖火』で体は温まっても、疲労まで回復するわけじゃないし、吹雪は痛いしで散々だからねぇ、そりゃあ休憩したくもなるって。


「何ならそろそろ寝泊まりする場所を作ってもいいんだが……もう五時頃だろう」

「エリアスの体内時計精確過ぎない?かまくら作るのは賛成だよ。大賛成だよ」

「じゃあ平らな場所探そうぜ。手分けして――ってのは危なすぎるよな」

「ミルヴィアが飛んで探してくれれば一発だろう」

「はーい。皆、しばらくの間『温暖火』ないけど我慢しててね!アルトもいい子にしてるんだぞ」

「うん」


 『温暖火』を消すと、私はざくざくと前に歩いて行き、羽を生やして飛んだ。

 そして全身を包み込むようにバリアを張り、『視界良好』、『千里眼』、光の可視化をフルパワーにする。

 すると、右斜め前に歩いて行ったところに他の場所よりは平らな、雪原のような場所を発見した。


 飛んでるから近く見えるだけで、実際歩くとなると結構な距離かもなぁ。

 でも、そこ以外にいいとこ無いし。

 よし。


 私は発動していたものを弱め、皆の所に舞い戻った。

 戻ってすぐに、アルトと手を繋ぐ。


「向こうに雪原みたいなところがあったから、行ってみよう」

「じゃあ、そこ行こうぜ。……魔王の驚異的方向感覚があれば、魔王に付いてなんとなく歩いてればそこに着いた気もするけどな」

「あはは、さすがにないでしょー」


 ……いや、無いとは言い切れない、か?

 あれの原理は解かれないのかな?

 永遠の謎かな?

 

 雪原までは、予想した通り、それなりに長い道だった。アルトの手が震えてるのを感じ取って、やっと『温暖火』を出す。その時の皆のほっとしたような顔。

 特に狐ちゃんなんかは両手を翳して有難そうにしてた。

 神様に雨乞いして、雨が降った時の村人ってこんな顔になるのかなーとふと思った。

 

 雪原に到着すると、まずエリアスがやった事は、広範囲に及ぶ防雪結界を張る事だった。

 それが出来るならやれよ!っと思わなくもないけど、バリアは人に、結界は場所に出来るものだから、責められる物でもない。

 しかも魔力を相当使うらしく、時間経過によって魔力の消費が出て来る。そこら辺はバリアと一緒だね。


 だから、防雪結界を張っておくのもかまくらが出来るまで。

 防雪結界を張り終えた途端に、あたりはしんと静まり返った。それと同時に、狐ちゃんと少年がレインコートを脱ぎ始める。


「いや、着ておきなよ!寒いでしょ?」

「ぐしょぐしょに濡れて気持ち悪ぃんだよ」

「魔法で乾かすのー」

「それなら手伝おう」


 おおお?

 エリアスと少年と狐ちゃんが協力し始めた。

 すごい。すごい進歩だ。


 私を含む他の四人もレインコートを脱いで、エリアス達に乾かしてもらう事にした。

 火魔法とかで乾かすっぽいから、焦がさないでね、と念を押して、『温暖火』を地面に置いて(置けた。実験のつもりだったんだけど)


 よっし、私の方も張り切って作ろう!


「―――で、どうやるの?」

「お前なー……ま、魔王らしいけど」

「まずは雪の塊を作った後、その中をくり抜く形で作るのが一般的です。ジャックオランタンと同じような段取りですね」


 なるほど。

 ではとりあえず、風魔法と操作魔法を駆使して近くの雪を一か所に集める。その時、なるべく地面が平らになるように集めた。

 次にその雪を丸い形に――いやいや、待てよ。

 どうせなら大きい方が良くない?

 ねえ、大きい方がいいよね?


 広いかまくらって楽しそうだよね?

 せっかく魔法を使えるのに、地球と同じ規模でやってもつまんないよね?


「はあっ!」

「お、お姉ちゃんっ?」


 声を上げて、そこら中から雪を集め始めた私を見て、珍しくアルトが声を上げた。


「なんだか嫌な予感がいたします」

「そう?良い予感だと思うけど」


 上機嫌な私は、騎士に対して言葉遣いを変える事も忘れて言った。


「ほどほどにしろよ?」


 レインコートに着いた雪を落としながら、エリアスが心配そうに声を掛ける。集まった雪は私どころかエリアスの身長まで超えて、どんどん大きくなっていった。雪を追加するとき、ぎゅっぎゅっと押し固めるのも忘れていない。

 すごい、これだけ雪をとってるのにまだまだ雪が残ってる。


 ここは楽園か!?


「あの、魔王、程々にしないと魔王の魔力が尽きるの」

「へっ?あ、そっか。忘れてた」

「魔法を使う時魔力の消費を考えないとか、お前どれだけ楽観的なんだよ」


 少年こそ、私の魔力は無尽蔵にあると思ってるのか限りがあると思ってるのかどっちなのさ。

 とりあえず、このメンバーの中で一番背の高い騎士の身長を超えて十五センチくらい行ったところで、やめにしておいた。ちなみに奥行きや広さは、大学生が住むワンルームのアパートよりは広い。

 しかしここから雪を掻き出さなきゃいけないのだ。


「面倒だなぁ」

「ミルヴィア、ここまで大きくしたんだから始末は付けてくれ。さすがに俺でもこの大きさは辟易する」

「分かってるよ」


 エリアスの呆れたような諦めたような言葉をしり目に、私は操作魔法を魔力の消費をまったく気にせずに使った。まず入口は小さくていい。そこから雪をごっそり掻き出していけばいいはず。

 小さな穴を掘って、そこからどんどん中の雪を取り出す。

 その作業が終わるころには、全員分のレインコートがカラカラに乾いていた。


「よし!完成!」

「暴走しすぎなの」

「でもほら、広い方が良いでしょ?」

「……それはそうだけど、なの」

「中に入ろう。あったかいのかな」


 私は『温暖火』を探したけど、どこにもない。どうやら魔力供給が自然と切れてしまったみたいだ。

 それでも、さっき歩いていた時よりもずっと暖かい感じがする。レインコートも脱いでいるのに。

 やっぱり雪が身体を叩き付けていないというのは大きいらしい。


 それと、またもや私がハイテンションだったからかも。

 段々寒くなってきたし。

 

 中に入ると、確かに暖かい感じがした。ただ、視界一面が真っ白だからいつか気が狂いそう。

 アルトは中に入ると、「あったかい」と一言だけ漏らした。


「大きい分入口もデカいから、雪入って来そうじゃね?」

「なら――ちょっと待っててよ」


 私は操作魔法と土魔法を組み合わせ、ゴザのようなもの(・・・・・・)を作り上げた。

 長い長い操作魔法の勉強の成果!……と言うには若干地味だけど。


「凄いですね」

「感心なの。操作魔法ってこんなにあっさり使える者なの?」

「い、いや、あっさりじゃないんだよ?一応滅茶苦茶勉強したしね?……えーっと、これを入口に掛けて置けば、雪は入らないけど通気口は確保できるんじゃない?」

「ああ、そう言えば空気穴が無いな」


 私がゴザ(のようなもの)を入口にしっかりと固定している間、エリアスは所々に空気穴をあけていた。そして最後に天井に十センチほどの穴をあけた。


「まあ、これで溶けないだろう。溶けたとしても水魔法でどうとでもなるしな」

「それ私がやるの?」

「当たり前だ。こんなバカでかい物を作ったんだから少しは協力しろ」

「もちろん協力は惜しまないけど、でもほら、皆、大きい方が楽しそうでしょ?」


 ね?と首を傾げて見せると、狐ちゃんは素直に頷き、アルトもこくっと頷いた。少年は曖昧に首を傾げてエリアスは「まあいいか」と言って、騎士は「あなたが楽しめるのであれば、如何様にも」と微笑む。

 しっかりした反対意見は無かったので、皆これに賛成なのかな。

 すこし嬉しいかもしれない。


「さっそくお弁当を食べるの!」

「まだ早いよ」


 意気込んでいる狐ちゃんにさっさとダメと伝え、私はアルトの手を握ってゆきのうえに座った。

 うーん……。


 床、あった方がいいかな?

閲覧ありがとうございます。

かまくら、一回でいいから、作って入ってみたいです。

初めて操作魔法で作るものがゴザというのは如何なものかと思いましたが、どちらかというと操作魔法は習得の過程が描きたかったので、操作魔法を使う時は割とあっさりしています。


次回、かまくらが充実していきます。一泊するだけなんですけどね。

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