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175 今後


「ちなみにこれからの予定はあんのか?」


 ふと気になったから聞いたという様子の少年。私はうーん、とうなる。

 予定かー。しばらくは伯爵家の後始末が必要になると思うけど、確かに大雑把な予定は決めといてもいいかもしんないなー。

 でも、何があるだろ?


「俺は、人族領に一回行こうかと思ってんだよ」

「お!?」


 私は身を乗り出す。

 人族領と言ったかな!?

 少年が若干引き気味になりながら、小さく頷く。


「俺らと……剣の一族(・・・・)の戦争で、少なからず人族にも被害があったと思うんだ。それの把握もしておきたいし、勇者の事も」

「……無種族と、魔王(・・)の戦争だったはずなんだけどねー」

「いーんだよ俺と妹の間では剣の一族との戦争って事になってんだよ」


 照れ隠しみたいに手を振る少年。わーかわいー。

 いっつも同い年みたいに振る舞ってるけど、一応精神年齢的には私、高校生だから。子供みてるとかわいいとかは思うわけですよ。

 私はにやにや笑いつつ、考える。


「人族領ねー。危ないと思うけどなあ」

「んな事言ってる場合じゃねぇよ。俺は一応魔族として生活してんだ、人族の勇者の事も把握しとかねぇといざと言うとき行動できねえだろうが」

「ふーん」

「実はこのセリフ、お前に言って欲しかったんだけどな」


 じとっとした目でこちらを見てくる少年。私はすました顔でお茶を飲んだ。

 そういやあ勇者居たなーぐらいにしか思わないよ、私達は。うん。決してね、訓練する本来の目的を忘れてたわけじゃなくってだね。


「お前勇者を討つために訓練してたんだろーが」

「勇者に討たれないために訓練してたんだよ?」

「一緒だ」

「言い方次第で結構違うでしょ。言い方って大事だよ。私は好戦的じゃないの。少年じゃないんだから」


 よく言うよ、と少年が呆れたように笑う。私はにこにこ笑いつつ頭の中で考えを巡らせる。

 人族領ね。私はすっかりきっかりそこの部分だけ忘れてたけど、せっかく思い出したんだし。行ってみるのもいいかもしれない。

 何より、狐ちゃんと少年だけじゃ不安だしさ。


「私も行こっかな」

「っ!」


 少年が立ち上がる。それはどちらかと言うと、期待の眼差しっぽかった。

 お、マジ?邪魔だとか言われるかもって思ってたんだけど。


「私も行けば、そこそこの人数は確保できるし。騎士も居るし、なんならお医者さんも連れてくよー?」

「医者は有難い、けど、なあ?」


 絶対行ってくれるって思ってないでしょ。私も実は思ってなかったり。

 誘ってみるだけの価値はありそうだけどね。


「どう?連れてってみない?」

「……俺らが連れてくのか?お前が勝手について来るんじゃなくて?」

「気分の問題だよ。さっきも言った通り、言い方は大事なの」


 どう?と首を傾げてみると、少年がしばらく黙って長考する。と、後ろから、


「危険です。人族領は――行ってはいけません」


 という声が聞こえて来た。魔王として接するようにって言っていたから控えていたみたいだけど、さすがに我慢できなくなったか。

 私は振り返って、口調を変える。


「私が行きたいと言ってるんだから行くんだ。それに、お前が居るんだから危険じゃないだろう」

「…………私も連れて行って下さるんですか?」

「?当たり前だろう」


 さっきも騎士を連れてくって言ったし。


「『裏切り者』なのに?」

「嫌味は止めろ。というか、魔王の騎士なのに置いて行ってどうするんだ。二回も雇ったのに無駄じゃないか」

「だから、魔王は甘ったるいって俺から言われんだよ」

「少年は今黙ってようか。これは魔王様のお話だからね?」


 子供は黙っててね?

 笑顔で言うと、少年は不貞腐れたようにどさっと勢いよく椅子に座った。乱暴だなあ。

 まあ、甘ったるいってのは否定できないところがあるんだけどね。


「どっちにしろ護衛は必要だろう。騎士服はだめだぞ?普通の服で、剣を腰に刺しておけば十分だ」

「……ええ、私を連れて行って下さるなら何も言う事はありません」


 騎士がまたにっこりと笑う。よし、と私が頷いた直後、ですが、と騎士が続けた。

 何も言う事無いって言ったじゃんか。前言撤回すんの早いなおい。


「人族領から魔族領へ、魔族領から人族領へ行くためには関所を通る必要があります。関所を通るには、身分証明書と保護者のサイン、更にお金が幾らか必要ですが?」

「よし、少年」

「俺に説明させんの早すぎだろちょっとは自分で考えろよ」


 だってもはや何言ってるのか分からないし。

 身分証明書と保護者のサインとお金ぇ?そんなもんを私達が捕まえて来た強盗は律儀に払ってたっていうのか。


「俺らが行こうとしてんのは関所を通る道じゃねぇ」

「お?」


 それっぽくなって来たぞ。わくわくする。


「何より俺と妹は身分証明書が無いからな。で、俺らが通るのは魔族領の辺境から人族領へ跨っているデカい山脈だ」

「……それってマクセン山脈の事ではないですよね?」

「あー、そんな名前だったっけか。雪山だよ。お前なら知ってるかもなあ?俺のじいちゃんがそこに逃げ込んで、剣の一族にやられたから」

「その話は後回しね。恨み言とか、そういうのは私の居ないところでね」


 にしても、雪山ね。山脈ね。

 うん、ファンタジーっぽくっていいじゃない!やったね!

 登山とかもしてみたかったんだよねー!魔法とか駆使しながら、険しい山脈を上っていく!いいじゃないいいじゃない。


「なあ、わくわくしてるところ悪いんだけど、俺がお前に来てほしいのは、お前が魔王だからじゃなくって吸血鬼だからなんだよ」

「えぇ?何それ、大して変わら、ない、んじゃ……あ」


 言ってて気が付いた。あー。うん。なるほどね。


「つまり、空飛ぶ役目として?」

「そういう事だ。見回りとか、そういうのにも役立つだろ?」

「うー、なにそれ。せっかく魔法とかを使うんだろうなーと思ってたのに」

固有魔法(ユニークマジック)も魔法だろ。それにせっかくの羽を使わないでどうすんだ」


 確かに、一理あるけど。

 私はもっとこう、険しい感じを期待してたんだよ。楽なのに越したことはないにしても、ロマンがあるじゃないロマンが。


「あ、でも、吹雪とかがあったら飛べないし!」

「お前馬鹿か。バリア張ったらなんも関係ねぇだろうがよ。どうしてそう苦しい道を選びたがるんだ。お前、鍛えすぎて根性論好きになってねぇか?」

「そんなわけないじゃん。根性論とかはビサとかの方がお得意だよ」


 でも、そうかあ。厳しいのは期待できそうにないね。

 じゃあ、どちらかと言うと向こうに着いた時の事が心配になるか。宿とか、食事とか、諸々。


「でも、登山でも油断は出来ねぇぜ。凍傷とか、詳しくねぇけど高山病とかにもなり得るだろ。だから医者は欲しいところだけど……さすがのお前でも無理だよなぁ?魔王サマ?」


 やっすい子供の煽りだな――


「んな事ないから!連れてってやるよ!」


 そんなやっすい子供の煽りに乗った私。

 少年は今までにないくらいににこっと爽やかに笑った。


「じゃ、頼んだよ、魔王!」


 …………。


「ウン、マカセテヨ」


 エリアス、頼むよー?

 少年とは少し話をして、少年が帰ると、私は直行で騎士と一緒にエリアスのところに向かった。


 お願いだよ?


「断る。断固。拒否」

「なんで!」


 そこからエリアスの説得に二時間かけ、ようやく承諾を貰った。

 ただまだ日程は決まってないと言うと、何かの魔法でどつかれたんだけど。

閲覧ありがとうございます。

最近色々とごたごたしていて、更新できず申し訳ありません。

次回からは人族領に入るための準備となります!

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