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156 助言求む

 私はコナー君にお茶会ができないと断ると、ユアンを置いてあるとの相手をさせておいて、エリアスのところに行った。

 ユアンが今出掛けると伯爵令嬢と鉢合わせになるかもしれないし、世間の印象もあるし。

 行く前にすごい注意を受けたんだけど、軽く流しておいてきた。

 あー、謹慎処分みたいになっちったなあ。


 傍から見たら私は一人で歩いてるように見えるけど、実のところユアンより危険な子と一緒だからね。

 最近はアルトがみんなと戦ったら一番強いんじゃないかと思い始めた。戦意喪失させるのがありだったらの話ではある。

 大体戦場ではルールなんてないんだから、アルトが広範囲の呪いを覚えてしまったら終わりだ。この世の。


 この子が私に懐いてなかったら、どうなってたんだろう。

 考えるだけでゾッとするね。

 アルトは私を好いてくれてるんだから、いいんだけどさ。


 縁起でもない事を考えてると、あっという間に病院に着いた。どうも私、無意識に病院に向かってたみたい。

 なんだ、私の中にはカーナビでもあって、それに従って体が動いてるのか?ん?


 そっと中に入り、あたりを見渡す。初めて受付に行って、女の人に声を掛けた。

 めっちゃ来てるのに受付に初めてくるってどういうことだよ。


「エリアス医師は居るか?」

「はい、居ますよ。今は――お昼休憩ではないでしょうか」

「そうか。ありがとう」


 確かに昼時だけど、お昼休憩ったってどこで何してるんだか想像もつかないよ。

 今まで一階で全部済んでたけど、屋上に行ってたりするのかなあ。

 私はとりあえず、エリアスの診察室まで行ってノックした。いるかなー。どうかなー。


「はい」


 居るし!

 え、ほんとにエリアス、この部屋から離れないの?

 お昼なんだから食堂行くとか、外に買いに行くとかすればいいのに!こんな天気がいいんだから。


 小言をぶつぶつ言いながら中に入る。エリアスが、来客が私だと分かったとたん昼食を食べるのを再開した。

 おい。私だからって対応をおろそかにしないでよ。

 普通魔王が来たら昼食なんて食べる余裕ないんだけどな……みんなの基準が分かんないよ。


「何の用だ」

「えっと、あの伯爵令嬢がうちに来てね、ユアンに対して勧誘状を出したんだ」

「それで?」

「どうすればいい?」

「知るか!お前の問題に俺をわざわざ巻き込みに来るな!」

「だって分かんないんだもん!」


 完全な正論をいうエリアスと、感情だけで推し進めようとする私。

 いや、だって私も来るか来ないかちょっとだけ迷ってから来たんだから、対応してくれてもいいんじゃないの?

 エリアスは溜息を吐くと、昼食のお握りをまた一口食べる。

 美味しそう。


 って、違う違う。とりあえず座ろう、うん。

 私はエリアスの隣まで椅子を持っていくと、そこに座った。エリアスがあからさまん嫌そうな顔をしてたけど、何も言ってこないので気にしない。

 私に気にしてほしければ、言ってくれなきゃだめだよー。面倒だからっていう理由で何も言わなければさらに面倒なことになるのが私だから。

 我ながら性質(タチ)悪いわー。


「ねえ本当にどうしよう。いやもうユアンも委縮しちゃってるしお兄様にはまだ会えてないしさらにはお父様まで出張って来るしでもうわけわかんないんだってー」

「お前の父さん?ってことは、カーティスの父さんだよな?」

「そうだよ。何、私が魔王だって理由で捨てられてそれを拾ったのがお兄様だっていう感動ストーリー?吸血鬼で魔王が妹ってだけで、設定かなりいっぱいいっぱいだと思うけど」

「違う。面倒な方向にもっていくな」


 エリアスが手を振ると、コップに水を注いで飲み始めた。


「ちょっとなら聞いてやってもいい。お前の父さんが出て来たんだ、よっぽどの大事なんだろ」


 これ、捉え方によっては『偉い人が動いたから』ってなるんだけど、うちの場合『働かない人が働いた』って事なんだよねえ。

 なんだろう、お父様が一番不名誉な気がするのは私だけか?


「最近は働いてるんだろ?」

「まーね。私のおかげでね!」

「それで、どういう風に悩んでるんだ?」

「スルーされた!」


 それほど拾ってほしかったわけでもないけれど!

 でも少しくらい褒めてくれたっていいのに。六歳児がそういうのやるってすごいんだよ?六歳児じゃないけど。


「何してほしいんだよ」

「相談聞いてほしかったの。エリアスなら誰にも言わないだろうし、一番信じられるし」

「……ビサとか、友達に言えば良かったんじゃないのか?」

「ビサだったら武力行使ですって言いそうだし、狐ちゃんも少年も自分で何とかしたらって言う気がする。相談役にはエリアスが一番なんだよ」


 私はエリアスに向かってにっこり笑いかけた。エリアスははあ、と溜息を吐いてもう一口水を飲む。

 ってかいつの間にかお握り食べ終わってるし……。

 意外に食べるのが早いんだなー。


「しばらくユアンには謹慎しててもらって、その間に断ってもらうというのが妥当だろう。お前が出て行きたければそれでもいいと思うけどな」

「それは公爵令嬢=魔王ってばれるじゃん」

「もう色々手遅れだ」

「ハイスミマセン」


 確かに、色んなとこからばれてるもんね。私が勝手に活躍しまくったせいで。

 特にギルドでお兄様の妹って完全に言っちゃってるしね。その上魔王って言っちゃってるしね。

 多分暗黙の了解みたいな感じになってると思う。知ってても言うのはだめだぞ、的な奴。どれくらいの人が知ってて私の変装(になってない変装)を見てどう思ってるのかっていうのを考えると、かなり恥ずかしい気がするけど……。

 そこはまあ、気のせい気のせい!


「んー、そっかあ。じゃあ、どうやって断ればいいかな?」

「ただただ勧誘状がユアンに出されたなら、ユアンに断ってもらえばいいだろ。正式に言われたなら正式に断る。普通じゃないか」

「確かに……」


 確かに、私が出て行くとか私がどうにかするとか、私も結構ビサの考えと似てる気がするな。

 穏便に済ませられるなら、それでいいのか。そうか。

 それじゃ、これからユアンのところ行って、断るように言ってもらおう。うん、それがいいね。


「サンキューエリアス。これでどうにかなりそうだよ。いやー、でもユアンが移りたいとか言ったら、どうしようね?」


 私は立ち上がって伸びをして、そんな事を口にした。

 エリアスがそれを聞いて、目を見開く。


「は?お前が力尽くで止めればいいだろ?」

「へ?いやいやいや、そんなことしないって」

「ハア?」

「本人が決意したなら応援するし、引き留めはするけど本当に行きたいなら笑顔で見送るよ?」


 ユアンが私に迷惑を掛けたくないっていう理由で行っちゃうなら、もちろん止める。だけどそれでもユアンが行くんだっていうなら、私は笑顔で見送るよ?

 私の返事を聞いて、エリアスは目を細めた。


「ユアンは絶対に、引き留めてほしいと思うけどな」

「……なら、行くなんて、言わないでほしいし」


 私はにっこり笑って、診察室を後にした。

閲覧ありがとうございます。

最近私用が忙しく、投稿が途切れ途切れになってしまっています。申し訳ありません。

次回、ユアンとお話。

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