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151 結果発表

閲覧ありがとうございます。

今日から連載再開となります。


 エリアスが来た翌日、私はいつも通り、家でゆったりと、ゆっくりと過ごしていた。アルトも隣で本を読んでる。

 アルトは私の手を握りながら、ぼんやりと絵本を読んでいた。


 昨日ははぐらかされたなー。エリアス、いつまで言わないつもりなんだろう。

 隠されてるんだから、直接聞くのも違う気がする。隠してるのはそれ相応のワケがあるって事だもん。

 あー、気を使うのって疲れるなー。気ぃ使う場面でもないってのは分かっててもね。


 私は気分を切り替えた。考えててもしょうがない。

 魔導具の本を仕舞って、操作魔法の本を取り出すと、次の授業について考える。


 そろそろ実践。また忙しくなるだろうな。かなり授業も難しくなって来たし、まじめにやらないといけない。

 アイルズも変な事はしてきてない。ここまで来ると、どうして皆がアイルズを警戒するんだか分からなくなってくる。

 だって、何もしないんだよ。授業して終わり。


 皆曰く、警戒しなくなったら襲われる、だって。

 いや、分かってるんだよ?私がいざという時どういう行動をとるか、とかなら。

 ユアンに押し倒された時とか、ユアンに悪意がなかった(?)とはいえ、叫ばなきゃだめだった。

 

 多分皆は、私がアイルズに何されても許すだろうと知ってるから、忠告してるんだろう。

 でも私からしてみれば、ユアンの方がよっぽど危険人物なんだけど……。


「ミルヴィア様、何をお考えですか?」

「ん、いや、何も」


 比べるのは止めよう、うん。

 警戒しといて損はないんだし、ただ私の疑問が尽きないだけだね。


「お姉ちゃん、お姉ちゃんは、ぼくが知らない友達も、いるの?」

「ああ、居るぞ」


 アルトに会わせてない友達かー。

 狐ちゃんにコナー君、後は弟子だけどビサと、教師兼執事のアイルズだね。神様も居るけど、あれは絶対会わせられないし。

 あ、そう言えば、もう神様のところには行きたくないね。

 あんまり付き合いすぎると、現実離れしちゃうもん。


 そう考えてみると、っていうかいつも思ってるんだけど、私、変な人とばっかり付き合ってんなー。

 分野がバラバラ過ぎる。


「会ってみたいな。特に、男の人とか」

「……?男の人の友達が欲しいのか?」

「お姉ちゃん、男の人の友達しか、いない、から」

「うっ」


 ちょ、内心少し気にしてる事言わないでくれる!?

 女社会で生きるの大変とか、思ってないからね!全然!


「何かされてないか、心配……」

「ん、待てアルト、何かってなんだ?」

「夢魔のお姉ちゃんが、お姉ちゃんは、男の人に囲まれてて、不安、って、言ってた……」

「うん、アルト、待っててくれ。夢魔のお姉ちゃんを絞めてくる」


 私が立ち上がりかけると、ユアンが声を掛けてきた。


「ミルヴィア様、お許しになられればよろしいじゃないですか」


 ユアンが完全に笑いを噛み殺した表情で言う。

 あのな!お前も原因の一つだから!無闇矢鱈に絡んでくるからだろ!

 そもそも、小さい子になんてこと教えてんだあの夢魔は!夢魔だからしょうがないけど!しょうがないけどね!


 コンコン


 私がユアンに怒鳴ろうとしたところで、ノックされた。アルトがすぐに本を置いて、身を縮める。

 この度、悪いなあと思ってしまう。今度、アルトをお散歩に連れてってあげよう。

 呪いの部族だからって、じめじめした部屋で呪って無きゃいけないとか、そういう縛りはないと思うし。


「はい」

「師匠、私です」


 私は目を細めた。聞き慣れない声に、アルトが首を傾げる。ユアンが私と同じリアクションをしたのが分かった。

 確かに、ユアンもビサの師匠みたいなものだからね。今回の引き分けについては、思うところがあるんじゃないかな?


「どうぞ、入って」


 アルトはさっと私の後ろに隠れる。

 怖がらせちゃったかな……でもこれからお姉ちゃん、大事な話なんだ。

 ゴメンね。


 入って来たビサの表情は、申し訳なさそうで、私と目を合わせてくれなかった。

 下を向いてるから、背の低い私と目が合うはずなんだけど、余所を向いてる。

 私は口を開く。


「それで、どうしたの?」

「結果が、発表されました。一応、第一試験は突破だそうです」

「……そう。良かったよ」


 もっと辛辣な言葉を吐いてやろうと思ったけど、止めた。

 これ以上追い詰めても意味がないかなと思って。しばらく沈黙が流れる。

 ユアンがこちらを見て発言権を求めて来たので、話すよう促す。


「足場が悪かったからでしょうか?」

「……はい。ですが実力不足を否めません」


 勝ったんだけど、ね。やっぱり兵士である以上、細かい事を気にしていたらきりが無い。

 いつも同じ訓練場で、慣れ過ぎたのもいけなかったかなー。


「次からはいろんな訓練場を回ろうね。森で戦ってみるのもいいかもしれない」

「……」


 私がさらりと言ってやると、ビサは驚いた顔をしてこちらを見た。

 かなり驚いているようで、目を瞬いてじーっとこっちを見てる。

 な、なにさ。


「お前なんか弟子じゃない、なんて言うと思ったの?」

「はい」


 即答!

 マジか!エリアスも同じような事言ってたし!

 え、私どれだけ皆に薄情呼ばわりされてるの?

 泣くよ?私泣いちゃうよ?


「あー、いや、言わんって。励ましはしないけどさ、訓練環境とか考えなかった私も悪い。試合会場を知らないとか、どれだけ適当なんだって話」


 有り得ないでしょ。ニフテリザに笑われるって。

 私はふう、と息を吐くと、ビサに対して微笑みかけた。


「それでも今回の事は私もユアンも甘く見てはいないよ。次からはきっちり訓練するからね。ユアンにはまたビサを一発で倒してもらうから」

「仰せのままに」

「え、いえ、それは勘弁してもらいたいと言いますか」


 ユアンがビサを一撃で倒すって事は、初期に戻るって事と同義。

 今は手加減に手加減を重ねてさらにその上で慈悲の手加減をしてあげてるみたいだけど、慈悲の手加減をやめてもらう。


「ああ、そうだ。さっき、私も悪かったって言ったでしょ?」

「はい」

「けどね、怒ってはいるからね?」


 私はビサを見上げて、更に笑みを浮かべた。

 ビサがぶるりと震える。ユアンがクスリと笑う。私は一歩前に出ると、ビサの胸に手を当てた。


「ビサ」

「……はい」

「負けるなって、言わなかったっけね……?」


 私は思いっきり手に魔力を込めると、悪いけど精密な調整はせず、そのまま風魔法をぶっ放した。

 ビサはかなり吹き飛び、ドアに当たって崩れ落ちる。

 私はそこまでひとっ飛びで行くと、倒れたビサを見下げる。


 ビサは、私の笑みを見上げながら気付いたと思う。

 訓練は二十倍くらい厳しくなるって。

負けたら無慈悲のミルヴィア。

次回、アイルズのところへ授業に行きます。

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