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145 許可

 無限魔力回路の作成は何十人、何百人の人が失敗してきた。

 そこには神様の介入もちょっとはあるんじゃないかなと、私は踏んでるんだよね。この世に溢れている魔力、それを増やされてはたまらないって思ってるんじゃないかな。


 だから神様の存在を知ってて、簡単にあの場所に行ける私としては、許可を取る事は避けられない。「何故黙ってたんですか?」って笑顔で脅されかねない。

 怖いもん万智鶴さん。


 というわけで、行けるかなあと思いつつ、私は布団に潜った。


 

 

 来れたー。

 そう思って赤い花から出る。うん、大分慣れて来た。これなら現実世界に帰った時も負担が少ないでしょ。

 赤い花から出た私を迎えてくれたのは、ニフテリザだった。横に万智鶴さんも居る。ちょうどいい。ニフテリザも万智鶴さんもにやにや笑ってるから、多分私が万智鶴さんに用があるのは気付かれてるんだろうけど。


 手を振って、二人のところまで行った。ニフテリザは私が駆け寄ると、一層笑みが深くなる。

 変わんないなあ。


「なんやミルヴィア、最近えらい忙しいみたいやな」

「そう?神様に比べりゃ全然じゃない?あ、久しぶり万智鶴さん」

「お久しぶりです。お元気でしたか?」

「うん。すごく元気」


 っていうか見てたんだから知ってるでしょうよ。

 そう思いながら、歩く。どこへって聞かれたら、知らないけど。

 なんとなく、神様って私と会うと歩き出すんだよねー。立ち話が嫌いなのかな?歩き話(?)ならいいとか?


「ほんで、用ってのはあれやろ?あの、魔力の、あれ。あー、無限何とか」

「無限回路ね。そう呼んでんのは私だけだけど。そう、それについて聞きたくて」

「それ、爆死した博士何人も居るよ?あとは魔力の制御が聞かなくなって魔力空っぽになって死んだりとか、あとは金属アレルギーで対処が間に合わんかったのも居ったな。それに――」

「待って。これから研究しようって人に亡くなった方の事言わないで。そして最後の人はもうなにやってんのとしか言いようがない」


 金属アレルギーって……触っちゃだめじゃん。

 っていうか魔女文字彫れないじゃん。


「それだけ危険やっちゅう事。自分平気やの?疲れて手元狂ったりでもしたら大惨事やで。魔族領丸々消えるで」

「……さっきから、『不可能』って言ってないね、ニフテリザ」


 ニフテリザの目が細められる。同時に口角も上がっていた。

 不可能じゃないって事?


「うちは成功例を知っとるで」

「っ!」

「そいつは魔力の補充しすぎで死んだ」

「……魔力の補充のし過ぎって、有り得るの?」

「さあな。あれは何百年か前の事やし、最近の技術は進歩してってるから分からんけどな。『々』は発見されてなかったんとちゃう?」


 それが追加されただけで何か変わるんだろうか。

 まあ、変わるっちゃ変わるけど、大きな変化は見込めないような……どっちにしろ魔力の補充のし過ぎっていうのがあるんだし。

 体が拒むとかでは、無いのかもしれないな。

 つまり。


「許容量を超えたって事か」

「ふうん、どういう事か聞かせてもらいましょか」

「コップに水がいっぱい入った状態で置かれているとする。一口飲んだら一口分だけ追加できる。けど、空になりそうなコップに蛇口で水を汲んじゃったら、もしかしたら溢れるかもしれない。要約すると、(コップ)から(魔力)が溢れたら死んじゃう」

「……答えは知らんで、悪かったなあ。そうなのかもしれん。うちはちょっと、分からへん」


 ニフテリザが両手を挙げた。降参?早い早い、研究ってなあもっともっと時間がかかる物ですぜ?

 ニフテリザが降参したと同時に、万智鶴さんが話し始めた。


「何にせよ、あなたがそれに興味を持つとは思いませんでした。というかそのきっかけがあるとは――ふふっ、猫族の少年がいなければそれに興味を持つことはなく、庭師の方が居なければその必要がない――ああ、あなたの周りは本当に面白いですね」


 万智鶴さんは恍惚とした表情で言った。

 うーん、この人は人間関係に一番興味がありそうだよね。私が魔王かどうか以前に。


「喜んでもらえたようで何よりです。ところで、今日はその許可をもらいに来たんだけど」

「いいんじゃないですか?」

「軽っ!」

「そんなものですよ。やりたい人がいるならば、止めるべきではありません。地球だって、人間が電気を発明したせいで、変わって行ったんですよ?それに神の介入はありませんでした」

「まあ、常識が変わっちゃうってところでは一緒か……どっちかって言うと今度の研究は、空気を増やしていく研究みたいなものなんだけど」

「いいんじゃないですか?責任は自分で取ってくださいね」


 宇宙の常識が覆されようと自分で責任取れってか。

 最初っから自分で責任取るつもりだったけどさ。でも、少年も責任者だからね?関わっているんだから。

 その責任を逃れようという意思は、多分少年にはない。多分。


「無限魔力回路……魔族も人族も、すべてが一緒になって取り組み得る宇宙の夢。ああ、あなたがそれを発見してくれた暁には、人族もあなたを討とうなどとは思わないでしょう」

「それは困る」

「……何故ですか?」

「いつかは死にたいから。生き続ける命なんて、無機物と一緒だからね」

 

 それに、ずうっと生き続けても飽きちゃうと思うし。いや、研究とかはしたいから飽きないか。

 でも、まあ、いずれは死ななきゃ生きてないって思っちゃうんだよね、私は。


「けど、まだ生きたかったって思いながら死にたいって言うのが、私の願いかな」

「それ一番辛いんとちゃう?」

「いや、前に読んだ本に、まだ生きたいって思いながら亡くなった人が居て。希望を持って死ねるって良いじゃない?……って、なんて話をしてるの。私はまだ六歳です」


 私はため息を吐いて、無限魔力回路に思考を映す。


 どうしよう。やっぱりやろうかな。でも、そうなってくると星の安定を保っている『隔離者』の役割はどうなるんだろう。


「そこは心配ないぞ」

「おおっ!セプス、良い所に!」


 タイミングを見計らってたみたいな仕方の登場だね!

 まるで後を付けてたみたい!


「『隔離者』の役割は、星の魔力を吸収しない、だ。人工的に増やした魔力が『隔離者』に渡ってもまったく問題ない」

「ほほう、なるほど、なるほど。ちなみにセプスは可能だと思ってる?」

「思っているし、出来る事ならば神楽にやってもらいたいと思っている」

「ふうん、じゃあやるよ」

「軽いな?」

「万智鶴さんの血が混ざってるからかなあー」


 セプスが、自分の尊厳を傷付けられないと思っているならやるよ。

 だってコナー君が死ななくて済むかもしれないんだもん。

 魔法は使えなくとも、魔力0での死は免れる。だから、やる。やらない理由なんてないし。皆後押ししてくれてるし。


「神楽、一つだけ気ぃ付け。何が何でも、吸血鬼化しちゃいかんで。あれはほんまに厄介やから」

「うん。分かった。ちゃんと血はもらうよ」

「青髪の子ぉからでももらっとき」

「お兄様の血も美味しいよ?」


 さて、はずは全百種類以上ある魔女文字と魔女文字の組み合わせからか。

 頑張るぞー!

閲覧ありがとうございます。

魔女文字は組み合わせ方によっていろいろな回路になります。それに書き方を間違えると爆発する事もあるので、かなり慎重に作らなければなりません。

次回、少年と話します。山で。

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