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144 平気


「私は反対です。そのスケジュールは無茶としか言いようがありません。」


 今は夜。レーヴィとアルトは私の部屋に居て、今私とユアンは三百四号室に居た。で、説得を試みているわけなんだけど……。

 困ったなあ。全然聞いてくれそうにないや。

 とりあえず、スケジュールの説明はしておこうと思って言ったんだ。


 以下、スケジュール。

 

 聖民の日、少年と会う。

 火民の日、ビサとの訓練。終わったら魔導具の勉強。それが終わり次第明日の予習。

 水民の日、操作魔法の授業。操作魔法の勉強。

 木民の日、ビサとの訓練。終わったら魔導具の勉強。それが終わり次第操作魔法の予習復習。

 金民の日、操作魔法の授業。操作魔法の勉強。

 地民の日、魔導具の勉強。コナー君とお茶会。それが終わったらまた勉強。

 闇民の日、狐ちゃんと訓練。魔法全般の勉強と反省会。


 うん。

 自分でもちょっと忙しいなとは思うよ?だけど日本人のスケジュールに比べたら全然だと私は思う。

 基準がおかしいかなあ。けど、学校ではずっと勉強だしその上掃除とか人付き合いもあるし。

 

 大変っちゃ大変だけど、それほどじゃない気がするんだよね。部活とかやっていれば休日なんて全然ないと思うし。私はやってなかったから分からないけど。


「ビサ様との訓練の後の勉強はできないと思います。いつも疲れているではないですか」

「ビサとの訓練はもうすぐ終わるし、魔導具の勉強はどっちにしろやるんだから早目の方が良いでしょ」


 ユアンがいつもの笑みを消して訴えてくる。それを私が軽くいなす。

 ユアンは顔をしかめて私を見た。かなり真剣っぽい。私は目を瞬いた。怖いって。


「ではせめて一日は休日を作ってください。どこの悪徳会社ですか」

「この世界って会社はないはずなんだけどなあ」

「ミルヴィア様!」


 茶化すと怒鳴られるし。

 いや、そうかなあ。全部自主的な物だし、体調を崩せば休みを取れる日ばっかりだよ?

 日本じゃ高熱が出ても会社に行く人が居るんだからね……。


「いつも休みの地民の日はどうするのですか。コナー様とのお茶会も、必然的に短くなるのでは?」

「それは有り得ない。コナー君とのお茶会は、ちゃんと時間を取るから」


 そう、ここだけはちゃんとしたポイント。

 コナー君の癒しタイムを無くすなんて、そんな末恐ろしい事出来るはずがない。だから、その時間だけはきっちり取ってある。

 なのにそんな怒鳴らんでも。


「ミルヴィア様が努力家なのは知っています。私もその点に関しては色々と諦めています。ですが今回ばかりは許せません」

「待って、諦めてるって何」


 私いつの間に諦められてたの?

 ユアンは私の事を心配して言ってくれてる。それは分かってる。分かってるんだけど、吸血鬼の体力とかそういう諸々を考えればまったく問題ないと思う。

 

 何より、血を飲めば一瞬で回復できるっていう特性もあるわけだし。

 寝る時間はちゃんとするもん。


「せめて操作魔法の予習復習は授業の日だけにしてください」

「だめ。そこだけは譲れない」

「ならば授業の日の予習復習は省いてください。それだけで少しは休めるでしょう」


 うーん……その日のうちに復習しとかないと全然憶えられないんだけど……。

 どうしようかなー。ユアンの怒りを鎮めるためには了承すべきなんだろうけど。

 うう。


「分かったよ。じゃあそれでオーケー?」

「いえ、それに加えて授業の時間を短くしてください」

「え!?」


 復習しなければ休日に習い事行ってるくらいの暇さなのに!?

 いやさすがにそれは。


「それはちょっと。授業の時間以外はゆっくりするから。そこはお願い。アイルズの授業分かりやすいし、それほど苦じゃないんだって」

「行き帰りが面倒でしょう」

「ユアンが留守番しててくれたら飛行して一気に行くけど?」

「却下」

「デスヨネー」


 そこだけは何故か譲ってくれないんだよなあ。なんだ、心ここに在らずな状態で帰ってくるとでも思ってるのかなあ。

 それはない。


「今は大人しいだけですよ。いずれ本性が現れます」

「ユアンみたいに?」

「はい」

「否定しないんだ……」


 ユアンも最近になってようやく本性現れたからね。最初猫被りっぱなしだったからね。

 そして私も優しい性格だったはずなのに毒舌になったからね。誰かさんの影響で。


「私のせいじゃありません」

「心を読む技術(スキル)は皆に備わってるのね」


 だってなんかもう最近じゃあ疑問を持たなくなってきてるもん。疑問は持っておかなきゃでしょ。

 少年なんか、ナチュラルにこっちの意向を汲んでくるしさあ。社会人だったらすごく役立つんだろうけど、こっちとしてはちょっと怖い。


「ではあの狐族の少女との訓練ですが――」

「そこはだめ」

「?」

「そこだけは変えない。狐ちゃんとの訓練は、絶対に変えない」

「どうしてです」

「魔法の訓練してくれるの狐ちゃんだけだよ」

「はあ」

「狐ちゃんとの雑談はかなり好きだから。ちょっとした気分転換にちょうどいいんだよ」

「なるほど、ではそこは変えなくて結構です。では地民の日の午後は休みとしてください」

「……はい」


 つまり、コナー君とのお茶会の後はゆっくりしろって事でしょ。分かったよ。

 しょうがないなあ……。


「ミルヴィア様……気を付けてくださいね」

「何が?」

「血の補給が途切れれば、倒れます」

「分かったよ。血は、お兄様とユアンと、えーっと、余裕がある時はレーヴィと、出来ればエリアスかな?」

「ところで、『操霊』は取得したんですよね?使わないのですか?」

「ああ、取得できてないよ」

「は?」


 ユアンが間の抜けた声を出した。そうなんだよ、取得できてないんだよ。

 私はこれからのスケジュールを頑張って組み直しながらユアンに話す。


「あれって、固有魔法(ユニークマジック)の発動中のみ取得できるんじゃないかなって私思うんだよね」

「なるほど……え?では『操霊』は使えないのですね?」

「うん、使えない。使えたとしても、多分霊魂族じゃないから使役できる霊魂が居ない」


 今更感が半端ないけどまあ、許してよ。

 そして私は、組み立て直したスケジュールをもう一度崩して、また立て直した。

 

 ……うわかなり暇になった。

閲覧ありがとうございます。

ミルヴィアは趣味が魔法なので、楽しんでます。努力家というか、仕事と趣味が一致しているタイプ。

次回、神様を説得に行きます。

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