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143 仮定の話

 少年が帰ってしばらくすると、コナー君とのお茶会が始まった。

 コナー君の髪の毛は、一時的にレーヴィが散髪して少しだけまとまってる。レーヴィに任せるとか不安要素しかなかったけど、大分上手かった、後で聞いたところによると初挑戦だったとか。最初に言え。


 大体いつも最初で話題が決まって話すんだけど、今回は『もしも~ができたら』って感じの話になった。

 なんとも今の状況にピッタリな話題ですこと。神様が関与してるんじゃない?セプスあたりならあり得る気がする。


 とはいっても魔法があるこの世、出来ない事なんてそうそうない。だけど例えば、吸血鬼じゃないコナー君からは、こんな『もしも』が出た。


「もし空が飛べたら、ずーっと奥まで行ってみたいんだ。世界ってどうなってるのかなって思って。皆は丸くなってるって言ってたけど、本当に端っこってないのかなあって」

「へー、なるほどね」


 いやいや丸いから、っていう突っ込みはしない。子供の夢は大切に。

 私は何がしてみたいかなあ。空は飛べるし何でもできるし……今のだけ聞いたら相当うざいぞ私。

 うーん。


「もし誰にも注目されずに歩けるようになったら、食べ歩きしてみたいなあ」

「そっか、ミルヴィアはすごく注目されちゃうもんね」

「今度ユアンを置いて歩こうかなあ」


 コホン。


「嘘だって」

 

 咳ばらいが聞こえたので慌てて言った。もう、いちいち突っ込んでこないでよ。

 まあ、だって大半はユアンの騎士服だし。次いで私の妙な格好でしょ。エリアスによると肌の色とかも関係してくるらしいし……。

 ほんと、今私が一番欲しい固有魔法(ユニークマジック)は少年の『変化』だよ。


 あれって色々変えられるって聞いてるし。目の色と髪の色も変えられるんだって。本当に魔力量は変わっちゃうらしいけど、後から戻せば元通りだし。

 それにその姿を維持するのに結構魔力を消費するとか……あ、これも無限魔力回路が完成すればどうにかなるのか。

 うーん、ちょっと興味出て来たかも。


「ミルヴィア、もし川で泳げたら何がしたい?」

「え?」

「だってミルヴィア、流水がだめじゃない」

「ああ、確かに」


 そう言えば雨の時とか、水が流れてるところは歩かないようにしてた。うん。

 お兄様(夢魔の時)に言われたんだよね。身動きが取れなくなる可能性が有るって。

 あ……そう言えば狐ちゃんと魔法合戦した時もちょっと危なかった?あれ?いや、死んで無いし大丈夫なはず。


「そう考えれば私の弱点なのか、流水って」

「あれ、知らなかったの?ねえ、川で泳げたらどうしたい?」

「うーん……遊びたいなあ。その時は一緒に来てね」

「……うんっ!」


 わあ可愛い。

 社交辞令じゃないよ、ホントだよ。二人きりとは言ってないよ?もちろんレーヴィもアルトも、場合によっちゃ狐ちゃんも居るけど。

 ああ、この五人で遊んでみたいなあ。なんかもう完全に取り扱い注意の団体だけどね。


 夢魔と呪いの部族と無種族と『隔離者』と魔王て。


 周りから見たら無邪気な子供が遊んでるようにしか見えないんだろうなあー。二人ほど子供じゃない子が居るけどね。そして襲撃されたら即座に応戦できるパーティー。

 ああ、本当、私の周りにまともな人は居ないのかなあ。


「僕はね……もし魔法が使えたら、ミルヴィアと戦ってみたいなって思うよ!」

「……」


 思わず無言になっちゃった。

 コナー君はそれには気付かず、喜々として話す。


「ミルヴィアってすごく強いでしょ?すごく訓練してるもん。それでね、僕剣は扱えないけど、魔法は少しなら出来るって思ってるんだ。だから――」

「……」

「っ、あ」


 私が相槌に困ってると、コナー君が申し訳なさそうに顔を伏せた。ユアンが目を細めるけど、何か言い出す前に視線で牽制しておく。

 コナー君は悪くない。私もいつもだったら普通に対応できたはず。だけど今は、『もしかしたら』っていう可能性を知っちゃってるから……。

 仮定の話でも笑えないっていうか。


「ごめんね。えっと、ミルヴィアは強いから、戦ってみたいなって、それだけだよ」

「ありがとう。そうだなあ、コナー君強そうだから苦戦しそう。だって、なんか細かいのが出来そうだもん」

「へへ、そうかな?」

「うん。……コナー君、魔法、使ってみたい?」


 私が恐る恐るそう言ってみると、コナー君は満面の笑みで答えた。


「うん!使ってみたいよ!」

「……そっか」


 努力してみよう、かな。

 まあ多少睡眠時間が削られる気はするけど。少年と会えるのは、前に狐ちゃんが言ってた暇な日のもう片方、聖民の日かな?

 だとすると狐ちゃんとの戦いの反省は少しできなくなるけど、うん、大丈夫なはず。


 それに魔力回路は私も興味はあるし。それに、夜の勉強を操作魔法から魔導具にする。

 いや、相当無理があるぞ。あ、でもそっか、ビサとの訓練がもうすぐ終わるから、その時間を魔力回路の勉強に費やせば。

 ぐっ、無理やりだけどどうにかなりそう。


「ミルヴィア様」

「お茶会の間は喋んない事」

「……」


 ユアンが眉をひそめた。ので、振り返って目を合わせる。

 大丈夫。


「後で話そう」


 私の健康を心配しているユアンの説得は、避けらんないかな。困った。

 何て言おう。単純に大丈夫って言っただけじゃ、通用しないだろうし。

 どうしよっかなあ。


 その後私達は単純にお茶会を楽しんだ。

 

 あ、そうだ。

 万智鶴さんとこ行って許可取んなきゃ。

閲覧ありがとうございます。

ミルヴィア……そんな会社の上司に許可取りに行こうみたいなノリで……。

次回、ユアンの説得。

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