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123 おーけー

 狐ちゃんと訓練の翌日。

 明日、きっと神様んところ行くんだろーなーと思いつつ、本をめくりながら固有魔法(ユニークマジック)の事を調べていた。狐族は、固有魔法(ユニークマジック)じゃなくて特有の魔法が多いんだよなあ。

 独自開発っていうのかな。この前の『狂風乱馬』ってゆう馬鹿馬鹿しいほど風が吹く魔法とか全然知らなかったもん。


 あ、やっぱり載ってない。狐族は別に閉鎖的じゃあないんだけどねー。人族が狐族を信じてなかったから、狐族もわざわざ教えるような真似はしなかったのか。

 勿体ない!この魔法も、狐族狩りのせいでなくなってたのかと思うと、本当に理不尽だわ。


「ミルヴィア様、そろそろお休みになってください。もう十時をとうに過ぎています」

「……もうちょっと。狐ちゃんからの情報だけじゃ全然、足らない。もっとたくさん、情報が欲しいんだけど……無理っぽいなあ」



 『狂風乱馬』の狂の字も書かれてないんだから。

 狐ちゃん、詠唱も忘れちゃってる事がままあるからそれ専用の本が欲しいんだよなあ……。いくら探しても、無いんだけど。

 やっぱ全部の本調べるしかないかなあ。ちょろっと書いてあるかもしれないし。

 

 冒険譚なら、冒険者が狐族の集落(?)に行った時の事が書いてあるかもしれないし、種族同士の関わり合いが書いてあるかもしれないし、剣の事を書いてある本には狐族の剣専用の魔法が描かれてるかもしれないし……。

 うーわ、だとしたら全部読まなきゃいけないかもしれん……。 

 

 コンコンッ


 軽快なノック。

 こんな時間に誰?お兄様はお仕事だし使用人はここには来ないはずだし。


「はい」


 扉の方を見つつ待ってみるけど、全然入ってくる気配がない。段々苛々してきた。

 入れっ!遅いっ!何だ、ピンポンダッシュならぬノックダッシュか!公爵家で!


「何の用だ?」

「こっちだよ」


 後ろから声がした。声を聞いて、滅茶苦茶うんざりしながら振り向くと、少年が窓辺に座っていた。窓を開けて。

 待ておい、窓、どうやって開けたんだ?


「少年、窓どうやって開けたの」

「そんな事より、まあ依頼だ。聞け」

「そんな事って、セキュリティー性が問われる大事な質問なんですが」

「この依頼は部族に関連する依頼なんだが、俺だけじゃちょっとどうしようもない」

「聞けや……って、え、部族?」


 思わず窓の事を放って聞き返した。

 部族って、何それ?少年そんなのまで引き受けてるの?


 私は取り合えず本を仕舞うと、少年を中に招き入れた。少年は堂々と椅子に座ると、にやりと笑う。しゅるりと自分のしっぽを弄んでいた。モフりたい。


「依頼者が特殊でな。俺に依頼が来たのは悪人狩りじゃねえ。ただの仲介役だ。これほどつまんねえ仕事はねえから断ろうと思ったんだが、相手が魔王だったからな」

「こう言っちゃすごく悪いんだけど、猫族(無種族)に、魔王の仲介役の依頼が来るの?」

「来るな。初めてだけど。あと、無種族の事は、魔王、どうにかしてくれんだろ?」

「はい?」

「お前、魔王だもんなあ?悪くもねえ猫族が生き残っていたとしても、処刑なんざさせねえよな?」

「さ、させない、というか、私今まだ五歳なわけで」

「もうちょっとで六歳だろ。そろそろ権限もマトモに使える歳だ。いいじゃねえか、少しくらい職権乱用したって」

「だめだから」


 ていうか生き残りを見つけても、処刑なんてしないんじゃないかな?無種族は嫌いだって言う人も多いけど、『無種族狩り』に関しては見直しされてるところがあるから。

 少年は胸ポケットから小さな紙切れを取り出すと、私に提示してきた。

 テーブルに置かれた紙を手に取り、じっくりと読んだ。


『依頼をおねがいしたくててがみを出しました。森にあばれるもうじゅうがいるので、まおうさまに倒してほしいです。うさぎです。作物を荒らします。たすけてください』


「平仮名じゃん!」

「平仮名?」

「え、いや、なんでもない……」


 絶対に子供!

 うさぎって、だってさあ、うさぎだよ?ただのうさぎよ?

 追っ払おうよ……。ちょっと脅かせば出てこなくなるって。

 私は紙を折りたたむと、少年に渡した。もしやこの子供が心配で、少年は依頼を受けたとか。ふふん、有り得るっちゃ有り得るな。


 私の周りはツンデレが多いし。

 少年を見ると、楽しそうににやにやしている。


「お前、ただのうさぎだって思ってんだろ?ははん、そう思ってんなら思えばいいさ。ちなみにこの依頼、無償だが受ける価値はあるぜ?」

「何、その言い方……気になるんだけど」

「お前、ラアナフォーリは知ってるか?」

「あ」

 

 知ってるよ?めっちゃ前に出て来て、未だ回収してない伏線でしょ?知ってるよ?

 とりあえず、一応知ってます。けど、ラアナフォーリが何?

 うさぎが呪われてるって事か?


「ま、そこらへんはご想像にお任せするけど。俺は結構いい依頼だと思うんだけどなあ」

「そうかなあ。私最近忙しくって、そんな暇ないんだけどなあ」

「暇な時でいいと思うぜ。作物を荒らしてるって言っても、子供がちょっと過大に認識してるだけだし。俺が調べたところ、作物を荒らしてるって言うより、住民からもらってるって言った方がいいな。けど、子供は荒らされてるって思ったんだろ」

「なるほど」


 いつもより畑に野菜が無い、最近うさぎさんがここにきてる、だからうさぎさんが荒らした、って事か。

 可愛いねえ。いいねえ。

 ロリとか好きだよ、私。この手紙の子が男の子か知らんけど。

 ショタコンではないかなー。


「でも、受けられないと思うよ」

「俺としては受けてほしい。諸々の反応やらなんやらが気になるからな」

「えーやだよ。だって面倒そうだし、勘違いなら別に良いじゃない。うさぎもちょっと放し飼いみたいな物だと思うしさあ」

「狐族の魔法を教えてやる」

「乗った」


 私は身を乗り出して宣言。ほとんど条件反射で返事した。

 でも、受けるとしたら聖民の日かなあ。一週間後とかかなあ。

 時間的に厳しそうなんだよね~。どうにかするけど、いやでも最近予定パンパンだし、ちょっと後になるかな。まあ神様と会った後かな。


「ミルヴィア様、そろそろお休みにならないと」

「え?あ、そっか。少年、そろそろ寝るよ」

「分かった。そんじゃ、今寝室に居るであろう夢魔にこう言っといてくれ」

「何?」


 大体想像つくけど。

 少年は口の端を釣り上げて、かなりの怒りを堪えた表情で笑った。怖いッス。


「お前とは二度と会いたくねえ、っつーか会わねえ」

「了解した」


 うん。

 うん。

 相当トラウマになってるわ、これ。

閲覧ありがとうございます。

少年への依頼はかなり多い方ですね。冒険者ギルドに頼む人が多い中、少年を選んで依頼をするのは機密事項がほとんどです。

次回、神さまに対する答えを言います。

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