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120 強い

 久々に剣を握って、訓練場に来ていた。いやー、短剣はいつも腰に差してたけど、抜くのはかなり久しぶりだな。

 軽く振ってみると、馴染む音がした。剣も好きなんだけどねー、やっぱり魔法の方が頭使うから好きだわ。剣は真似するしかないから、つまらないところがある。お手本がユアンだけって言うのも、ワンパターンで嫌だ。


「では師匠、早速お手合わせを」

「その前にユアンとやって欲しいな。ちょっと、まだ剣が慣れないから素振りしてていい?」

「はい!」


 ユアンとやるのも嬉しいのか。まあそりゃ、ユアンも師匠みたいなものだもんね。いろいろ教えてもらっていたし。私はどっちかって言うと、ライバルっぽい感じだし。

 私は適当に振りつつ、向かい合う二人に目をやった。空気がピリピリすんの、早くない?

 ユアンも笑顔を浮かべてるけど、真剣だし。

 ユアンもかなりまじめにやり始めて来たよね。良きかな良きかな。ビサ相手だと真剣になるんだよね。ビサとはかなりやり易いみたいだし、ビサだけじゃなくてユアンも楽しんでるのがいい。

 

 楽しんでばっかりは困るけど。


「開始」


 徐に私が言うと、二人が一気に動いた。

 ビサが剣を振るって攻めるのに対し、ユアンは防御せずただただ軽やかなステップで躱している。ビサの猛攻具合は変わってないな。

 そこを直さないと――と思った途端、ビサが目を細めて、ユアンがステップする方向に剣の先を小さく振る。それに、ユアンが引っ掛かって、服が破ける。ひじの辺り。本当に小さな傷だけど、ユアンの服に傷が付いたっていう事実に、私は唖然として手を止めていた。

 

 ……え……?

 いや、服くらい切れるでしょ、って話なんだけど、え?ユアンの服だよ?


 ユアンは目を細め、ますます楽しそうに笑った。

 その後ユアンが剣を一振りしただけで、ビサの剣は落ちたけど、ビサは満足していたようだった。そりゃそうだよ。ユアンの服、破いたんだよ?


 確かに私はユアンに蹴り入れた事あるよ。でも傷付けた事は一回だって無いんだよ?ああ、いや、前に三百四号室で怒られている時にあったか。けど真剣勝負で服さえ破いた事はないよ?

 え、ええ、えええ……。



「師匠、どうでしたか?」

「へ?あ、うん、えーっと、ダメ出しはない、かな。うん」

「そんなはずありません。踏込が弱かったはずです。そのせいで速度が遅くなりましたし、威圧も出来なかったと思っています。最初はなるべく大きく振って相手からの攻めを防いでパターンを見たつもりですが、あまりうまくいきませんでした。本当は剣を弾くつもりだったのですが軌道を変えられ防がれましたし、何よりも」

「ビサ様、私も危機を感じたほどです。確実に腕は上がっていますね」

「おお!ユアン殿にそう言ってもらえるとは!」

「……」


 ちょっと待ってよ。私今、剣でビサと戦ったら負ける自信があるよ?ボコボコにされる気がするよ?

 伍長がどれくらいの強さなんだか知らないけど、行ける気がする。もちろん油断は禁物だし、伍長だってちゃんと鍛えてくるはずだし。

 本当にダメ出ししづらい。


「では師匠、いざ勝負!」

「……ハイ」


 ナチュラルにユアンの剣を抜くと、ユアンは引き攣った顔になったけども気にしない。

 渋々真ん中に歩いてって、向き合って剣を構える。ビサは生き生きしてたけど、私は緊張してた。

 だってそうじゃん。ユアンの服に傷入れたんだよ!?しつこいかもだけど、本当にすごい事だと私は思ってるから!

 ユアンがわざとそうするような人じゃないって知ってるって言うのも、大きいけどさ。


「開始」

「はああっ!」

「っ!」


 ビサが大きく踏み込んできた。すぐにバックステップで躱すけど、更に攻撃が続いてきた。さっきのユアンのを思い出して、迫る剣を絡め取るようにして弾くと、すぐに脇の下に潜り込む。

 剣の柄を左手に持ち替えて、一瞬剣の先を弾いてからすぐに後ろに回り込み、剣を弾き飛ばす――って、やば。

 

 振り向きざまに大きく剣を振るわれ、すぐにしゃがんで脇に転がって走った。失礼ビサ。


「決着つけるね。埒が明かないや」


 一気に走り出した。めちゃ速いよ。魔力循環を促進させて、足に魔力を体に害のない分だけ集めて走ってる。つまり足が疲れる代わりにめちゃくちゃ速い。

 こういう自分の力を使った小細工は、オーケーだからね。

 

 一瞬で間合いを詰めると、ビサの剣を弾き飛ばした。


「おわり。……ビサ、強くない?」

「終わったのは一瞬でした」

「打ち合いだったら負けてたかもしれないし」


 しかも、今の使ったから足ガクガク。吸血鬼の性質上すぐ治るけど、今のタイミングを逃したら確実に負けてた。間合いを詰めて間近のところで空振り、避けられないなんてなれば最悪だもん。だから実践では使えないかな。

 今使ったのは、ちょっと、ビサが余りにも強くなってたんで焦ったから……かな。


 焦んなくてもいいんだけどさあ、ビサにはいいとこ見せたいんだもん。

 見栄っ張りで結構。賭けだったけど、勝ったらいいでしょ。多分。


「さすが師匠です。ですが、さっきのは実戦ではやらないでくださいね」

「……ハーイ」


 うん。

 見栄、張れてないか。

閲覧ありがとうございます。

ビサ、強くなってます。ミルヴィアはビサには負けたくないって言うのがあります。ライバルだからというのも大きいかなと。

次回、ミルヴィアが夜更かしします。

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