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119 直談判


 一日経って、今日は早起きして三百四号室に行っていた。どんなに早起きしても必ず先に居るユアンって何なの。


「ミルヴィア様、今日は読書して過ごすのですか?」

「うん。昨日じゃ読み切れなかったから」


 半分は読めたんだけどね~。だめだった。途中でユアンに寝て下さいと訴えられても聞かなかったんで、お兄様までもが出てくる事態になったからね。

 本当なら十時半過ぎには読めるはずだったのに。

 

 昨日は授業に行った日だから休みなさいって九時半に寝かされたんだよねー。


「ミルヴィア様がそうしたいと仰るなら、傍で見守ります」

「見守られなくてもいいけど……ユアン最近寛容になってない?」

「諦めましたので」

「ははは……」


 ユアンでさえ諦めるほど私、熱中してたか。してたかもだけど、ユアンが諦めるのか。あのユアンだよ?あの執念深いユアンだよ?

 ふあー、すごいわ私。


「何だか侮辱されている気分です」

「ソンナコトナインジャナイ?」


 どうしてそんな鋭いの。汗出て来るよ。

 さあてと、今日はこのページから……


「待てーーーー!」

「!?」

 

 衛兵だか何だかの声が聞こえて体を強張らせる。ユアンが私の前に立って剣に手を添えたけど、聞こえてきた足音を聞いて気が抜けた。ユアンも剣から手を離して、ふう、と息を吐いてから私の後ろに回る。

 マジかよ、この早朝に?

 ユアン以上に執念深い奴、居たなあ……。


 私は本を閉じて、膝に乗っけたままドアを見つめた。衛兵じゃ、追い付けないだろうから。

 案の定、ドアが勢いよく開き、ガタイのいい男が乗り込んできた。


「いらっしゃい」

「師匠!訓練をお願いします!」


 ビサはそのまま私の目の前まで来ると、大声で訴えかけてきた。手を挙げて制止。

 後ろから全速力で駆けてきて、息を切らしている衛兵を見て、ため息が出た。兵長だって話して、魔王の弟子だと言えば通してもらえただろうに。

 

 衛兵のところまで歩くと、手を握って不言魔法で治癒をする。疲労軽減の治癒魔法だから、衛兵の負担はない。


「これで良くなっただろう。知り合いだ、任せてもらって構わない」


 衛兵は目を丸くしていたけど、すぐにわたわたして一礼すると大急ぎで出て行った。

 あーっ!せっかく疲労軽減したのに!勿体ない!


「師匠っ!」

「はいはい、落ち着きなさい。とりあえず座って。昇進試験の事は聞いてるから」

「さすが師匠です。ですがそれどころじゃ」

「いいからっ!座んの!」


 無理やり座らせて、落ち着かせると話を聞く。

 まあ、なんとなーく話の内容は分かるけどさあ。


「二か月後に昇進試験があります。それまでに鍛えたいのです。お願い出来ますか」

「んん~……」


 どうだろう。八週間でしょ?短くない?

 もちろんビサが優秀だってのは認めるけど、その間私も色々用事があるわけで……週に三日は外せない日があるし、残りの四日だってやりたいことがある。


「難しいかな」

「お願いします!週に一度でも……っ、いえ、二度は欲しいです。頼みます!」

「……あぅ」


 手を握られて、振り解けない。そう言われても、なあ。


「ビサはいつ空いてるの?」

「闇民の日と木民の日です」


 ビサの目が輝いた。いいよと言ってもらえると思ってるんだろう。

 でも!

 でもだよ!

 闇民の日は狐ちゃんとの訓練が……!やばい。狐ちゃんは闇民の日しか無理だし(聖民の日にはこれから予定が入るって言ってた)、まずいって。

 狐ちゃんとの訓練は絶対に外せない。外したくない。けど狐ちゃんとの訓練で疲れている後にビサとの訓練ってのは、さすがにキツイ……かあ……?


「分かった、よ。午後の遅い時間、日が暮れたころならなんとか……」

「本当ですか!?あの、木民の日は」

「あー」


 操作魔法の予習復習がああああ!


「午後は?」

「午前しか空いていません」


 マジか!

 いや、あのね、私ビサと戦った後改善点とか考えると思うんだ?としたらね、午前に訓練したら午後に操作魔法の勉強集中できないと思うの。

 

 キツイ。これはきついぞ?体力的にじゃなくて精神的にきついぞ?

 でも、ああ、弟子の頼みっていうのが大きくて断りづらい!操作魔法もいよいよ面白くなってきたところだって言うのに……。


「ちょっとだけ、なら、うん、出来るよ」


 無責任かなあと思うけど、これくらいなら出来る。私の睡眠時間とか削ればいいだけだ。限度があるとは思うけど……。


「私がサポート致します。ビサ様ならば昇進できると信じておりますよ」

「ほんと!?だったら、えっと、手加減した、手合わせしてくれるかな?ビサ、あのさ、私が師匠だからあれなんだけど、闇民の日戦うのは主にユアンとで、その後私と戦って微調整って感じでもいいかなあ?客観的に見れば分かる事もあると思うんだ」

「ええ、嬉しいです!」


 ふう。ユアンが手助けしてくれるって言うならかなり出来る事が増えるな。

 はあ……良かった。


「ところで師匠、今日が何の日かご存知でしょうか?」

「……ウソでしょ……」

「お願いします!」


 操作魔法の授業の翌日。

 木民の日。


「午前中しか空いてませんので!」

「勘弁してよ……!」


 いいけどさ。

 可愛い弟子のためですもん、ちょっとくらい付き合いましょう。

閲覧ありがとうございます。

今回はビサとの話の回でした。ミルヴィアが甘いと言われそうですが、はい、あの子甘いので……。ところで、ミルヴィアが起きて無かったらどうするつもりだったんでしょう。謎です。

次回、ビサとの訓練。久々です。

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