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112 病院へ


『神楽、あんた、最近少し、青髪の子ぉの事意識しておるのとちゃう?』


「おはようございます、ミルヴィア様」

「おはよ」


 起き上がると、レーヴィももう起きていた。こちらを見て、白い髪を靡かせながら笑う。

 相変わらず綺麗ですこと。


「最近は遅くないか?まあ、良く寝て起きるのは良い事じゃな。寝るのが一番いいと儂は思っとるから」

「夢魔らしいね。私はお食事が一番大切かなと思ってる」

「……吸血鬼らしいが、神楽の言う食事って血の事だけじゃろ」

「へへ」


 私もドレッサーの鏡をチラチラ見ながら髪を結ぶ。ん、カンペキ。でも今度切りたいなー。

 だってもう腰の辺りまで伸びてるよ?ポニーテールにしたってあんまり変わらないしさ。床屋さんってあるかなー。切るだけだから美容室までは行かなくてもいいでしょ。


「あ、レーヴィ、今度血飲ませてね。そろそろかなと」

「了解した」

「あ、あとユアン、今日は別行動で」

「は?」

 

 ユアンが虚を突かれたように目を丸くした。

 そうだよね、私今唐突だったし。ふと思い出したから言っただけだもん。

 

 今日はニフテリザの質問について考える日、つまりユアンに付いて考える日なのね。

 ちょうど狐ちゃんは『オシゴト』とやらで訓練できないって先週断られたし。あんときショックだったけど。泣き付いたよね。

 で、せっかく、環境が整ってて考えられそうなのに近くにユアンが居ると、気が散るわけよ。何よりも背徳感って言うか、本人のいないところで色々話しちゃってる感じがあるから。

 だから別行動にしようと思ったわけなんだけど。


「だめです」

「いいじゃん!レーヴィと行動するからさ」

「絶対にだめです。レーヴィ様ならミルヴィア様が出かけると言っても引き留めないかもしれません。何より私は『夢魔』に対してまったく信用を置いていませんので」

「おお、随分な言い様じゃのう、生まれてまだ数瞬しか経っておらぬ子供が。無論信用せよなどとは言わぬ。じゃが、儂が神楽の事を思うていないかのような言葉は慎んでもらおうか」

「……」

「……」

「ああごめん喧嘩しないでね。とにかく、お願いだって」

「だめです」

「ええ~……」


 全然諦めてくれそうにないんだけど。

 どーしよ。でも絶対ユアンと行動っていうのは無しにしたいし……質問が質問だからなあ。答えは決まってるようなものだけど、最後まで考えるって決めたの私だし。


「じゃあ、分かった、エリアスのところに居よう」


 精一杯の妥協案。

 エリアスなら私が勝手にどこかへ行くとか絶対に許さないだろうし、私は待合室で待ってるだけでいいし、何よりそこなら知り合いに会わずに済むと言うオマケつき。


「エリアス様のところへ?」

「うん。そこまでは送って。帰る時はエリアスに送ってもらうから」


 まあ送ってくれなかった場合、飛んで帰ろう。

 という考えはお見通しのようで、


「いえ、六時ごろになりましたら迎えに行きます。エリアス様の終業時間はそれくらいでしたので」

「いーよ、じゃあそれで」


 ここで無理に押し通したりしたら、エリアスのとこに行く事自体がだめって言われかねないからね。引き下がっておくのが妥当でしょ。

 にこにこしながら立ち上がって、衣装室へ向かった。


 今日の服は白い長そで、長ズボンにキャップというかなりアウトドアな格好。今日は比較的暖かいらしいし、これだけで事足りる。

 そうしてレーヴィに行ってきますと言ってから、家を出た。


 さてと、考え始めましょか。

 今回の質問は明日に持ち越したくないなあ。二日連続エリアスのところへ行くのはさすがに無理だろうし。

 ええと、私は別にユアンの事恋愛対象として見てないから、意識してないと思うんだけどねえ。

 ていうかそもそも、ユアンが私の事を好きかって聞かれたら、良く分からないって答えるのが現状だし。

 

 だってユアンが誰かに本気になるとか、想像つかないもん。いつだって断り切れず、っていうのが似合ってる気がするし。

 それに夢魔の『魅惑』さえ通じなかったユアンだよ?有り得ないんじゃないかなあ、私に対するのは親愛な気がしてならないし。


「ミルヴィア様」

「ぅひゃい!」

「……着きましたよ」

「え、お、ああ、うん。じゃあね、ユアン」

「ええ、また」

 

 私はマンション(病院)を見上げると、ユアンに手を振ってから中に入って行った。

 えーと、エリアスはと。お、居た。


「やっほーエリアス!」

「……なんでお前が居るんだ……」


 エリアスは呆れ果てたように(というか諦めたように)ため息を吐いてこちらを見た。

 私がニコニコしていると、エリアスは前を見てからカルテ(?)を取り出した。


「また子守か」

「ごめんね。待合室で待ってるからさ」

「やりにくいからあまり来るな。邪魔だ」

「ごめんってば」


 ユアンと会いたくないだけだからさ。なるべく邪魔しないよ。

 エリアスはしばらくカルテを眺めた後、私を一瞬見ると診察室に入って行った。

 私は待合室の椅子に座ると、考え出す。


 でもなあ、この問題に関しては考えようがない。セプスの時はコナー君も絡んでたけど、完ッ全に自分の問題だしさー。

 現時点では絶対に、私はユアンの事を意識していないっていう結論なんだけど……うわあ、昨日自分で決めたルールが邪魔になる……。けどやっぱりちゃんと考えないとなー。乗り気じゃないけど……。


「おい」

「えっ?」


 エリアスが、眼鏡の奥にある鋭い目で私を見ていた。

 な、なに……。


「朝食は」

「食べてないけど?」

「やっぱりか。ちゃんと食べないとまた倒れるぞ。お前が倒れて診察するのは俺なんだからな」

「面目ない」


 だって食べてる余裕なかったんだもん。


「ほら」

「……あ」


 おにぎりだ。しかも見た事ある。

 あー!これあれだ、夢魔退治の時に食べたやつ。『ツハシ』とかいうところのおにぎりだったな。ていうかなんでこれがこんなとこにあるわけ。


「食べておけ。一応ここは飲食禁止だから、休憩室に行くと良い」

「待ってよ、なにこれ買って来たの?」

「俺の朝食だ」

「は、悪いって、要らないよ」


 突き返すのに、押し返される。

 だからなんでこんな皆握力と腕力強いわけっ!


「食べておけ。ここで倒れたらどうするんだ?俺が診なきゃいけないんだ。俺の手を煩わせるな」

「いや、ツンデレは分かるけどさあ」

「誰がツンデレだ!いいからさっさと食べろ!」


 そう叫ぶと、エリアスはまた診察室に戻った。なので、休憩室に向かった。看板があったので、すぐに見つかった。そこで、一口頂く。

 ……ふむ。

 美味い。

 にしてもあれだな。

 エリアスもなんだかんだで過保護だな。


 やっぱりツハシのおにぎり美味しいなあ。空腹だったから美味しく感じたってわけでもないのか。

 どうするかなあ、ユアンの事。

 まず、私に恋愛感情はない。これ確定。だったら意識してないんじゃん、って事になりそうだけど、考えてみよう。

 恋愛感情は無くても、意識しているところは多少ある。だって口移しされたし押し倒されたし。

 つまり意識はしてるところがある……のか?どうなんだ?あれ?そもそも意識してるってどういう事になるんだ?んん?


 そこから小一時間ほど悩みました。

閲覧ありがとうございます。

エリアスは一応ミルヴィアを心配して言ってます。ツンデレなんです、あの子。

次回、結論。

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